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■ 【童話】交換マーケット
※これは、以前載せた事のある童話なので、読んだ人も居るとは思いますが、童話コンテストに応募してみようと、一度日記から外してしまった物です。 (ンで・・・、出来がイマイチなので公募は諦めようかと・・・・・・) ある人からリクエストをされたので、又、載せる事にしました。
【交換マーケット】
テツロウには、とてもしんこくな、ナヤミがあった。 まだ小学校の4年生だというのに、すでに、体重が65キロもあるのだ。 学校でのあだ名は『コニシキ』ならぬ『小力士』だし、そのせいで、体育もニガテ中のニガテ。 そんなテツロウの一番のナヤミは、はじめて好きな女の子ができたというのに、まるで望みがナシだということ。 その女の子は最近転校して来たばかりの子で、名前を『マキ』という。 やさしくて、明るくて、勉強もよくできて、そのうえ、とびきりの美人だった。 テツロウは、かんぜんにメロメロ状態。いや、テツロウにかぎらず、クラス中の男の子達の間では、マキちゃんのわだいで、いつも、もちきりだった。 だけど・・・・・・だけど・・・・・・。
つい昨日、マキちゃんが、同じクラスの久子と話していたのを、テツロウは、ついつい立ち聞きしてしまったのだった。
「マキちゃは、どんな男の子が好みなの?」
そう久子に聞かれていた彼女は、 「えっとねぇ・・・。まずは、スマートでぇ、ハンサムでぇ、スポーツのとくいな人。そして、頭が良いわりには、気取ってなくて、オモシロイ人」 と、答えているではないか・・・・・・。
(・・・ダ・・・ダメダコリャ・・・・・・)
テツロウは、お風呂に入りながら、カガミに写るぶかっこうな自分を、のろってやりたい気分だった。 「顔はまぁまぁだと思うし、オモシロイところだけは合ってるんだけどなぁー。後は全部ハズレかよ。トホホホホ・・・・・・。これは、なんとしてでも、やせなくちゃ!」 そう決心したテツロウは、カガミの中の自分に強くうなずくのだった。
―そして次の日―
学校から帰ってくると、家のポストに、一枚の封書がとどいていた。 お母さんに渡そうとして、テツロウは、ふと、お母さんもお父さんも、るすだということに気付いた。 (そうだった・・・・・・。お母さん達は、結婚記念日とかなんとかで、この僕をさしおいて、昨日から二人だけで旅行中だったんだっけ・・・・・・)
テツロウは、しかたなく、その封筒をおばあちゃんにわたした。 でも、おばあちゃんは、 「テツや、おばあちゃん、目が見えないの知ってるだろう? 近ごろ、ますます悪くなってねぇ・・・、おまえの顔だってボンヤリだもの。とてもじゃないけど、手紙なんてよめやしないよ」 と、こまり顔。 「いいや、いいや。じゃ、ひとまず僕があずかっておいて、お母さん達が帰ってきたら、わたすよ」 テツロウは、そういうと、自分の部屋にランドセルを置きに行く。
「ん? ナニュニュ?」 手にした封筒をなにげなく見ると、なにやらおかしな事が書いてある。 「あなたの夢をかなえます? 提供 交換マーケットの夢屋商事かぁ・・・・・・」 ここで、テツロウに悪知恵がはたらいた。 「なんだろう? おもしろそうだな、まっ、いいかっ! 開けちゃえ、開けちゃえっ!」 そうつぶやくと、さっそくその封筒を開いてみた。
封筒の中に入っていたのは、一枚のあやしげなカード。そのカードには、ふしぎな文字でこう書かれている。 (あなたの夢と、あなたの宝物とを交換します。どうかお気軽に、お電話ください) テツロウは、書かれている電話番号を、おそるおそるお押してみた。 プルルル・・・・・・プルルル・・・・・・ 「まいどありがとうございます。こちら、交換マーケットの夢屋商事でございます。さて・・・、あなたの夢はなんですか?」 いきなりそんな声が、受話器から飛び込んできた。 「え、えーと・・・・・・あの・・・その・・・・・・。ぼ、僕、スマートになりたいんですけど・・・・・・」 テツロウは、ドキドキしながらそう答えた。 「では、あなたの宝物はなんですか?」 思わずテツロウは、 「マキでちゃんです・・・・・・」 と答えてしまって、一人で顔を赤くした。 「はい! しょうちいたしました」 そういうなり、電話はプツリと切れた。 「ほぇ? な・・・なんだ? 今のは・・・・・・」 テツロウが首をかしげたとたん、なんと、テツロウの身体が、みるみる細くなって行くではないか・・・・・・。 「う・・・うそぉ・・・・・!」 テツロウは風呂場に飛んで行くと、すっぱだかになって、姿見に全身を写してみた。 「こ、これが僕・・・・・・!?」 カガミに写っているのは、とってもスマートな、テツロウうだった。 テツロウはついでに、体重計にも乗ってみた。 体重計のハリは、35キロをさしている。 「ウヮオ! やったぁ! なぁ〜んだ、僕って、あんがいイケけてるじゃん?」 ポーズをとって、とくい顔。
夕食の時間になり、テツロウは、ウキウキしながら、夕食のしょくたくについた。 でも、おばあちゃんは、 「おまえ、なんだかちょっと、やせたかい?」 そう言うと、入れ歯で食べにくそうに、タクアンを噛んでいる。 「えーっ? ちょ、ちょっとだけ?」 (まっ、いいか・・・。おばあちゃんは目が見えないんだもんな・・・・・・) テツロウは、心の中でそうつぶやくと、ワクワクしながら、明日が来るのを待った。
―そして、また次の日―
バッチリきめこんで、学校へ出かけたテツロウは、クラス中がおおさわぎになっている事に、気が付いた。 どうやら、きのうから、マキちゃんが行方不明になっているらしい。 (な・・・なんか、イヤな予感・・・・・・。ま、まさか・・・・・!) テツロウは、久子をとっつかまえると、 「久子・・・マキちゃん、どうかしたのか?」 と聞いてみた。 「う・・・、うん。きのうから、行方がわからないんだって。ま、まさか、誘拐されたんじゃないでしょうねぇ。私心配だわ・・・・・・。と、ところで、アンタ、だれ?」 久子はそういうと、ふしぎそうにテツロウを見上げている。 「僕だよ、小力士!」 「ハ・・・、ハイッ?」 久子は、スットンキョウな声を上げた。 「やばっ! こうしちゃいられないっ!」 そうさけぶと、テツロウは大急ぎで家へと引きかえした。 「えーっと、ど、どこだったっけか・・・・・・」 テツロウは、手当たりしだいに例の封筒をさがしまくった。 「あっ! 有った、有った・・・、コレダ、コレダ・・・・・・」 テツロウは、祈るような気持で、電話番号をお押してみた。
プルルル・・・・・・プルルル・・・・・・ 「まいど、ありがとうございます。こちら、交換マーケットの夢屋商事でございます。さて・・・あなたの夢はなんですか?」 受話器からは、この前と、まったく同じ声が飛び込んできた。 「すぐにマキちゃんをかえしてください!」 テツロウは、なみだ声でうったえた。 「では、あなたの宝物はなんですか?」 テツロウは、考えるひまもなく、 「僕の、スマートなからだです」 と、答えてしまった。 「はい、しょうちしました」 そしてプツリと電話はきれた。 受話器を置くなり、テツロウの身体は、モクモクとふくらんで、あっという間にもとのオデブさんにもどっていった。
―そして、またまた次の日―
おそるおそる学校へ行くと、クラスが又にぎわっている。どうやら、マキちゃんが無事に帰ってきた事で、皆、よろこんでるようだ。 テツロウは、ホッとむねをなでおろした。 そこへ久子がやってきて、 「おい! 小力士! きのうは何で学校休んだのさ? もう・・・、マキちゃんがいなくなっちゃって、クラス中おおさわぎだったんだから・・・・・・」 と、もんくをいう。 「えっ? ち・・・、ちょっとカゼぎみで・・・・・エヘヘヘヘ・・・・・」 テツロウは、あわててごまかした。 久子は、きのうの出来事を、ひととおり話し終えると、首をかしげながら、こう、付け足した。 「そう言えばさぁ、昨日、このクラスにへんな男の子がまぎれこんで来たのよ・・・。アンタだれっ? って聞いたら、あんただって言うじゃない? あの子、どうかしてるわ・・・・・・。でもさぁ・・・、うちのクラスでは、おめにかかれないようなハンサムだったわ。あ〜、あの子一体、だれだったんだろう・・・・・・。もう一回でいいから、私、あの子に会ってみたいなぁ〜」 そう言うと、久子は、ほんのり顔を赤くした。 テツロウは、思わず「プププッ!」と吹き出してしまった。
(あ〜ぁ、ハンサムかぁ・・・・・・。もし、昨日の姿でマキちゃんに会えていたなら、マキちゃんは、僕の事、どう思っただろう・・・・・・) テツロウはそうつぶやくと、ためいきまじりに、遠くからマキちゃんを、みつめるのだった。
(おしまい)
2003年05月14日(水)
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