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■ 【童話】 じろべえ爺さんの かかし
【じろべえ爺さんの かかし】
信州のおくいなかで じろべえ爺さんと かすみ婆さんは ふたりっきりで なかよく なかよく くらしていました。 ふたりは 小さな家のすぐそばに これまた 小さな畑を持っていました。 その畑で 八百屋さんにおろすキャベツと ふたりで食べる野菜などを だいじに だいじに 育てていたのです。 毎朝 おにぎりを持って 畑にでむいては ふたりせっせと 日の暮れるまで 野菜たちの世話をしていました。
ある日 畑に出てみると たいせつなキャベツと野菜が なにものかについばまれていました。 「こりゃぁたいへんだ! さては・・・ きっと あいつのせいだじ?」 じろべえ爺さんは 指をさしました。 かすみ婆さんが ゆびの方向を見てみると 電線の上に 一羽のカラスが止まっています。 カラスは「ザマーミロ ザマーミロ」とうように カァカァ にくらしげにないています。 「こりゃぁいけねえ かすみ婆さんや さっそく家に帰って かかしを作ろうや!」 「かかしかいね? そりゃぁいいですね そうしましょう そうしましょう」 ふたりは 家にかえっていきました。 家に帰ると さっそく じろべえ爺さんは かかし作りにとりかかります。
つぎの朝 ふたりは かかしをかついで 畑にやってきました。 それは 一本足の へのへのもへじと顔にかかれた ふつうのかかしでした。 「よし! これでだいじょうぶだいね!」 じろべえ爺さんは 畑のまんなかに かかしをつっさすと まんぞくそうにうなずきました。 「かかしさん よろしくね カラスから 野菜をまもってちょうだいね」 かすみ婆さんも そういって かかしのあたまをなでました のら仕事にせいをだし お日様が頭のまうえに来たころになると ふたりはかかしのよこにすわり なかよくならんで おにぎりを食べました。
つぎの朝 ふたりがあんしんして 畑にきて見ると またもや カラスに野菜がついばまれていました。 おまけに カラスが かかしの頭にちゃっかり乗って じろべえ爺さんと かすみ婆さんを ばかにしたように あざわらっています。 「やっぱり カラスのほうが おりこうね・・・・・・ かかしなんかじゃ いまどきのカラスは おっぱらえないのかしら?」 「かすみ婆さんが かいた顔が あまりに やさしすぎたんじゃろ・・・・・・」 ふたりは やれやれと ためいきをつきました。 「よーし! こんどは もっとこわいかかしを作ってやるぞ!」 「そうねぇ わたしも もっと こわい顔をかくことにしましょう」 ふたりは がっくりして かかしを家に もちかえりました。
つぎの朝 ふたりは あたらしく作りなおしたかかしを持って 畑にやってきました。 かかしの足は 二本足になっていて 顔もずいぶんと こわくなっていました。 「これならカラスも ちかよらないでしょう」 「そうさな よしよし! これで もうだいじょうぶだいね」 「ねぇ? 爺さん かかしに名前をつけてあげましょうか?」 「そうだな なんにするかいね?」 「そうねぇ・・・・・・ じろべえ爺さんが作ったかかしだから ジロちゃんにするべかね?」 「あはは あんまり強そうじゃないけんど ま いいべか」 「うふふ」 のら仕事にせいをだし お日様が頭のまうえに来たころになると ふたりはかかしのよこにすわり なかよくならんで おにぎりを食べました。
つぎの朝 ふたりが あんしんして 畑にきて見ると またもや カラスに野菜がついばまれていました。 電線の上では いつものカラスが すましています。 「おやおや 又やられてる こんどのかかしもダメかいね・・・・・・」 「やっぱり カラスのほうが かしこいだわね・・・・・・」 「よーし 見ててみろ! こんどこそ カラスをギャフンといわせるかかしを作ってやるぞ!」 「爺さんや がんばっておくれでないかい」 ふたりは やれやれと ためいきを つきました。 またまた ふたりは かかしを家に もち帰りました。
「さぁ 今度のかかしは いくらかしこいカラスでも たちうちできんまい」 そのかかしの両手の先には 長いひもがついていて水車とつながっているのです。 畑わきに流れる 小川の水の力を利用して 両手が動くしかけになっているものでした。
次の朝 ふたりは さっそく あたらしく作りなおしたジロちゃんを持って 畑にやってきました。 じろベえ爺さんは かかしの両手の先についた ひもと水車を 小川に入れてみました。 すると・・・・・・。 ジロちゃんは バンザーイ バンザーイ と 両手を高くあげるのでした。 「まぁまぁ 本当の人間みたいだわ これならきっと カラスも こわくてちかよらないでしょう」 「うんうん これなら いいずらいねぇ・・・・・・」 のら仕事にせいをだし お日様が頭のまうえに来たころになると ふたりはかかしのよこにすわり なかよくならんで おにぎりを食べました。
そして その日をさかいに とうとう カラスは やってこなくなりました。 田んぼに やっと へいわな日々が もどってきました。
それから 月日はながれ 畑にやってくるのは かすみ婆さん一人だけになりました。 かすみ婆さんは ジロちゃんに なきながら 話しかけます。 「おはよう ジロちゃん じろべえ爺さんが 急なしんぞうびょうで あの世に行っちまったよ・・・・・・ あたしゃ さみしくて さみしくて しかたないんだいね? 」 かすみ婆さんは そういって かかしのあたまをなでました。
かすみ婆さんは ふりきるように せっせと のら仕事にせいをだしました。 お日様が頭のまうえに来たころになると かすみ婆さんは かかしのよこにすわり 一人ぽっちで さみしく おにぎりを食べました。
かすみ婆さんのよこでは 大好きだった じろべえ爺さんがつくったかかしが バンザーイ バンザーイ と かすみ婆さんを はげますように 両手をあげているのでした。
(おしまい)
※朝眠れずに、即興で作った童話です。 こんな暮らしがしたいというマキュキュの願望も入ってます。 亭主を先に殺しちゃぁ〜イカンわな・・・・・・(^^;
2003年05月16日(金)
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