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2005年07月25日(月)
真夜中のパーティー(5)










「馴れていく」とはまた別の
サイト立ち上げのため睡眠不足が続いていて
でも明日は仕事もあるし
今日こそは早く寝なければと決めていたその夜

けれど夜更かしが習慣になっていたのか
長い瞑想の末にようやくウトウトしかけたのが
午前2時

背中になにかがさわる
それが上にのぼってくる
肩まであがってくるっ

振り返る視界に
チャバネゴキ…(書くのもイヤだ)
ひぐわぁあぁあぁあぁあぁあぃい
途端に上半身、特に肩から頭、つむじのあたりまでいっせいに
鳥肌、さぶいぼ、冷や汗が溢れ出す
がばっと起きて振り払い立ち上がるすきに奴は姿を消した

それからしばらく途方に暮れる
ご存知の通り彼らの繁殖を防ぐ鉄則のひとつとして
見つけたら必ずとどめを刺すことがある

我を取り戻し掃討作戦が開始されたのが
午前2時半
作戦内容は寝室中を引っぺがし
ブロックごとにスプレーをまいて反応を待ち
逃げ場所を限定しつつ、追い込んでいく
いわゆるローラーシフト作戦が採用された

遂に遂に追い込まれた彼が
寝室からの逃走をはかって発見されて
文字通り「夏の虫」の如く(スプレー噴)射殺されたのが
午前4時

戦いの興奮あまってか
しばらくの間、眠気も吹き飛んでしまい
ようやくのこと、眠りにつくことの出来た兵士の体を
優しくも残酷な朝日が包むのであった














2005年07月18日(月)
出会いは突然(2)








金曜日の夜
新宿発藤沢行きの小田急線
下北沢からぎゅ〜ぎゅぅ〜で腕もあがら〜んの急行に
乗り込んだのだけれど

電車が動き出してしばらくして
目の前の女性の肩と首の様子が
あきらかにおかしいことに気付いた
眠ってる…??
後ろ向きのその女性はあきらかに
わたしのほうへ全体重をあずけてきている、この状況ではとても辛い

それどころか電車の傾きの向きが変わるたびに
周囲のひとに次々と寄りかかりはじめだした
ので、周囲の人達が力を合わせてそのひとを支え始める
こんなときに生まれるのは
見知らぬ人達との連帯感と
誰かが先頭切ってなんとかしろよ、と思い合っている気まずい距離感
それに最初に負けたのがわたしだったのだろうか

とりあえず問題の女性の2時の方向、
ドア際にいた女の子に場所を変わってもらえるように頼む
女の子は快くドア際のグッドポジションをゆずってくれたのだが
今度はその女の子が真後ろに回ってしまったので
彼女がほぼひとりで問題の女性の体重を支えることになってしまったようだ

わたしの提案で犠牲になることとなった女の子の
辛そうな姿勢と助けを求める視線
どうするか…
えーいどないとせいっ
「すいません。降ろしますんで空けてください」
次の駅に着いたところで
問題の女性の脇の下にぐっと手をいれ
かつぎだす事とあいまみえた

もしもーし。周りの方に迷惑になるんでー
電車降ろさせていただきましたー
「あ…え?」
目が覚めた様子
酔ってます?かなり?
「はい…あ…すいません…」

まだとろーんとしている、と思いきや
くわっと両まぶたが開いて、こっちまでびっくりする
そのあと女性は平謝りに謝って
「もう大丈夫ですから」と頭を深く下げた
大丈夫かねぇ…この指何本に見えます?
「3本です…ほんとにすいません」と恥ずかしそう
恥ずかしいのはこっちじゃ
なにが恥ずかしいって、右手の指3本立てて
以前にテレビかなんかのヨッパライ特集で見た警官の仕草を
そのままやってる自分が恥ずかしい

駅員さんとこまで連れてく覚悟でいたけど
ま、口調もしっかりしてきたし大丈夫かなぁ、と思ったとき
あのー、と女性が聞いてきた
「海老名ってどこまで行けばいいんでしたっけ…?
 あの電車で行けますよね?」
あかん。ここは登戸。
ちなみにあの電車では売店ひとつなさそうな山の中へ行ってしまうぞ!
ぜんぜんあかんじゃないですか!きみぃ!!
そこへ丁度正しい方向への、しかも空席が並ぶ各駅停車が来たので
とりあえず供に座ってもらってゆったり帰ることにした
いよいよ駄目なら駅員さんのところに連行すればいいし

けれど幸いなことに
彼女は段々と、現在の自分の状況と
隣りに座っている素性のわからぬ男性との会話の中で
正気(しらふ)を取り戻してくれたようであった

引越しをしたばかりで路線図がよく分かってなかった、
職場も変えて、元の職場の人達と飲んできた帰りだった、
お酒には強いはずだったのに、初めてこんなことになってとても恥ずかしい、

海老名への正しい帰り方を伝えて、あとは雑談をしつつ
やがて電車はゆるゆると我が街、町田へ

この間、彼女はたくさんの「すいませんでした」を言った
もーいいです。おなじ53年生まれじゃないのさ
こちらもぎゅーぎゅーの満員電車で帰るのかぁぁってうんざりしてたのが
一応楽しく話しながら帰れたわけだし
それでも彼女はしきりに「すいませんでした」と言った
もーええっちゅーに。
あ!じゃあこうしましょ!日記みたいのをネットで書いてるんで
そのネタにさせてくださいな!それでチャラ。
彼女は「はい。さんざんわらいものにしちゃってください」と笑うのだった

町田駅を出たあと
ぽつぽつと歩いて家に帰り
ドアを閉める。ばたん。そのとき二つの事に気付く
1、あ、そういえば街中で女性と知り合ってあんなふうに話したりするの初めてなのだわ
彼女はわたしが降りる間際
「いいひとに助けてもらえてよかったです。ありがとうございました」と、改めて頭を下げた
2、いいひと、いいひと…もしかして「いいひとに終わる」、という言葉は正に
こういう事を指しているのだろうか?
落ち着いて見るととても綺麗な女性だったのだ
両目の焦点が合ってさえいれば












2005年07月11日(月)
「眠らないで」





「眠らないで眠らないで ずっとずっとずっと
 このままふたりいつまでも歩きましょう
 眠りの国のゴンドラはひとり乗り
 出会ったことも 抱きあったことも
 争ったことも 寄り添ったことも
 頬に残る熱さも 腕に残る鼓動も
 みんな夢だったなんてことないよね
 眠らないで眠らないで ずっとずっとずっと
 このままふたりいつまでも歩きましょう
 どこから夢と知らないで歩きましょう
 歩きましょう」


        
           中島みゆき「眠らないで」
           アルバム「LOVE OR NOTHING」から






どんなに疲れていようと
眠れないことはよくある
眠れないときはほんとに眠れない

漠然とした不安で眠れない
お金のことが気になって眠れない
仕事のことを考えてしまって眠れない
こどもの頃からアトピー持ちなので
カラダがかゆくて眠れない
少しでも暑いと眠れない
けれども今度はエアコンの室外機の音で眠れない
枕の高さに納得しないと眠れない
寝る姿勢に納得するまでは眠れない
電気消し忘れてないか、と確認したくなって眠れない
冷蔵庫閉め忘れてないか、と確認したくなって眠れない
おしっこが妙にちかくて眠れない
あんなこと言わなければ良かったと眠れない
明日のことをシミュレーションしちゃってねむれない
枕が変わると眠れない
ひとの家に泊まると眠れない
頭のなかがエッチなことだらけで眠れない
頭のなかで鳴りつづける歌のせいで眠れない
やっぱり一度聴いてから、と聴き終わっても眠れない
さっきまで遊んでいた怖いゲームの
画面が次から次に浮かんできて眠れない
眠れないときに限って次々と思いついてしまう
ごっちゃ箱のネタをまとめきるまで眠れない
眠れないったら眠れない

やがてチュンチュン空が白み始め
いいや、今さら寝ても起きれるわけないし
このまま起きていようと諦め覚悟した頃
深い眠りへと落ちていってしまうのだ













2005年07月04日(月)
冬の光











冬の寒い朝、小学校への道の途中にある
駐車場の草むらのなかで
うずくまっているスズメを見つけた

手の中に包んで
先生に相談しに行ったけれど
困った顔をされてしまい
せめてあたたかいように、と茶色い道具箱の中に
ティッシュやタオルにくるんでおいた

その鳥はもう何も食べないし
鳴かない
目だけ大きく開いて僕をじっと見つめ
乱れた毛並みを震わせて
午後の授業の途中で冷たくなった