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2006年12月25日(月)
雨が連れてくる








雨が変だとおもうのはそのまんま
空から水が降ってくるということで

水なんか降られたらそりゃ
困る、というか
変な気分になるわ
ということで

上から水が降るくらいだもの
雨が降るだけで
街中にはなにか起きていたり
連れてきたりしてるんじゃないかと
思いつきそのまんま
書いたりもしてみるわけです

さらに水は地球を循環し
おおよそ量も一定であると考えれば
いまそこここに降っている水が

かつて誰かの手を洗ってたり
神々の霊峰を紡ぐせせらぎであったり
恐竜たち体内を巡る血液であったり
未来の私の飲むコーヒーになってたり

そんなのが万歳してるみたいに
いまそこここに降ってるんだもの

ああ、それにそれから傘も変です
こんなにいろいろ便利な世の中なのに
傘ってやつはほとんど変化してないのです
雨をよける道具というのについて
新しいアイデアっていうのは
もうないのかしらん
あれが最良のかたちなのか
あたまのうえで雨の打つ
あの音がちょっと好きだからとか

雨って変だ
やっぱりへんへん
















2006年12月18日(月)
皿をかさねる








重ねられた皿たちが
ざわめきだしている
擦れた声と真白いからだを
互い互いにひしめかせ

潔く並べられていた食材の
幾千億の細胞と
幾千億通りの彼等の過程は

街に田畑にそれらの治めに
声に文字にそれらの響きに
人間という仕業その現象に
大気圏まで突き上げた
水の流れをその御旗に

その手を掲げ掲げて
燃え散りながら昇華され

確かにそれは見届けられたと
流し台を見下ろしている
時計は午後1時を廻ったところ














2006年12月11日(月)
ときどきちょっと固まる








素晴らしき哉日曜日の
ガラスで出来たような朝
さむいけれど窓をあけて
早足にコーヒーをいれにいき
一本目の煙草に火をつける
ふぅ。かんぺき。と
いちばん素晴らしき瞬間なのに
煙草の根元んとこに亀裂がはいってる
吸えども吸えどもすり抜けていく愛煙
指でおさえてがんばれどがんばれど
ついにはぼっきり折れてしまう
しばし固まる

お昼にお皿を洗い終わり
生ゴミをしばっているあいだ
プラスチックのケースに水をためておくため
水道蛇口をひねったらその根元から
ぷししし。とうつくしく細い噴水があがる
ありゃま。根元がゆるんでる。
ちょっとひねれば直るかと
水道の細長い蛇口を持った途端
くわっと根元から折れる水道蛇口
それを持ったまましばし固まる
ああ、折れた蛇口って情けない

夕方部屋でパソコンに向かっていると
窓のほうでなにやら
カリカリカリカリ音がする
なんじゃらほいと耳をすますと
しばらくしてまたカリカリ
正体不明の音は怖い
おそるおそる近づく
やっぱり窓から聞こえてくる
カーテンをちょっとだけひらいて見てみると
ツメを引っ掛けて網戸をあけている
ネコ氏と目が合う
…あの、どちらさん?
ゆっくりその手をひっこめて
首をかしげているネコ氏と見詰め合ったまま
お互いにしばらく固まる










2006年12月04日(月)
男の子







玄関や台所にある
どのとびらを開けてみても
屋根裏や倉庫にある
ダンボールを調べてみても
女の子は見つからない

ベッドの下を覗いてみても
お風呂の蓋を開けてみても
押入れの闇に目を凝らしても
女の子はかくれてない

果物とか
花瓶といったように
女の子みたいだなって
気のするものはあったけれど

よそのおうちにあるのでしょうか
男の子が窓の外を眺めている
鏡の向こうの国へ
閉じこめられたわけでもなく