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JIROの独断的日記
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2010年06月21日(月) 33年前、ベームがウィーン・フィルを振った「運命」第3楽章とフィナーレ。

◆NHKは貴重な画像を沢山もっているのだから、どんどん放送して欲しい。

知的財産権は、所有権の対象が目に見えないが、それを勝手に配信したりすることは、

財産権の侵害、極端に言えば泥棒だ、という。

しかし、それならば、NHKは特に過去からの膨大な映像資料の蓄積があるのだから、

どんどん放送して欲しい。今は、埼玉県のNHKアーカイブズという所に行くと見られるらしいが、

その為だけに、例えば北海道や沖縄から、上京するわけにも行くまい。

映像や音声は色々な権利関係が絡んで、たやすく放送出来ないらしいが、

業者間の縄張り争いで、貴重な芸術に多くの人が見たり聞いたりするべき、文化的遺産が知られないまま、

風化していく。

毎年、地上・衛星合計で25,520円の受信料を欠かさず支払っているのだから、

それぐらい言わせて貰う。アーカイブズに日本中の人が来るのはむりなのだから、せめてネットで検索し、

過去の好きな映像を有料でもいいからダウンロード出来るようにして欲しいものだ


◆例えばこういう映像。1977年、ベーム=ウィーン・フィル来日公演、「運命」第三、第四楽章。

どうせ、すぐに削除されるだろうが、こういうDVDがあることを、再びお知らせしておきたい。

(前回お読みになった方、内容が重複して申し訳ございません。)


オーストリアの指揮者、カール・ベーム(1894-1981)は、最晩年、三回もウィーン・フィルと来日し、

貴重な演奏を聴かせてくれた。それは、1975年、1977年、そして、亡くなる前年の1980年である。

その経緯は、音楽ジャーナリストであり、ベームの来日時、通訳のように常に付き添い、ベームの様子を

つぶさに見た人物、真鍋圭子氏の著書、カール・ベーム―心より心へに詳しい。


3回の来日公演の映像と音声は30年後、DVDとして発売された。

カール・ベーム ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1975年日本公演 [DVD]

カール・ベーム ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1977年日本公演 [DVD]

カール・ベーム ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1980年日本公演 [DVD]

である。

私は1977年の来日時、カール・ベーム指揮、ウィーン・フィルが演奏する「運命」を聴いたのが、

クラシックに本格的に夢中になるきっかけとなった。指揮者はしばしば、演奏の録音とか生中継の放送は「資料」に過ぎない。

というが、それは、あまりにも心ない発言である。当時私は高校生。30年前ですら3万円も4万円もするチケット、しかも、

S席からD席までがほぼ瞬間的に売り切れるようなコンサートに行けるわけがない。当時、既に大人だった人も、地方の人は

このNHKホールでの演奏は聴けなかった人の方が、聴けた人の何十倍もいたことは疑うべくもない。



たとえ、音楽家の耳では、電波を通した音楽など意味がなくても、我々はそれしか聴く手段が無かった。


77年の「運命」は生中継された(その前に「田園」を演ったのだが、記憶にない。あまりにも「運命」が強烈だった)。

私は、部屋で「カセットデッキ」の前で、つまり「カセット・テープ」にこの演奏を録音しながら、ヘッドフォンで聴いていた。

演奏が終わり、泣いていないのに、両目から涙がハラハラとこぼれ落ちた。

涙が頬をぬらす、等というものではない。大袈裟に言えば、あまりの感激に涙が前方に噴き出す感じだった

(あくまで感覚である。実際は、頬を伝って涙の筋が出来ていたことであろう)。


私は人間は本当に感動すると、拍手もブラボーと叫ぶことも出来ないことを知った。動けない。

ただ、石像のようにかたまり、涙が溢れ、止まらない。何も分からない少年だったが、直感的に、
ああ、これが本当の音楽なのだ。

と思った。このDVDは、残念だが、あのラジオの生中継と全く同じではない。録音したから、

当然、マスターテープの劣化があるのだろう。

しかし、それでも、この演奏は人類の宝ではないかと思う。例え、すぐに削除されても載せる。

是非、無理をしてでも、特にまだ変な先入観の無い、純粋な若い人に聴いて頂きたい。


◆カール・ベーム指揮:ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団:ベートーヴェン作曲:交響曲第5番 ハ短調 作品67「運命」より。

第三楽章と第四楽章は続けて演奏されるが、御存知のとおり、YouTubeは10分まで。

第三楽章の終了と同時に第四楽章を再生して頂きたい。


ベートーヴェン 交響曲第5番 第三楽章






ベートーヴェン 交響曲第5番 第四楽章







何かを感じて頂けただろうか?

多少マニアックなことを書くと、この時のメンバーは、物凄い。

コンサートマスターは、ゲアハルト・ヘッツェル氏(1940-1992)。

世界のコンサート・マスターの神様のような先生だったが、そういう人に限って、早く逝く。

ヘッツェル氏は何と52歳で登山中に滑落死したのである。

第二ヴァイオリン首席のウィルヘルム・ヒューブナー氏は、1963年から暫くN響が呼んでゲスト・コンサートマスターを

して下さった方である。

クラリネットのアルフレート・プリンツ先生。トランペットのアドルフ・ホラー先生。

雲の上どころではない。最早成層圏を突きつけている。神様そのもの。


上で紹介したDVDは若い人も大人も無理をしてでも、このDVDが市場に存在するうちに買って下さい。

一度にではなくても、勿論よいから。

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