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■ 【エッセイ】 身代りになったボス
友人リカの愛犬、【フリンジ】の旅立ちで、以前暮らしていた私のもう一人の息子、マルチーズの【ボス】の事を想い出し、此処に是非書きたいと思った。 実は以前私も、リカとよく似た辛い体験をしているのだ。
それは・・・・・・。
ボスは私が松本に来立ての頃、松本に出来た友人夫婦が飼っていたワンコなのだが、ひときわ私に懐いており、私が遊びに行く度、ボスは私めがけてすっ飛んで来たものだった。 ある日、その夫妻に色々な事情が起こり、ボスを飼えなくなるので是非動物好きな私に面倒を見てもらいたい・・・と言う相談を受けた。
人間以上に動物が大好きな私は、喜び勇んだ。 ボスはまだ一歳を迎える前のやんちゃ盛りで、とても性格の良い、飛び切り人懐っこく、元気で可愛いワンコだった。
元夫に相談すると、やはり動物好きな彼の事、気軽にOKしてくれた。 まだ子供が居なかった私達夫婦にとってのボスは、正に息子同然で、それはそれは、目の中に入れても痛くないほど可愛がっていたのだ。
当時は、元夫、夫の母、私、私の母という4人暮らしだった。 しかしボスは一番私を慕っていて、元夫がふざけて私の事をぶとうなどすると、ギャンギャン吼えて私の身を必死に守ろうとするのだ。 飼主である夫の事さえ、噛み付かんばかりである。
散歩は皆で交代で行ったのだが、私じゃないと嫌がって後ずさりをする事も有ったほど、ボスは私が大好きだったのだ。 何時も何処でも私の側に寄り添い、夜もベッドの足元で私を守るように眠っていた。
そんなボスとの生活が4年ほど続いたある日、私は自分の妊娠に気が付いた。 私は一人息子である哲朗を身ごもったのだ。 「あなたに弟か妹が出来たわよ」 私は真っ先にボスに報告をした。
私の妊娠が4ヶ月目を迎えた頃、一度出血をし、緊急入院した事がある。 その時は軽い治療で済み、3日ほどで退院できたのだ。 そして、その頃からボスの異変に気付くようになる。
散歩をしてると、時々貧血を起こし、フラフラしているのだった。 私は慌てて獣医に連れて行った。 そこで聞いた事実が余りにショッキングで私は血の気がひく思いだった。
「ボス君はフィラリアに掛かっています・・・・・・そして、残念ですが、もう手遅れの状態です」
そんな馬鹿な・・・! と思った。 現に必要とされている全ての予防接種は毎年きちんと受けていたのだから・・・・・・。 その旨を医師に伝えると、「あなたが飼われる以前にもう既に、胎内に入り込んでいたものと思われます。」と言う事だった。
私は咄嗟に以前の飼主に電話をし、ボスの病状を伝えると同時に、以前飼っていた頃、フィラリアの予防接種もしたのかと言う事を聞いてみた。 すると「フィラリアの予防接種なんか知らなかった・・・」と言う返事が返ってきたのだ。もう少し問い詰めると、殆どの予防接種も狂犬病以外はしてなかったと言う・・・・・・。 そう言えば室内犬ニモカカワラズ、庭先同然のような場所で飼われていたボス。 夫婦仲も破滅状態だった為か、あまり良い環境で飼われていたとは決して言えなかったようだ。
取り敢えずは心臓から虫を除去する手術、治療をしてもらい、一時的には元気になったかのように見えたボス。 しかし、ボスは徐々に貧血の頻度が増し、家に居ても突然バッタリと倒れるようになる。散歩に行くのも無理な状態になって行く。 やがては腹水まで溜まるようになる・・・・・・。 獣医と家との往復生活となる・・・・・・。 しかしボスはしんどそうな顔一つ見せず、何時も私の側で寄り添い、元気を与え続けていてくれていた。
そして、そんな中、私が妊娠6ヶ月目を迎えた頃、再び私は大出血を起こし、緊急入院となったのだ。 その頃私達夫婦にも信じがたい色々な事が起こり、私はかなり精神的にも参っていた。 ボスに後ろ髪を引かれる思いで、私は入院せざるを得ない状況になってしまったのだ。 自分の身体の事、お腹の胎児の事、ボスの事、その他の夫婦間の様々な不幸な出来事・・・色々な辛さが一気に押し寄せていた・・・・・・。 医師から「もしかしたら、お腹の子供は覚悟して貰うようになるかもしれません」とまで言われた。
そして、約2週間の入院生活を送り、奇跡的にお腹の子供は助かったのだ。 そして私の退院の日、私の帰りを待ち詫びて居たかのように、ボスはフラフラの足取りでピタリと私に寄り添い、2時間ほど私と過ごし、息を引き取ってしまった・・・・・・。 まだ5歳と言う若さでだ・・・・・・。
その後哲朗は、離婚問題が浮上した傷心の最中では有ったが、無事に産まれたのだ。
私は本当にボスの死が悲しかった。ボスの死を全然受け止められなかった。 あれはボスが私に感謝し、息子の身代りになってくれたのだと、今でも固く信じている。
アレからもう22年が経過した・・・・・・。 今でもボスの事は常に想い出している。 当時、ボスの死はあまりにも哀しく辛く、その後に飼ったチンチラの猫にも【ボス】と名付けたくらい、私にとっては大きな存在だったのだ。
でも、今でもボスは私の中で生き続けている。 何よりも、ボスは哲朗と言う人間の男の子に姿形を変え、未だ生き続けているではないか・・・・・・。 哲朗はボスの生れ変りなのだと思う。
道理で哲朗は、悪戯も良くするし、異様に人懐っこい訳だ・・・・・・。ww 今度お手をさせてみよう・・・・・・。ww
こんなに愛らしかったボス。
以前霊感の強い不思議な女性に、タロット占いをしてもらった事がある。 無論面識も無く、初めて会った女性である。
フゥーリィーと出遭った頃で、その頃のフゥーリィーの色々な短所に、フゥーリィーとの付き合いを迷っていたのである。 大好きなのだけれど、果たしてこのまま付き合いを続けていいものかどうか、誰でもいいから、例え占いででも良いから教えて欲しかったのである。 「貴女と彼は永遠です」と言われ、嬉しかったものの半信半疑だった。 その人には守護霊も見えると言う事だった。
母の死を迎え、数年経った後なので、「私には母が付いてくれているのでしょうか・・・・・・?」と聞いて見たら、彼女がこう言ったのだ。
「あなたのお母様はまだ人の後ろに立てる段階までは行ってないですね・・・・・・。貴女の側でピッタリ寄り添って貴女を必死に守っているのは、毛の短いまっ白い犬です。」と言われ、私はハッ! と息を呑んだ。
「確かに飼ってました・・・。毛の短い白い犬を・・・・・・!!」 私の目に一気に涙が滲んだ。
「名前を呼んであげてごらんなさいな・・・? 喜ぶから・・・・・・」 彼女が微笑みながらそう言う。
私は「ボス・・・・・・・!? ボスなのね!!」 と、思わず叫んで居た。
ボスは暑がりなので、夏の間は私がバリカンでよく毛を刈ってあげていたのだ。 無論彼女に犬を飼っていた話しなどは一切していない。
私の目から、いっせいに涙が溢れ出した。 私は泣きながら「ボス・・・ ボス・・・」と呼んでいた。
「ほ〜ら、尻尾をブンブンに振って、とっても喜んでいるわよ〜」
私はその見知らぬ占い師の前で、堰を切ったように泣いた。 泣いて泣いて泣きじゃくった・・・・・・。
以上が私の哀しく、不思議で、最も愛しい体験である。
ペットが身代りになってくれると言う話は良く聞く・・・・・・。 でも、私自身が体験したこの話を何時か必ずこの日記に書きたいと思っていた。 丁度良い機会だったので、今日のこの日記に書かせてもらう事にしたのだ・・・・・・。
今もボスは、私の隣でピタリと寄り添い、私を守りつづけていてくれてる事だろう・・・・・・。 強い心の絆で結ばれたペットと飼主は、ペットと飼主の域を越え、一心同体となって永遠に離れる事は無いのだ・・・・・・。
この日記を読んで、リカの気持ちが少しでも救われてくれる事を祈っています。
2004年02月26日(木)
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