初日 最新 目次 MAIL HOME「馴れていく」


ごっちゃ箱
双葉ふたば
MAIL
HOME「馴れていく」

My追加

2007年08月27日(月)
わいわいわい(4)








わたしの神経はず太い
まず歯の治療時に
麻酔がとっても効きにくい

先生には事前に伝え
量を多めにしてもらっているのだけど
歯をいじられるたびに
カラダが脊髄反射で跳ね上がる
「いやあ。効きませんねえ。もうこんなに打っちゃった」
ほっぺたおさえつつ、恨めしげにしてしまう
だから、最初からそう言ってるにぃ…

わたしの神経はだいぶず太い
現在の歯科治療というものは
出来るだけ神経を取らずに薬で抑えるものらしい
(神経をとると歯がもろくなってしまうから、らしい)
一ヶ月ほどかけてひと通り
その「現在の歯科治療」なるものを施してもらったのだけれど
わたしの神経は
なかなかその薬に負けてはくれなかった

「いやあ。すっかりと治ってくれませんねえ。おかしいですねえ」
先生のやさしい口調になだめられながら
再び一ヶ月のやり直し期間を経てのち

結局、強情な神経をとってしまうことに
嗚呼。これで晴れて痛みのない無神経になれるのね

あーたたたたたたたたたたたたああああ
再び脊髄反射で跳ね上がるわたしのからだ
おでこにぶわっと汗がふきだす
「いやあ。そうでした。麻酔ききにくかったんですよね」
ほっぺたおさえつつ、逆恨みぎみに見上げてしまふ
だがらっ、まえにも言っだげどぉ…

おまえもくるしめーっと
おもわず先生のあたまをはたきたくなるわたしの衝動
一転にわかにかき曇り
稲妻が轟きはじめた、わたしの想像上の空模様
神経麻酔を刺されて
最後のジャンプを必死でこらえたとき
偶然にも、なんの因果か、誤報で鳴り始めた非常ベル
なんだなんだ、とあわただしくなるスタッフさんたち
偶然にも、なんの因果か、わたしの耳元で
ぐう〜っと鳴り出した先生のお腹の虫

殺気みなぎる
治療室







 



2007年08月20日(月)
前後








わたくしの正面は背中であって
目や鼻や口は逆方向についている

逆方向についているので
先のことは感じたりすることしか出来なくて
通り過ぎたものだけ考えながら仕方なく
カラダだけ反対向きにすすんでいく
だから先のことを見たり喋ったりするようで
それはぜんぶ過ぎたものからやってきている

逆方向についてるのだから
ぺこっとお辞儀してものけぞってたり
胸をはりながら足元ばかり見てたりで
誰かに会っているときなんか
たいへんに不便そうだけれど

どちらかといえば生活のほうが
きれいなものはきたないのがきれいで
複雑こそが純粋であるものが複雑なのだったりするので

どうしようもなく
悩んだり迷っているときこそが
とっても前向き、とのけぞれて
そのことに関しては非常に具合よろしい











2007年08月13日(月)
平坦な階段、或いはごっちゃ箱5周年記念雑記






-ふたば社長。ごっちゃ箱、はじめてから
5年経ってるみたいですよ。おめでとうござる。

おもむろに、たばふ企画部長からそう声をかけられる
ああ。そういえば、そーねー。
実際の記念日からは半年近く経って気付くというところが
実に彼らしく

そう言われてしまっては
むかしのログなんかを
めずらしく見返してみたくなったりするもので
最初のタイトルは「3月」。うんうん。3月だったからね。
まだ、なに書こうかー。とりあえずはじめてみようかー感が
よくでております

階段は平坦でらせん状
あがっていっても空に着くわけでもなし、さりとて
ここまで行こうという目標があるわけでもなく
一段ごとに
ちょっとわくわくして、ちょっと怖くて

おんなじ高さをぐるぐるぐるぐる
ぜんぜんちがうところへ行っては
またもどってくるようで、
まったくおんなじところではなくて

でもこうしてたまに振り返ってみると
まったくの、「わたし」があっただけでありました
見なきゃよかったかも、でも

好きに書いてるだけの
ほおづえ選抜雑感雑記書きこぼし落書き帳
ときどきはだれか様子見にきてくれて
ときどきはだれか心のこもったお手紙をくれて
そのほかには何も得るところのない
じつにしあわせそうな
ディスプレイ越しのほおづえ

たばふ企画部長も一言そう教えてくれただけで
あとは黙って仕事にもどっちゃった
はいはい。そうね。
たかが5年続けたごときで感慨にふけろうなんてのは
あますぎるわいね









2007年08月06日(月)
イタリア、新宿、グルジア









夏の夜なので遅くまでいたい
とてもおおきなチーズパンを買って
ちぎりながら歩きまわって、それから
新宿のはずれの広場に座って
ガムランやグルジアの合唱に
耳を澄ましていたい
音楽は地面の下のマントル層からやってきて
金の魚の踊り子さんは
そのまま月の形になっちゃって
チケットなんかいらないんだってさ
奉納って書かれた箱が隅に置いてあって
お金は入れられないくせに
僕はその箱がとても気にいった

夏の夜だし遅くまでいられるね
このあいだまでガタガタ震えてばかりだったけど
夏の、それも夜になると
地球ってまわりだすらしいよ
イタリアからやってきてた女の子が
新宿の夜空で星を見つけようとしていた
ちゃんと地球が回ってたのなら
この小さな広場がイタリアの街角に在ったことも
あったのかもしれないから