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2010年10月24日(日) |
「日本音楽コンクール バイオリンで中学生1位 26年ぶり」←毎コンで優勝する、というのは物凄いことなのです。 |
◆記事:日本音楽コンクール バイオリンで中学生1位 26年ぶり(毎日新聞 10月23日(土)21時7分配)
日本の音楽界への登竜門、第79回日本音楽コンクール(毎日新聞社、NHK共催、特別協賛=三井物産)の本選会シリーズが23日、
東京オペラシティで始まった。初日はバイオリン部門が行われ、ショスタコービチの協奏曲に見事なリズム感、音色などで圧倒した
山根一仁さん(15)=横浜市立豊田中3年=が第1位に選ばれた。
中学生の優勝は全部門を通じて26年ぶりで、満員の会場は新しいスターの誕生に沸いた。
86人の応募から3度の予選を通過した4人を海野義雄、篠崎功子ら11氏が審査した。
他の入賞・入選者は次の通り。(敬称略)
▽第2位 城戸かれん(16)=東京芸大付高1年
▽第3位 毛利文香(16)=神奈川県・洗足学園高1年
▽入選 新井貴盛(19)=東京芸大2年
▽岩谷賞(聴衆賞) 山根一仁
◇テクニック全開、華麗に弾き切る
初日から、中学生の山根一仁さん(15)が優勝する快挙に、本選会場の東京オペラシティは興奮に包まれた。
くじで引いた演奏順で最後に登場した山根さんは、難曲のショスタコービチのバイオリン協奏曲を
第1楽章は深々とした音で、終楽章はテクニック全開で華麗に弾き切った。
30分後、会場ロビーで1位が発表されると、見守っていた聴衆から叫び声のような大歓声がこだまし、山根さんはもみくちゃに。
「今まででいちばん楽しく弾けた。こんな素晴らしいホールで、自分が一生懸命やることをいっぱいのお客さんが聴いてくれて、感動しました」
と声をはずませた。
山根さんは昨年の全日本学生音楽コンクール中学の部の全国1位で一躍注目を集め、
予選のときから審査委員の間でも「華がある」「魅せられる」と高い評価を集めていた。
次々に現れる日本の若い男性バイオリニストが今、世界から注目されているが、そこに新たな才能が加わった。【梅津時比古】
◆毎コン(日本音楽コンクールの通称)で優勝する、ということは、想像を絶するほど大変なことです。
日本音楽コンクールは、元々毎日新聞社が創設した音楽コンクールです。
ですから、以前はずっと「毎日音楽コンクール」と呼ばれ、クラシックの世界の人は今でも「毎コン」といいます。
ずるい、というと言い過ぎですが、NHKが「協賛」したので、名前が「日本音楽コンクール」になりました。
ちょっと気を付けて頂くと分かりますが、今回が「第79回」です。つまり、始まったのはなんと戦前で、戦争中も
中断することなく続きました。毎日新聞が全てにおいて立派な新聞だとは思いませんが、この件に関しては、いい仕事をした、
と思います。
このようなことは実は今までも毎年のように書いております。これが、私の日記を「毎コン」で検索した結果です。
どの部門も9月までに予選を終了し、1ヶ月の間を置いて本選が始まります。
今はオペラシティですが、昔は、古いけれども何とも言えない歴史を感じる日比谷公会堂で本選が行われていました。
私は、一度日比谷公会堂当時に、ピアノ部門の本選を最初から最後まで聴いたことがあります。
同じ曲を選択する人もいますが、とにかく1日で5回連続してピアノ協奏曲の全曲演奏を聴くというのは、
聴く方もエネルギーが必要です。疲れます。しかし、音楽に人生を捧げようとする若者の熱い情熱が迸り、
聴いているだけで、胸がいっぱいになります。順位をつけるのが残酷なほどですが、付けなければ、コンクールの意味がありません。
過去に全く同じ事を何度も書きましたが、毎コンに限らず、コンクールの結果が全てでは、勿論ありません。
適切な表現ではないかもしれませんが、コンクールとは「瞬間最大風速」のようなものです。
「その日、その時、その場所で」誰が一番上手かったか、ということだけで決まります
(厳密にいうと、最近の毎コンは予選の点数が考慮されるので、本選の演奏の出来だけでは順位は決まりませんが、
本選の演奏が最も印象に残ることは言うまでもありません)。
「いつもはもっと上手く弾けるのです」「昨日の練習ではミスはしませんでした。」「もう一回弾かせて下さい」
などという甘えは通用しない、問答無用の世界。逆に言えば、明日に本選の日程がずれたら、体調その他の変化で
別の人が優勝したかもしれません。しかし、コンクールとはそういうものです。
今年のバイオリン部門は参加者が86名。86人が第1予選を受けて、第2次予選に進めたのは22人。
22人中、第3予選に進むことが出来たのは、10人。そして、本選に残ったのは、4人。優勝できるのはただ1人。
これは、想像を絶することです。私は素人の門外漢ですから、分かったようなことを書いてはいけませんが、
毎コンの存在を知らない「ド」素人よりは、多少はわかるつもりです。
一生懸命練習したのは、皆同じです。1次予選で落ちた人と2次予選に進んだ人。また、2次予選から3次予選に進んだ人。
その違いは、私が聴いても、恐らく分からない。紙一重の差だと思います。
専門家に訊くと「毎コンは、国内のコンクールの中でも別格だ」といいます。その緊張が並ではないそうです。
そもそも「毎コンを受ける」ことを決めるだけで大変な勇気が要ります。下手な人は師匠の許しが出ません。
素人が聴いたら「もう、十分、プロとして通用するじゃないですか?」というようなレベルの人がさらにしのぎを削る、
物凄い高次元の話です。今年はショパンコンクールもありますから、関心がそちらへ向き勝ちですが、
毎コンを過小評価してはいけません。
15歳で優勝した山根一仁さんの偉業は素直に讃えます。
しかし、本人が一番分かっていると思いますが、大変なのは、これからです。
「毎コンバイオリン部門で優勝した」という既成事実は勲章ですが、プレッシャーにもなります。
やや、言い過ぎかもしれませんが、今後、下手な演奏をすることは、学生と言えども許されない。
一層の向上を世間は要求します。
しかし、とにかくお祝いを申し上げます。
◆【音楽】山根一仁さんが本選で演奏したショスタコーヴィッチ、ヴァイオリン協奏曲第1番より終楽章
課題曲は、勿論とっくに発表されています。
公式サイトのバイオリン部門課題曲をご覧になるとお分かりの通り、本選は、
- ブルッフ
- パガニーニ
- メンデルスゾーン
- ドヴォルザーク
- シベリウス
- バルトーク
- プロコフィエフ
- ショスタコーヴィッチ
- ヴィエニアフスキー
のヴァイオリン協奏曲の中から自分で選択します。技術的に難易度が高い曲を選んだ方が高得点を狙えますが、
一方で、テクニック誇示に偏り音楽性を疑問視される可能性もある。選曲も難しいところです。
中学生で、ショスタコーヴィッチを選んだ山根さん。何故この曲を選んだのか興味深いところですが、
近いうちに、毎日新聞の音楽担当記者(編集委員)梅津時比古(うめづ・ときひこ)氏のインタビューが新聞に載るでしょうし、
NHKのドキュメンタリーで明らかになるでしょう。
ここでは、終楽章だけ聴いて頂きます。
引用元は、ソロがヒラリー・ハーン、伴奏がオスロ・フィルハーモニー管弦楽団。
お馴染み、メンデルスゾーンが1曲目。カップリングされているのが、ショスタコーヴィッチ:ヴァイオリン協奏曲第1番です。
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 作品77より、第4楽章「ブルレスケ」
Shostakovich: Violin Concerto #1 In A Minor, Op. 77 - 4. Burlesca
ショスタコーヴィッチの音というのは独特で、分析的なことは書けませんが、
私は、単に聴いていると「あんた、真面目に書いてる?」というような、何となく滑稽に聞こえることがあります。
余計なことですが、美しい、ということで言ったら、それは技術的にはショスタコーヴィッチよりも遙かに簡単でしょうが、
バッハのヴァイオリン協奏曲第1番、イ短調、BWV1041と同じようには感じられません。
お断りしておきますが、毎コンの山根さんの話とは全く無関係。私の嗜好、情緒的選択について書いているだけです。
ご参考までに。
バッハ:ヴァイオリン協奏曲 イ短調 BWV1041 第一楽章。
Bach Violin Concerto BWV 1041 1st Movement
余計なことでした。私の好み云々はどうでもよいのであって、兎にも角にも、
山根一仁さんが、ヴァイオリニストとして大輪の花を咲かせることを、心から祈ります。
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