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2006年06月26日(月)
お子守り








前の晩、皮膚の調子が悪くて
2時間くらいしか眠れなかったものの
姉は仕事
母は急な用事

というわけで
水ぼうそーな甥っ子の
初のタイマンはった子守りの日

えっーっと、とりあえず遊んでいればいっか
軽く考えてはいたものの
甥っ子2歳半
おのれの欲望はちゃんと言える

「リンゴ食びたーい!」
はいはい。ただいま剥きます。
「…なにしてるの?」
リンゴ言うたから剥いとるよー
「リンゴジュース〜〜」
ジュースはないのよー
「リンゴジューズ〜」
ないんだってば
「あるのっ!」
ないのー
「あーるーのっ!」

熱があるってのに
奇声をあげて走り回る
台車をころがして追突してくる
ダウンしている私に蹴りをいれる
一秒たりとも気が抜けない
エナジーが服が着た小さな暴走特急スティーブンセガール

そろそろオチッコしよーかと言っても
「まだ大丈夫−」と拒否
その5分後に「オチッコでたー」と事後承諾を求める
オムツを替えるときも当然じっとせず
ごはんはお気に入りのスプーンじゃないと
イヤイヤらしい
しかもスプーンを要求しているらしい言葉が
よく分からない

ベビーカーにどっかり座って
「お散歩行くのー!」と要求
熱あるから今日はやめとこーね
「行くのっ!」と言ったきり
いつまでもそこを動こうとしない
諦めて少し放っておくと
床に転がってこちらをジトっと睨んどる

うぅ…母親は偉大じゃ

台所で洗いものカチャカチャしてる視界が
涙でうっすらぼやけた頃
やけに静かになった、と思ったら
床に転がったままお昼寝に突入なさった模様

お布団にかついでいって寝かした横で
わたくしもそのまま二度目のダウン

やがて目が覚めると
わたくしの首根っこにぎゅーっと
しがみついて目を閉じている2歳児

そのあどけない寝顔を眺めていてしばらく
こやつもうっすら目を開けて
ぼんやりこっちを見る


……おきた?












2006年06月19日(月)
靴下だけ








なにげなくそのままずっと
いてくれるような
気がしていたのはきっと

ぼくだけだったのでしょうね
みんなはちゃんと
知っていたのかもしれない

人間ってのは
ほんのちょっとしたことで
すぐに幻になっちゃうもので

ベッドのなかに脱ぎ捨てられた
靴下だけ残して










2006年06月12日(月)
待つ旅











あなたがパリに行っている
ほんの2ヶ月
まるで私が旅にでているようでした
帰りを待っているほうの旅というものがあって
その、よりによって随分と始めのほうで
生活も時間もまるで体までが
半分しか持たされていないことに気づくのです
いつも寝息をたてるまで
旅の本を読んであげているときは
あんなに得意気だったのに

あなたがパリに行っている
ほんの2ヶ月
私はまるで一生分の旅にでているようでした
ひとりで目覚めて食事を摂り
趣味に興じ
仕事には常に几帳面に
正しさと、やわらかさをこころがけて
私たちが出会うまえから
いつかどちらかが先に別れてしまうあとまで
そのながいながいひとり旅に
あなたはなにか意味のありそうな
題名をつけてくれますか

帰りを待っているほうの旅というのもあって
またあの、照れた顔で
私の名前を呼ぶまでの














2006年06月05日(月)
久し振り









渋谷なんて久し振りに来て
夕方までカチャカチャ
お皿を洗っていた自分がなんだか
なつかしく思えたり

遠くで暮らすわけでもないのに
少しずつ思い出さなくなることも
しょうがないことだから
それはやっぱり

そんな寂しさから電話をくれたとしても
すぐに話がなくなってしまうね
きみが思い出すぼくとはもう
すこしちがっているだろうし