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JIROの独断的日記
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2006年12月18日(月) お待たせしました。ストラビンスキー、「ペトルーシュカ」「火の鳥」「春の祭典」

◆のだめカンタービレというのを初めて見ました。

何かクラシックが流れているな、と思い、ふとテレビを見たら家内が「のだめ」を見ていました。

ドラマに関しては、ストーリーを知らないので、何も書きません。

ただ、音楽のちょっと使われ方が勿体ない。

女の子(あれが「のだめ」なの?)が、ピアノで弾いていたのは20世紀を代表する作曲家、

ストラビンスキーの「ペトルーシュカ」の一部ですが、あれは、バレエ音楽でして、オーケストラ曲です。

(ピアノ用に編曲したものもありますが、それを言い出すとややこしいので省きます)。

それで、ペトルーシュカではピアノは独奏パートとしてではなく、「オーケストラの楽器のひとつ」として使われています。

(ピアノ協奏曲では、ピアノは独奏パートとして、書かれるわけです)。

こういうピアノを「オケナカ」(オーケストラの中)と云ったりするそうです。N響ではかつて「オケナカ」専門のピアニストがいました。

オーケストラの一員としてのピアニストです。本庄玲子さんという方でホルンの大御所・千葉馨さんの奥さんです。既に定年で辞められましたが。

大変上手い方です。

ペトルーシュカのピアノは、やはりオーケストラで弾いてこそ面白いのです。「勿体ない」といったのは、そう言うことです。

これが、原曲です。

ココログからお聴き下さい

ストラビンスキーは、これほど、作風がたびたび変った(変化した)作曲家はいないといわれています。

彼の代表作3大バレエ作品「火の鳥」「ペトルーシュカ」「春の祭典」を聴くとわかります。

なお、「ペトルーシュカ」には、大変難しいトランペットの長いソロがありまして、オーディションに出ます。

トランペットが一人で吹くと、こういう風になります。

ココログからお聴き下さい

簡単そうに聞こえますが、難しいんです。


◆話が逸れます。オーケストラのオーディションでは「オケスタというのを演らされます。

ストラビンスキーから、話が逸れます。

オーケストラが新しくメンバーを採用するときには、全ての楽器のオーディションで、ソロ曲や協奏曲の他に、

オーケストラのレパートリーの中から各楽器にとって難しい箇所だけを演奏させます。

要するに即戦力たり得るか、ということです。どのオーケストラでも、大体、各楽器の難しいところと云ったら決まっています

(勿論、少しずつ違いますが、各楽器の「オーディションの定番」があるわけです)。

そこで、その、「オーディションの定番」を集めた楽譜が、楽器ごとに売られています。

日本では、「オーケストラ・スタディ」(略して、「オケスタ」)といいます。

トランペットならば、他に定番といえば、例えば、マーラーの交響曲第5番の冒頭。

ココログからお聴き下さい

これは、交響曲の冒頭13小節はトランペットしか音を出さない、完全なソロ。このソロでミスったら百年目。

「その日のマーラーの5番は、お仕舞い。」ということです。

楽譜自体は、特別難しい訳ではないけれども、そういう状況から来る本番のプレッシャーがものすごい。

私はロンドンにいた頃、マーラーの交響曲第5番を4回聴きました。そのうち、ベルリンフィルが一回ありました。

アバド=ベルリン・フィルのころ。コンマスは安永さんでした。

トランペット。

間違えました。

移動ドで書きますが、ラドミラーと上がった、上の「ラ」で、見事にひっくり返りました。

私はマーラーの5番を吹いた時は勿論ですが、聴くときも死ぬほど緊張します。ボレロと双璧です。

この、ベルリンフィルの首席トランペットが、ミスったときは、嫌味でも何でもなく気絶しそうになりました。



しかし、このトランペット奏者はさすがに、ベルリンフィルでした。

先日、プロの音楽家の復元力について書きました。

ミスをしても、如何に早く立ち直るか、ということもプロのプロたる所以です。

マーラーの5番は、この後もトランペットにとっては難所続きなのです。

このベルリンフィルのトランペット奏者は、最初に致命的なミスをしたのに、その後、ただの一度も間違えなかった。

これはすごい。本当にすごい。

聴いていて、涙が出ました。

そうはいっても、このトランペット奏者は、次にマーラーの5番を吹く時には更にプレッシャーがかかります。

その時、さぞ嫌だろうなーと、思いました。大変な商売です。


◆お待たせしました。ストラビンスキーの続きです。

あーあ。

やはり、天下国家を論ずるより、こういう話を書いている方が100倍楽しいですな。

いえ、時事問題について、今日、明日にも書くのを止める、というわけでありません。


さて、ストラビンスキーですが、亡くなったのが1971年ですから、完全に同時代の作曲家です。

作品は色々ありますが、やはり、3大バレエ音楽「春の祭典」「火の鳥」(手塚治虫もマンガにした東スラブ地方の「火の鳥伝説」を題材にしています)、

そして、先ほど聴いていただいた(あれは、ほんの一部ですが)「ペトルーシュカ」です。
3大バレエ曲と書きましたが、今はバレエの上演としてではなく、管弦楽組曲としてコンサートで音楽だけが演奏されることの方が多いと思います。


◆ペトルーシュカ補遺(ほい)

最初の方でドラマについては書かない、と宣言しましたが、腹に据えかねるので、やはり後で少し書きます。
この稿のはじめの方で、ペトルーシュカはバレエ曲でオーケストラで演奏されるものだ、と書いたら、

「ペトルーシュカからの3楽章」としてストラビンスキー自身が編曲した作品があるじゃないか。と御指摘を受けました。

そのとおり。ですから、

(ピアノ用に編曲したものもありますが、それを言い出すとややこしいので省きます)。

と書いたんです。

ペトルーシュカだけではなくて、「春の祭典」も「火の鳥」もピアノ用に編曲されています。
いますが、ストラビンスキーを取り上げるのに、まず、ピアノ編曲版から演ることは無いだろうと思うのです。

ストラビンスキーを聴くということは、曲の骨組みだけではなく、まず、オーケストレーションの天才的なひらめきを経験しないとつまらない。

だから、クラシック、特にオーケストラをドラマにするのは無理なんですよ。

オーケストラを実際に集めるとカネがかかる。いくら音大生でも。

オーケストラの各メンバーが芝居の登場人物なら、役者が楽器を弾く真似をすることになり、これが一目で出鱈目なので白ける。

それでは、音楽家に芝居をさせられるかというと、そりゃ無理だ。



ピアノぐらいなら、何とかごまかせるでしょうが、それなら、何も元来オーケストラ曲のペトルーシュカのピアノ版を弾かなくても、

ピアノ曲は何万曲とあるのだから、それを弾けばいいではないですか。何で、へんてこりんな選択をするのかな。

どうしても、ピアノ版ペトルーシュカなら、音だけでも本当の演奏を流しなさいよ。

どうして、途中から「今日の料理」なんだよ。

何を怒っているのか分らないでしょうが、ああいうものが人気がある、ということは、

人々が「優れたものへの畏れ」を知らないからです。

リンク先の文章を最初から最後まで読んで下さい。



この件に関しての反論は、おなじみさん以外、コメント、メール受け付けません。というか、全て削除します。

私にとっては、音楽は子どもの頃から愛し続けてきた崇高なものです。それを汚された気持ちなのです。

また、芸術は大衆に迎合してはいけないのです。問答無用です。

ピアノ版「ペトルーシュカ」の「本来の姿」です。

ココログからお聴き下さい


◆ストラヴィンスキーの他の作品

文章が冗漫になりました。ここからは、簡単に書きます。

ペトルーシュカは割と分りやすい。「火の鳥」の終曲も同じメロディーの繰り返しなので分りやすいでしょう。

これです。

ココログからお聴き下さい


繰り返しなのですが、

それでも飽きないのは、ストラビンスキーのオーケストレーションが非常に巧みだからです。



ストラビンスキーが来日して、自作の「火の鳥」をN響で演奏(指揮)したことがあります。映像が残っている。

面白いのは自作なのに、全然暗譜していなくて、ずっとスコアを見ながら振っていたこと。

クライマックスは非常にエキサイティングなのに、作曲者はまるで淡々としていて、殆ど機械的と云って良いぐらいの指揮でした。

指揮棒を使わずに、フォルティッシモになっても、手首から先ぐらいしか動かさないで、

小さく右手だけで最低限のこと、つまりテンポを示し、何だか、少し照れくさそうな様子のおじいさんでした。

演奏終了後、ブラボーが飛ぶのに、ご本人は、興奮した様子など全然無くて、「どうも」という感じでペコリとお辞儀をして、

そそくさと、ステージの袖に消えてしまいました。押しも押されぬ大作曲家なのに、面白かったですね。


◆これぞ、音楽史上の革命「春の祭典」

どうして、革命的なのか。とにかく聴いて下さい。1部と2部がありますが、どちらも全部載せては長すぎる。

2部の終わり、一番複雑なところ。どうして奇妙に聞こえるのかというと、拍子が1小節ごとに変るからです(それだけじゃないけど)。

訳が分らなかったら、ティンパニのリズムがいかに不規則か、注意して聴いてみて下さい。

ココログからお聴き下さい

どうですか。

この曲が初演されたのが、1913年。パリにおいて、でした。演奏終了後の大騒ぎは有名です。

それまでの音楽とあまりにも違うので、客の半分は「こんなの、音楽じゃない!」と怒って叫び始めたのですが、

のこりの客は「いや、これこそ、革命的に斬新な作品だ。大傑作だ」というのです。しまいには、客席で否定派と肯定派が

掴み合いの大げんかを始めたのです。

演奏者は今では平気でやりますけれども、やはり極めて集中力を要するものと思われます。1小節見失ったらお仕舞いです。

岩波新書に岩城宏之さんの楽譜の風景と言う本があります。

この中で、岩城さんの長い指揮者人生最大の事故について、書かれています。

それは、「春の祭典」の本番で振り間違えて、演奏が停止してしまったというものです。オーストラリアでの話。

ものすごいショックだったらしいのですが、その後、オーケストラのメンバーが一所懸命に岩城さんを元気づけようと、

一緒に飲み明かしてくれた、という話がとても温かい。専門的な話もありますがとても面白い。一読を勧めます。

長くなったので、ガーシュウィンはまた今度にします。


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