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JIROの独断的日記
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2004年11月11日(木) 日本音楽コンクール終了 オーボエに天才的女性奏者現る。

◆日本音楽コンクールとは何か。

 

 元々毎日新聞が文化事業として始めた、日本で、最も権威のある音楽コンクールである。通称毎コンという(初めは毎日音楽コンクールと称していたのだが、NHKが協賛してから、日本音楽コンクールというようになった)。日本で、と書いたが、現在、世界を舞台に活躍している日本人音楽家の多くは、学生時代に毎コンで優勝乃至上位入賞した人々であり、十分世界にも通用する審査が行われていることを意味する。

 毎年この時期になると毎コンが気になる。いつも、国会がどうだ、アメリカが、イラクが、国連が、地球温暖化が、というような話を書いているが、本当は戦争の話などよりも、好きな音楽や楽器の話ばかりを書いていられるような世の中なら、どんなにいいかと思う。まあ、これは愚痴である。

 毎コンが音楽に一生を賭けた若者にとって如何に重要な意味を持つか、また、これに出場することがどれほどの覚悟を必要とするかについては、一昨年に書いたし、今年の夏にも書いた。第一次予選が8月26日に始まり、10月24日、漸く本選が終わった。

今年は、ピアノ、ヴァイオリン、作曲、声楽、フルート、オーボエの審査が行われた。

 ピアノ、ヴァイオリン、作曲、声楽は毎年あるが、その他の楽器は種類が多いので、毎年全ての楽器が参加出来るわけではない。

 去年は、チェロとトランペットだった部分が、今年はフルートとオーボエになったのである。管楽器の奏者は何年に一度しか参加できない。しかも年齢制限がある。自ずと参加回数は限られる。まことに過酷である。


◆今年は、オーボエでもの凄く上手い女性奏者が現れたらしい。

 

 参考までに。これが、オーボエという楽器である。

 それはさておき、「らしい」、と書いたのは、私が自分の耳で聞いていないから、である。

 毎年、毎コンの本選が終了すると、全ての部門(ピアノ部門、ヴァイオリン部門、という言い方をする)の上位3位までの入賞者の採点結果と、各部門の審査委員が好評を書き、毎日新聞紙上に掲載される。

 今年は、オーボエ部門の結果を見てぶっ飛んだ。

 優勝者は、荒絵理子さん(23)=東京音大大学院研究科1年 という人である。学校は問題ではない。

 何を見て私がぶっ飛んだか、というと、オーボエ部門の審査員11人全員が、荒さんを1位に推し、しかも点数が、2位と40点違う。こういう審査結果は、今までの毎コンのどの分野でも見たことがない。

 音楽家は個性のかたまりのような人々で、好き嫌いが激しい。ある参加者が、テクニックはあるのに、音楽性が自分の気に入らないと、ひどい点を付ける人が必ずいるのだ。

 審査員全員が、議論の余地もなく一位に推したというのは、信じがたい。文句のつけようがない、ということだ。しかも各審査員の点数の合計が331点なのだが、2位の人と40点の開きがある。ピアノ、ヴァイオリン、フルート、声楽の各部門では、優勝者と2位の点数の差は、いずれも10点〜12点なのだ。40点の差をつけての優勝がどれほどもの凄いことが、少しはおわかり頂けると思う。


◆上手いオーボエ吹きがいるのは大切なことなのです。

 

 オーボエというのは、非常に大切なパートで、音量は大して出ていないのだが、非常に浸透力のある音色をしているので、フルオーケストラでも必ず聞こえる。

 オーケストラのコンサートでは、曲の演奏を始める前に全ての楽器のピッチ(音の高さ)を合わせる、チューニングという作業を行うが、この基準音、A(ラの音)を出すのが、オーボエである。

 プロの音楽家の耳というのは我々一般人から見ると、人間業とは思えない。1ヘルツ単位の違いを聞き分ける。

 もともと、A=440ヘルツ(NHKの7時のニュース前の時報はラ・ラ・ラ・オクターブ上のラだが、初めの3つのラが440ヘルツである)だったのだが、別に規則があるわけではない。高めのピッチにした方が弦楽器は弦をより強く張ることになり、そうすると音色が派手というか、華やかな響きとなるので、ベルリンフィルなどは、444ぐらいが普通になっている。

 とにかく、そのピッチを決めるのはオーボエだから、非常に良い耳をしていなければならぬ。もっとも、良い耳をしていても、宮本文昭氏などはケルンの頃、自分の耳に音叉を当てて、確認しながら「ラ」の音を出していた。印象的である。

 因みに、プロのオーケストラのメンバーになるような人は、チューナーなどで確認しなくても、全員ぴたりと1ヘルツの違いもなくチューニング出来るのである。宮本さんは念には念を入れているのである。こうして全員のピッチが合わないと、曲を演奏しても、オーケストラが鳴らない(良く響かない、という意味)。


◆全ての時代の曲のオーボエパートがある。

 

 チューニングに欠かせないから、オーボエが大切な楽器だ、というわけではない。

 「オーケストラの響きのかなりの部分はオーボエで決まる」と云われる。そして、オーボエが使われない、オーケストラ曲は殆ど無い。

 バロックから現代の作品まで、必ずオーボエ奏者の姿をオーケストラに見出すことが出来る。

 それだけ、いつの時代の作曲家にとってもオーボエの音は、オーケストラの音を作るのに、欠かせないわけである。オーボエが重要なパートだというのは、そういう意味だ。だから、一流のオーケストラには、絶対に一流のオーボエ奏者がいる。

 他の楽器が重要ではない、ということでは勿論ないが、因みにクラリネットは、オーボエに比べると新しい楽器であり、バッハがクラリネットのために書いた曲はないが、オーボエはバッハの殆ど全ての管弦楽曲に使われている。

 サクソフォーンはもっと新しく、1840年代にベルギーの楽器制作者、アドルフ・サックス、という人が発明した楽器なので、サクソフォーンというのだが、オーケストラでは、限られた作品でしか用いられない。オーケストラにレギュラーのサックス奏者はいないのである。

 ラベルのボレロとか、ムソルグスキー作曲・ラベル編曲の「展覧会の絵」とかビゼーの「アルルの女組曲」ではサックスのパートがあるが、こういう時はトラ(エキストラ)を呼ぶのである。


◆優れた才能が見出されるのは嬉しいことだ。

 

兎に角、毎コン始まって以来の断トツの成績での優勝者が、ピアノ・ヴァイオリンに比べれば、マイナーな管楽器分野、しかもオーボエに現れたというのは、非常に新鮮な喜びである。荒さんの演奏を早く聴いてみたい。

 最後に、オーボエってのは、どんな音がするんだい。と興味を持たれた方のために、CDを一枚。ベニスの愛 〜 イタリア・バロック・オーボエ協奏曲集を薦めます。

 このCDには、マルチェルロというバロック時代の作曲家のオーボエ協奏曲が入っている。この曲は「ベニスの愛」というオーボエ吹きが主人公のベニスを舞台にした映画で使われて、一挙に有名になったのです。

 綺麗ですよー。ロマンチックですよー。もし、ベニスに旅行する予定のある方は、絶対これを持って行って聴いて下さい。泣けてきます。

 勿論日本にいても泣けます。「哀愁」とか「郷愁」の、「愁」という文字を音にしたら、オーボエ以外には無いだろうと、私は思います。


2003年11月11日(火) 「みんなイラクの安全を心配している」米国防長官←お前なあ、それなら最初から戦争するなよ
2002年11月11日(月) 共和党が勝ってブッシュは大得意だが、アメリカでは、911が「やらせ」ではないか、という話が・・・・

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