外国為替証拠金取引
JIROの独断的日記
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2005年08月31日(水) 郵便局が銀行になれるか。(衆院選前解説シリーズ2)

◆問題点1:形式的なことだが、郵政民営化委員会は詰めが甘い
 

 郵政民営化後、4つの会社に分かれるわけです。で、民間会社になるにはそれなりの名前を付けなければないのです。

 郵便貯金事業は郵便貯金銀行という名称になるようですが、国会の議事録を読んでいたら、どうもこれは問題があるようです。

 質問をしているのは、民主党の岩國哲人議員。

 答えているのは、法務省の寺田民事局長です。

 何しろ、この前まで法務大臣だった南野(のうの)知恵子という人は、「初心者ですから」という、こちらが目眩を起こしそうな発言をして有名になった人で、何を訊いても分からないので、政府参考人として、寺田民事局長が呼ばれたのです。


◆衆議院会議録:法務委員会 17号 平成17年5月13日より抜粋。

 ◆岩國委員:次に、商号の問題についてお伺いいたします。

 この商号について、どういう社名が禁止されておるのか。その点について、二十四条ですか、商号についての規定があります。

こういう、誤解を与える、不正な取引につながるおそれのある社名は認められないということでありますけれども、具体的に最近どういう会社名が問題になったのか、お教えいただけませんか。

◆寺田参考人:我が国にとっては基本的には後者、つまり商号は自由に定めるという原則をとっております。

 しかしながら、そこには全く制約がないわけではございませんで、商業登記法の二十四条に「登記すべき事項につき無効又は取消しの原因があるとき。」という条文がございますので、これにひっかけまして、公序良俗に反するあるいは違法を連想させるというような商号についてはこれを規制しております。

 例えば、最近の例でございますと、公安調査機関というような商号が許されないというような例がございます。

 また、道路公社株式会社でありますとか、その他公的団体を連想させるということも許されないわけで、その中には、明示的に個別の法律によってそのような文字を商号で用いることができないということを定めた一連の法律がございます。

 住宅供給公社、首都高速道路公団などがそういう例でございます。

 実際にそういう申請がされたということはございませんが、これは法律上もうこれが禁止されているということでございます

◆岩國委員 そういう公的な機関であるかのごとく詐称する、これからもそういう人たちがいると思います。

 例えば、政府機関でもないのに政府機関であるかのごとく思わせる、県の名前、市の名前を使って会社の名前の上にかぶせる、そういうものは禁じられているとはっきり局長はおっしゃいましたね。

 では、日本郵政株式会社というのはどうですか。

 政府の政という字が入っています。私は、政府の政というのが入った会社名を聞いたことがありません。

 それは、まず取引所に上場されるべきではありません。まるで政府の一機関が上場を許されているというようなことは、全く前例がないこと。

 風の便りに聞くところによりますと、政府の一部では日本郵政株式会社という会社の設立を計画していらっしゃる。

 これは、商業登記法によって禁じられていることを、政府みずからが違法行為をやろうとしているということであって、こんなことを、同じ政府が会社法で近代化を目指し、公開性、信頼度を高めるといいながら、信頼度を裏切るような政の字を使っている。(後略)


◆コメント:商業登記法上、公的な機関を連想される名前を民間会社が名乗ってはいけないということも、調べてなかったわけです。

 

 このような細かい会議録の内容は、新聞にも載らないし、名前なんかどうでもいいじゃないか、という人もいるかも知れないが、問題だと思いますよ。

 素人じゃないのだから。

 綿密に現行法規を調べておかなければいけません。

 郵政民営化が実現したら、郵便貯金株式会社という名前にする、と昨年12月から政府はしきりに言っていた。

 言っていただけではなくて、実際に民営化するなら、その為に法律を作らなければならない。それは、いくつかの法律の集合体で、それを総称して「郵政民営化法案」にして、先日参議院で否決されたわけです。


◆コメント:法務省の民事局長によれば、郵便貯金株式会社という名前の会社は設立登記できない。

 

 会社法というのがありまして、株式会社を作るときは、人間が生まれたときに出生届をだすように、「設立の登記」をしなければならない。
 ところが、上の法務省の寺田政府参考人(法務省の民事局長です)によれば、公的機関と間違えそうな名称での設立登記の申請をしても認められない、とはっきり言っている。

 国会は、設立できない会社のことを一生懸命議論していたことになる。

 これは、「国の唯一の立法機関」としては、かなり恥ずかしい。これに気づいたのは岩國哲人衆議院議員しかいなかったのですから。


◆コメント:国会は国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関である(日本国憲法第41条)

 唯一の立法機関、つまり、国会の仕事は、法律を作ることなのだから、国会議員というのは、本来、相当高度な法律の知識を持っていなければならないはずです。

 何でも丸暗記していれば良いというものではないが、私は、国会議員に立候補する人は、少なくとも日本国憲法は全部暗記しているべきだと思います。

 憲法が日本国の最高法規なんですから。第9条だけ覚えていればいいってものじゃない。

 いずれにせよ。憲法丸暗記はともかく、もっと、厳密に法律の整合性を確認してから法案を提出するべきです。 


◆問題点2:完全民営化して、郵貯が民間銀行になっても、資金運用が出来ない。

 

 郵貯・簡保で340兆円のお金を国民から預かっているのです。
 小泉案だと、郵貯は将来100%民営化して、民間銀行になる。
 そして、2016年には資金規模は140兆円、そのうち35兆円をリスクマネー、リスクマネーというのは、貸し出しとか、もっと難しいシンジケートローンなどですが、これで運用して、経常利益を6000億円出す。

 と、いとも簡単そうに書いてある。

 そんなのは、無理ですよ。

 何十年も金貸しのプロをやっている今の民間銀行だって、例えば、東京三菱の貸出金の残高が35兆円、三井住友銀行が50兆円なんですよ。

 それを、融資とかシンジケートローンを何十年もやっているスペシャリストが吟味を重ねて運用して、何とか利益を出している。

 お金を貸すには、まず、顧客を開拓しなければならない。外回りの営業職が必要です。そんなことが出来る職員がいるのでしょうか。

 そして、誰にでもお金を貸したら、返してもらえなくなって不良債権が必ず出るのだから、貸出先の財務状況をちゃんと決算書から読み取って、将来性を吟味して、貸しtけても大丈夫かどうか、判断しなければならない。これが、融資課員の仕事です。一種の職人技です。

 また、融資は、とにかくお客さんから預かった大事なカネを他に貸し出すのだから、少し大きな金額になったら、支店長の権限では認可出来ないようになっている。

 どうするかというと、どんな金融機関でも、本店に審査部という部署がある。そこには、更に高度な判断が出来るプロがいなければならない。

 審査部の認可があって初めて融資が出来る。

 審査部員を務められる郵便局の職員がいるのでしょうか。



 さらに、各金融機関には、内部監査の専門家がいる。

 融資でも預金の事務でも、為替や債券、金利のディーリングをするにあたって、ちゃんと銀行内で厳密に定められたルールを守っているか。本当は審査部の認可がいるような融資を支店が勝手に、実行していないか。

 こういう事を、現場に抜き打ちで言って、検査する。

 こういう事は、自分も長いこと、融資に携わっていた人間でなければ判断できない。

 そして、言うまでもなく、郵便貯金銀行には、そんな人材はいません。

 内部監査機能がない金融機関など、許されない。

 もしもそんなところがあったら、金融庁の検査が入ったら、業務改善命令、最悪のときには、業務停止命令がでるのですよ。


◆民営化すれば良いというものではないんです。

 

 小泉首相は、民営化のかけ声ばかりで、民営化すればよりよいサービスが受けられるなんていいますが、上で指摘したように、こんな危ない銀行はないのです。

 完全民営化までにどのようにして、この問題を解決するのか、と言う具体案が、今の郵政民営化計画には何も盛り込まれていない。

 これはもう、単なる思いつきで、きれい事だけを並べているにすぎないのです。

  だから、私は民営化には反対です。


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