マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 【エッセイ】♪Oh MY PAPA ♪ 父の事 


♪ オー マイ パパ〜 帽子を横っちょに〜 
か〜ぶ〜り〜 おどけていた〜 ♪
 
皆様は、この歌い出しで始まる【オー マイ パパ】という歌を、ご存知ですか?
余りに多くの人が歌っている為、(勿論日本でも)私自身も誰の歌なのか解らないんですが、かなりスタンダードで有名な曲です。

サテ・・・・・・。
私は今まで幾度となく、この日記に亡き母を登場させてきました。
が・・・・・・。
父の事を書いた記憶は殆どありません。別に、意識して書かなかった訳ではないのですが、1・2度、ほんのエキストラ程度に、チョロっと引っ張り出したに過ぎません。(笑)
が、しかし・・・・・・、

(これでは余りに方手落ちではなかろうか・・・・・・? これでは、父は、草葉の陰で、地団駄を踏みながら、ひがんでるのではなかろうか・・・・・・?)
そう思い、今日は、少し、父の事に触れて見る事にしました。


時は昭和三十△年・・・・・。

私が産まれた時点で、私のパパは売れない喜劇役者だった。そして又、ママも売れない女優だった。二人とも、テレビなんかには、殆ど出してもらえず、脇役か、順レギュラーの仕事が1・2本有る程度だった。
無論、二人とも、それだけでは生活を支えては行けず、幼い私を祖母達に預け、ママは銀座のクラブの雇われママ。パパは、ストリップ劇場の前座のコント、ドサ周りの劇団芝居(現代劇だけど)調理のアルバイト等をしながら、一家五人の生計を立てていた。
パパは、ノンベェで、面白くて、女好き。
ギャンブルにこそ、それ程狂わなかった物の、(偶に麻雀や競馬はやっていたが)3拍子の内、2拍子半くらいは揃った、お定まりのダメ亭主。
少ないギャラを貰っては、その殆どを仲間達に奢りまくってしまう程、バカが付くよなお人好しでもあった。
それでも、私の事は殊の他可愛がってくれ、都内で仕事が有る時などは、例えストリップ劇場だろうが、怪しげな黒テント小屋だろうが、友人たちとの打ち上げパーティーのキャバレーだろうが、お構いなしに私を連れ歩くような人だった。

そんなある日の事・・・・・・
当時、4〜5歳ほどの私は、とある新宿のストリップ劇場の楽屋で、ストリッパーの御姉ちゃん達に遊んでもらいながら、パパのコントが終わるのを待っていた。
煌びやかな衣装がずらりと並ぶ楽屋は、私にとって、宝石箱にも見え、幼心にとても憧れていたのである。
「いいなぁ〜。きれいだなぁ〜。私も着てみたいなぁ・・・・・・」
うっとりする私を見て、お姉ちゃんたちは、何やら、ひそひそと相談事をしているようだった。
パパのコントが終わり、楽屋に戻ってきたパパに、出番待ちのお姉ちゃんたちが、そっと何かを耳打ちしていた。

やがて・・・、ストリップのショーも終わり、客たちも引けた後、何と、皆で寄って集って、お姉ちゃん達の羽で出来たショールやら何やらを私の身体に巻き着け、お化粧までしてくれて、ギラギラに私を飾り立ててくれたのだ。
「うわ〜っ!可愛い〜♪」 お姉ちゃんたちはおおはしゃぎ。
私もおおはしゃぎ。
パパもおおはしゃぎ。
そして、それだけではあき足らず、矢も立ても溜まらず、私はステージで踊ってみたくなったのだ。
パパにそっとおねだりをすると、パパはウインクをして、「チョット待っててね?」と言い、その場を去ったのだ。
そして、スタッフ全員が悪乗りして、お姉ちゃんたちがお客になり、他のスタッフたちが照明や音楽まで、本番さながらに掛けてくれ、パパの司会が始まった。
「ハ〜イ、皆様お待ちかね。当店が誇る、プリマドンナのナンバーワン!! 踊る妖精、○×△嬢の御登場でございまぁ〜〜〜〜〜す。皆様絶大なる拍手を持って、お迎えくださいませ〜〜」
暗転のステージに、スポットライトが照らされ、私は、ミヨウミマネデ、しかし、実に艶かしく、あでやかに腰をのたくらせながら(モチ、脱ぎはしないものの)ストリッパーの真似事をしちゃったんでありまして・・・・・・(^^;)。
皆、キャーキャーの大騒ぎ。

後日、その事がママにバレ、二人並んで、もの凄いお説教食らったわ・・・・・・。

そんな、ハチャメチャで、面白くて、大好きだったパパだけど、私が小学校3年の時、パパとママは、パパの愛人問題が理由で離婚し、その後も、私達母子とは、交流は有った物の、私が19歳の時に、パパは肝硬変で、急死してしまった・・・・・・。
そしてそれは、私の婚約を目前に控えた時だった・・・・・・。
パパの愛人から、悲鳴にも似た知らせを聞いて、私が病院に駆けつけた時は、もう既にパパの息は絶えていた。
パパの死に顔は、半分薄目が開いていて、まるでウインクをしているようだった。
『やったね! マキ! 婚約オメデトウ〜♪』と・・・・・・。


♪オーマイ パパ 帽子を 横っちょに 被り おどけていた〜♪

この歌のように、お洒落な、カッコいいパパではなかった。
けれど私は・・・・・・、どうしようもないけど、何故か憎めない・・・・・・。そんな、ペーソスに溢れたパパが、大ぁ〜〜〜〜〜ぃ好きだった。
優しく・チョッピリ情けなく・愛しかったパパ・・・・・・。
今、パパとママは、天国で会えているのだろうか・・・・・・。
そして、今でも、時々、喧嘩してるのだろうか・・・・・・。


by マキュキュ


2002年09月17日(火)

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