NINJA-SYSTEMS
るり子の日録【オリーブの森で語りあう】
るり子の日録【オリーブの森で語りあう】
るり子



 わたしは彼の電話の声色で確信する

年が明けて

年始まわりの挨拶などで忙しいらしい彼は

いつもの生活パタンとは違い

私を戸惑わせる。







年末年始の休暇中、

彼からかかる電話のタイミングは

ことごとく私がうとうとしている昼間の時間帯。

そういう時の彼は

私に睡眠を継続させようと 素早く電話を終わらせる。

そんなことが 何度となく重なって

すっかり 彼の存在が遠いものとなっていた。







私はその没コミュニケーションを危惧して

こころがけて彼に メールを送るのだけれど、

多忙な彼から即答がある訳はない。







そんな日々が二週間ほど続いて

私の胸に 一抹の不安が湧きあがる。

まさかとは思うけれど、

彼は 私との関係に飽きてきた?

だから 没コミュニケーションのような状況でも

平気な訳?







彼に限って そんなことはあり得ないと思う傍から

いや、やはり関係の安定に倦怠感を抱いているのかもねと

真逆な感情が湧きあがる。

これは、たぶんRとの恋愛から私が学んだ保身の術だ。

私から離れることなどある訳がないと確信していたRに

手ひどくしっぺ返しを食らったあの記憶が

私に 男女間に完全な信頼などありえないと

今も釘をさす。







私はメールで

何とか 彼から愛の言葉を引き出そうと腐心する。

でも、一向に彼は その種の感情を吐露しない。

思い余って私は

私のことなど忘れてしまったのかもねー

などと 思ってもいない言葉を一応送信してみる。







余裕がないんだという返信を私に返していた彼から

私が覚醒している時間帯に 

ことし初めてといっていい内容の電話が入る。

彼は言う。

僕が、瑠璃ちゃんを忘れているはずがないだろう。

自分が三人ほしいくらい 忙しかったんだ。

瑠璃ちゃんと過ごす時間を捻出するために

今日も頑張って動き回っているんだよ。







文字でない

感情の抑揚の入った彼の声は

私を安心させるには充分甘く

私のざわついて心を 瞬時に解きほぐす。

じゃあね、また電話するから

それまでいい子でいてねと言いながら

電話を切った彼。







満たされた私の心に

追いうちをかけるように 再び

彼専用の着信音が こだまする。







どうしたんだろう、今 話し終わったばかりなのに。

受話器の向こうで 彼が言う。






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私は その言葉を引き出したくて

何度も メールで小細工をしていたのだ。

それでも 反応がなくて

半ば あきらめ忘れかけていた。







「安売りする言葉じゃないだろう」

と、彼は言うけれど

浴びるように その種の言葉を彼から受け続けていた私には

大安売りのように 聞こえなくもない。w







彼に対する信頼は

彼の言葉が運んでくる事を

わたしは彼の電話の声色で確信する。














2009年01月08日(木)
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