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2007年10月15日(月) |
テロ特措法をめぐる混乱。この1週間の動きと所見 |
◆記事1:小沢氏、アフガンへの陸自派遣「政権取ったら実現したい」(産経新聞)(10月7日(日))
インド洋での海上自衛隊の補給活動継続の是非が今国会最大の焦点となる中、民主党の小沢一郎代表が9日発売の月刊誌「世界」11月号に寄稿した論文で、
アフガニスタン本土に展開する国際治安支援部隊(ISAF)への参加を「政権を取ったら実現したいと思う」と明言した。
政府が提出する新しいテロ対策特措法案に反対する民主党は対案を検討中だが、
民生支援にとどまらず、アフガン本土への自衛隊派遣を盛り込むかどうかで党内の綱引きが始まりつつある。
小沢氏の持論提起はここへも波紋を広げそうだ。
◆記事2:石破防衛相、ISAF参加「憲法妥協の余地なし」(日経)(10月9日(火))(10:44)
石破茂防衛相は9日の閣議後の記者会見で、民主党の小沢一郎代表が主張するアフガニスタンで活動する国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊の参加について
「憲法について妥協の余地はない」と述べ、反対姿勢を強調した。海外での武力行使を禁じる憲法に抵触するとの見解に基づく発言で
「憲法解釈を変えればよいというものではない。自衛隊法や武力攻撃事態対処法の改正も必要だ。
一連の法体系も全部セットにして示さないと議論として不十分だ」と批判した。
◆記事3:ISAF参加は憲法に抵触 首相、衆院予算委で (共同通信)[ 2007年10月11日(木)12時48分 ]
福田首相は11日午前の衆院予算委員会で、民主党の小沢代表が提唱しているアフガニスタン本土での国際治安支援部隊(ISAF)への参加に関し
「憲法で規定する問題につながってくる可能性があると懸念している」と述べ、
武力行使との一体化などを禁じた憲法に抵触する可能性を指摘、参加は困難との考えを表明した。
高村外相はアフガンでの民生分野での支援について、現時点で増やすことは困難と強調。
◆記事4:自民・中谷氏、給油反対「テロリストだけ」=鳩山民主幹事長は反発 (10月14日13時1分配信 時事通信)
自民党の中谷元・安全保障調査会長(元防衛庁長官)は14日、フジテレビの番組で、
民主党がインド洋での海上自衛隊の給油活動継続に反対していることに関し
「(給油活動は)国際社会の中で非常に評価され、ぜひ続けてくれと要望されている。反対するのはテロリストしかいない」と批判した。
さらに「民主党はテロリスト集団か」との質問にも「(反対するのは)僕には理解できない」と語った。
これに関し、民主党の鳩山由紀夫幹事長は同日、和歌山市内のホテルで記者会見し、
「国民の3割は給油活動、テロ対策特別措置法に反対しており、日本(国民)にも3割のテロリストがいるという話になる。
こんなむちゃくちゃなことをテレビの前で発言するのはとんでもないことだ」と強く反発した。
◆記事5:アフガン部隊参加、野党に不協和音・小沢氏持論に抵抗強く(日経 2007年10月15日(月)07:02)
民主党の小沢一郎代表が打ち出したアフガニスタンの国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊の参加という「持論」を巡って、党内外に不協和音が生じている。
ISAF参加は政権を取った後の戦略とはいえ、武力行使を伴いかねず「憲法違反」との受け止めがある。
小沢氏の主張の根幹は、国連安全保障理事会の決議に基づく活動は「国権の発動」である自衛権を超えたもので、
仮に武力行使を伴っても憲法9条には違反しないというもの。給油活動の継続に反対するのも直接的な国連決議がないとみるからだ。
◆記事6:民主の小沢代表「アフガン派遣は後方支援に限定」(日経 2007年10月15日(月)13:03)
民主党の小沢一郎代表は15日午前、自身が提唱したアフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)への参加について
「世界が日本に武力で期待することはない。食糧支援など民生を中心に協力することはいくらでもある」と述べ、
後方支援に限定して考えていることを明らかにした。与党がISAF参加は武力行使を禁じた憲法に違反するなどと批判していることから、
範囲をより明確にする狙いとみられる。発言は党本部で会った連合の高木剛会長と古賀伸明事務局長に伝えた。
◆コメント:やっぱり、小沢の所為で、訳が分からなくなっちゃったのだ。
いいですか。7月29日の参院選で野党が大勝した直後、民主党小沢代表はマスコミから、
「以前からの持論であった「テロ特措法延長反対」の考えは変わらないか?」
と訊かれました。小沢氏は、
「前から反対だと言っているのに、急に賛成する理由は無い」
と答えました。理由は、アフガニスタン戦争はアメリカが国連のお墨付きを得ずに勝手に始めた戦争で、
これを後方支援することは、憲法違反になるから、というものでした。
安倍首相が辞めて、福田政権が誕生し、やっと臨時国会が本格的にはじまりました。9月末です。
そのとき、小沢氏は同じ質問を受け、同じようにこたえました。
◆10月9日発売の岩波書店「世界」(雑誌です)11月号の「小沢論文」以来、すったもんだの大騒ぎになったのです。
岩波書店が出している「世界」という地味な雑誌があります。
「世界」11月号に載せた論文で小沢代表が書いたことは、記事1に要旨が載っています。
「世界」11月号は、二日か三日(だったと思います)で売り切れになってしまいました。
多分、「世界」発刊以来未曾有の出来事じゃないでしょうか。雑誌は本と違って増刷ができないので、
図書館で読むか、いずれ、オークションに出品されるでしょうからそれを待つしかないですね。
それもそのはずで、海自によるインド洋上におけるガソリンスタンド(給油活動)が違憲だ、と言っていた人が、
民主党が政権をとったら、アフガニスタンでテロリストと交戦して、各国の軍隊から死者が出ている、ISAF(国際安全支援軍)に
日本の自衛隊も加わえたい、と言ったのです。
本気で言っているのかどうか、定かではありませんが、小沢氏の論理は
ISAFは国連の委託を受けているので、たとえ、武力を行使することになっても違憲ではない
というものです。どこからどう考えても無理がある。
その理由はつい先日説明しました(ココログはこちらです)ので、お読み下さい。
◆本来、民主党にとって圧倒的に有利な国会になるはずだったのに・・・。
これで、民主党の政権奪取は、絶望的ですね。
テロ特措法延長に反対する小沢氏に対して、与党は「それじゃ、民主党の代替案をだせ」と要求しました。
そうしたら、民主党は、というよりも小沢氏が党内の合意もないまま、自民党案よりも遙かに過激な
(自衛隊を海外に派遣して武力行使しても構わないという)提案をしてきました。
自民党はこの前まで安倍晋三氏が、「戦後レジームからの脱却」をバカの一つ覚えのように繰り返し、憲法を改正し、
日本を戦争が出来るような国にしようとし、野党がそれを牽制していたのです。
それ以前に国民の関心は「年金をどうしてくれる?」だったのです。
ところが、日本人はすぐに何でも忘れるから、テロ特措法絡みで、小沢代表が、
あまりにも、国民感情から乖離した大胆な提案をしたので、年金がふっとんでしまいました。
今や、タカ派(といっても、多くの民主党員は小沢発言に反対ですが)の民主党に対して、
「憲法の規定通り、武力を行使してはいけないのだよ」となだめる、ハト派の自民党、という構図になってしまった。
記事2を読んで下さい。イラクへの自衛隊派遣を決めるときに、最も熱心だった、石破防衛相が、
「ISAFへの自衛隊参加は違憲だ」という意味の発言をしています。
記事3によれば、福田首相も小沢案は違憲だといっています。
◆それでも、またドジな発言をする中谷元防衛庁長官
このように、ISAFに自衛隊を派遣するぐらいなら、ガソリンスタンドの方がマシ、という空気が醸成されつつあるときに、
記事4を読んで下さい。中谷元元防衛庁長官はドジですねえ。
「給油活動に反対するのはテロリストだけ」
だって。ということは、私もテロリストですね。
◆では、どうすればよいのか。
永田町では、大きく括るならば、
新法を作ってでも、何とかガソリンスタンドを続ける
という自民党と、
ISAFに参加するが後方支援に限る
という民主党案(記事6を読んで下さい。小沢代表、当初の威勢の良さが大分削げています)に二分できるでしょう。
いずれも、「何らかの形で対テロ活動を支援しなければならない」という思想が根底にあります。
そこが間違っている。
そもそも、アフガニスタンやイラクが今日の混乱に至ったのは、アメリカが自ら戦争を仕掛けたからです。
反米イスラム勢力はアラブから米軍がいなくなれば、論理的に存在し得ないでしょう。
反米なんだから、米がいなくなれば、反米しようがない。
日本の給油活動とか他の国もアメリカを助ける義理は無い。自分の軍隊の燃料ぐらい自分で用意しろ、と。
また、アフガニスタンでも、イラクでも米軍の攻撃によって、一般市民が大勢亡くなっているのです。
人殺しの手伝いをすることが日本国憲法の理念に合致するとは到底思えない。
それから、6年もテロ掃討作戦を続けながら、一向に成果が上がらない。いつまでも、ビン・ラディンは補足できない。
◆アメリカの立場からは、911のように本土がテロリストが攻撃されていないので、対テロ戦争は成功なんですよ。
ところがですね。アメリカの立場から見ると、911テロの後、アフガンで反米勢力と闘っているおかげで、
911以降、同じような事件は起きていない。
アフガニスタンやイラク国内で市民が死んでも、知ったこっちゃないのです。
つまり、世界の国々はアメリカ本土を守るために使われているような物なのです。
◆結論
結論を述べるならば、日本は尻を捲(まく)れば良いのです。
「テロとの戦いは、世界共通の課題だとかぬかしやがって。6年経っても変化がない。
日本の自衛隊は日本を防衛するためにあるんで、人殺しの手伝いをするためにあるのではない。
まして、アメリカ本土の安全を守るために存在するのではない。アフガニスタンに戦争を自分から
仕掛けたのはアメリカなんだから、てめえのケツはテメエで拭きやがれ!」と。
そんなことをいったら、在日米軍が日本から引き揚げられるなどと心配する必要はないのです。
アメリカにとって、日本の米軍基地は極東や中東への前方展開能力を維持するために必要不可欠。
他のアジアのどの国にいっても、今の日本に匹敵する厚遇は得られないでしょう。
日本から引き揚げられるものなら、やってみなさい、と言えばいい。
最後にもう一度書きます。
アフガニスタンでもイラクでもアメリカ軍は非戦闘員を非戦闘員と知っているのに、
何万人も殺しています。人殺しの手伝いをどうしてもしなければならない、という
議論の前提がそもそも間違っているのです。
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2003年10月15日(水) 「イラク復興支援へ15億ドル資金供与を正式発表」←そんなことをするぐらいなら、初めからイラク戦争に反対すべきだろう。
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