マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 (日記)  所詮他人事なんだよねぇ・・・・・・。


先週末の深夜、お客も途絶え、そろそろ看板を消そうかなぁ・・・と思った時、とても懐かしい人がソォ〜ッとドアを開け入ってきた。
時計をチラ見すればまだ12時くらい。

「まだいい?」と言うので「全然良いわよ。いやぁ〜お久しぶり〜。覚えててくれて嬉しいよ」と迎え入れた。

彼はアタシと同年代の元常連。
店と彼の家が比較的近所なので、以前は週二位の割合で来店してたのだが、途中転勤になり、暫くは東京に居たらしい。
二年ほど前に松本に帰ってきたと言う噂は風の便りで聞いていたのだが、一向に顔を見せないので、他にお気に入りの店でも見つけられちゃったのかな? と諦めていたのだ。

彼と久々にbeerで乾杯しながら「どうしてたのよ・・・。ちっとも来てくれないから心配してたのよ」と言うと「この店の前は良く通るので、あっ、今日も看板点いてると思って、入ろうとは思ってたんだけどちょっと元気が無くてね・・・・・・」

「何か有ったの?」
「うん・・・、まだ知らない人は多いんだけど、今、介護で忙しいんだよ・・・・・・」

話を聴くと、二年前に奥さんが重い脳梗塞で倒れられたらしい。
それで長期計画の転勤を早めて松本に戻ったそうだ。

「だから飲みにも出なかったのね・・・・・・」
アタシは事の成行きに納得した。
「何も知らなくてごめんね・・・」

突然の出来事にまだまだ働き盛りの彼は、一時期失意のどん底になり、さぁこれからだ!という意欲も根こそぎ奪われ、家事一つした事の無い彼は何故自分だけが!? と、途方に暮れたという。
彼は奥さんと思春期の子供さんとの三人家族だそうだ。

それからと言うもの、会社でも部下に当たり散らしてしまったり、寝たきりにほぼ近くなってしまった状態の奥さんにも怒鳴り散らしてしまったり、しばらくはそんな暗い日々が続いたという。
時には死が頭を掠めた事も有ったそうだ。

彼を慰めるべく飲み会などがあった時、「こっちがそんな暗澹たる気持ちで居るのに『この時期さえ絶えればこの先良い事も必ず有るからね。頑張ってくださいね』と、耳にタコが出来るほどのポジティブ思考を促されたり『大変ですねぇ・・・さぞかしお辛いでしょうねぇ』とか言った舌の先も乾かない内にあっちを向いて『この間○△に旅行したんだけど風景が凄くてさぁ・・・』なんて話をしていたりする人を見て、(所詮他人事なんだよな・・・)って思ったらもうその場に居るのも嫌になってね・・・」と言いながら彼がため息を吐いた。

1年は理不尽で遣り切れない思いを抱きながらも必死な内に過ぎてゆき、このところに来てやっと使命だと受け入れる事もでき、心が穏やかになってきたという。
「幸い、稼ぎも蓄えも多少は有るので、何とかやってこれたけど、一時は気持ちが真っ黒だったよ・・・」


彼はその後堰を切ったようにカラオケを歌い初め、二人で何と20曲近くも歌三昧の時間を過ごした。

「又時々は来るからね・・・」
と言う彼の言葉にアタシはなんて答えたら良いのか一瞬ためらったのだが、「実はもうこの店をたたもうと思ってるんだ」と正直に話した。

「店たたんで暇になったら、そっちさえ良ければ週に一度くらい何か手料理でも作りに行くよ? 子供だって偶には旨い物食べたいだろうし、ゴメンww・・・、奥さんだって偶には話し相手くらい居ないとストレスたまるでしょうに・・・」
と言ったら「女房はプライドの高い人間だったから、どうかなぁ・・・。まだ他人には心を閉ざしていてね・・・」と言う。

「アタシなら大丈夫かもよ?」と言ったら「そうだね・・・。もし受け入れそうだったらよろしく頼むよ・・・」と言って彼は帰っていった。

人はそれぞれ物凄い壮絶なものを抱えているんだなぁ・・・・・・。
そう思ったら、アタシはまだまだ幸せだと言う気になれた。


腰が大分良くなったので今日は店を開けます。


2010年05月27日(木)

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