マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 エッセイ集【私をそそる者達】より〜 地震ノイローゼ


     地震ノイローゼ



私は極度の、地震恐怖症だ。

本当に、地震・雷・火事・オヤジ・の順に弱い。

今まで、地震に遇った中で、最も大きな震度は、多分三ぐらいだったと思う。そう、大した地震の経験は無い。にも関わらず、何故こんなにも地震が怖いのだろう。

東京に住んでいた頃は、結構頻繁に起きていた地震も、信州に移り住んでからは、数えるくらいしか無い。

しかし、最近、日本のあちらこちらで、地震が多発している。今日とて、沖縄で地震が有ったとニュースで言っていた。

ニュースに寄ると、震源地は、台湾だそうで、震度6とか言っていた。

震度1〜2ぐらいでも、ギャーギャーものの私は、もしも、そんな地震が起きたら、その場で、ショック死してしまうかも知れない。

先日、私が勤めているスーパーで、地震の為の避難訓練が行われ、私がテナントの代表で参加したのだが、その時、消防署の人が、こんな不吉な事を言っていた。

「この辺は、いくつかのプレートに囲まれていて、今や、爆発寸前の所にきている。周期的に見ても、断層のズレから見ても、今ここで大地震が起きても、不思議では無い位なのです」

そして、追い討ちを書けるように、つい最近、仲の良い友達と食事の最中、その友達にも同じような事を言われ、しばし、深刻な地震談義となった。

(以下、誰の台詞か解りにくいと思うので、脚本風に書きます)



友人 「ねぇねぇ、マキュキュ。昨夜のニュース見た?」

私 「いんや?」

友人 「ここ三年以内に、必ずと言ってもいい程の確率で、阪神淡路大震災と同規模か、それ以上の地震がこの松本辺りを襲うんだって、ちゃんとしたニュース番組で言ってたのよ」

私 「ぎょえーっ! 本当?」

友人 「うん・・・・・・、しかも、三年間の内で、今年が一番やばいらしい。」

私 「ぎょえーっ! 本当?」 

友人 「うん、だって、ちゃんとしたニュース番組で言ってたんだもん、嘘って事はないっしょ・・・」

 ちゃんとしたニュース番組と、ちゃんとしてないニュース番組があるのかどうかは知らないが、そうだとしたら、大変なことである。

ともかく松本はやばいらしい。

どうしよう・・・・・・。

私 「お米買う金にすら、困ってるって言うのに、何処かに引っ越す金などあるわけも無いし・・・・・・」

友人 「ま、死ぬ時は皆一緒だもん、いいじゃん」

何が、『いいじゃん』だぁー。

地震という物は、いつ何時起こるか解らないから怖い。

「ハイ、今から揺れますよー」と言う予告さえあれば、まだ親切なのに・・・・・。

心の準備も、身だしなみの準備も出来ないまま来るのだぞ。

夫や、ミュウー(飼い猫)と、離れてる時に起こったらどうしよう。仮に、我家で寝ている間だとしても、私の寝室の脇は、道一本隔てて直ぐ山である。土砂崩れで、私だけ埋まってしまうかも知れない。

阪神大震災は、確か、真冬の真っ只中、しかも、真夜中に起きたのだ。あの寒空に、パジャマ一枚で、放り出された人も、さぞや大勢いた事だろう。



友人との会話は、大地震が起きた時、どんな人が一番可哀相か・・・・・・と言う話に発展しつつ、更に続く。

友人 「ビルの窓拭きや、高い所で仕事してたら怖いだろうねぇー」

私 「うんうん、エレベーターの中も、危ないんでしょう?」

友人 「そうそう。特に、大嫌いな人と、二人だけで乗り合わせてたりしたら、最悪!」

私 「うんうん、私良く、大嫌いな人と乗り合わせる〜」

友人 「食前か食後かによっても、生存率はかなり違ってくるでしょうね」

私 「うんうん、『いただきまぁーす』って時にグラッと来たら、可哀相。せめて食べた後じゃなきゃ・・・・・・」

友人 「うんうん、お腹一杯になった後なら、例え長い時間閉じ込められてても、助かる見込みはあるもんね」

私 「ネェ・・・、大地震が起きた時、たまたまトイレで大きい方してた人って、『運のツキ』とは言うけれど、本当にミジメだよねぇ」

友人 「そうだよねぇ。しかも、ふんばってる途中で、トイレの下敷きになったりしたらすごい悲惨じゃん。あんなカッコウのまま、拭く暇も無いまんまで潰されるんだよ?」

私 「そうだねぇ。なまじ救出されたくないわねぇ・・・・・・」

私 「そんなこと言ったら、お風呂入ってる時も、ミジメだろうねぇ」

友人 「うんうん・・・・・・」

私 「Hしてる最中ってのも、悲惨」

友人 「ショックで、膣痙攣起こしたりして・・・・・。お互いに死んじゃえれば、天国にイッタまま天国に逝ける訳だけどね・・・」

私 「でも、助かったりしたら、あのままの格好で運ばれる訳でしょう?」

と、地震自体の話は何処へやら、話は下ネタ一直線。真昼間とはいえ、女同士の会話なんて、こんな、えげつないものである。

ある本に書いてあったが、地震が何故怖いのかというと、揺れた瞬間、大体の人は、「今よりも、もっと揺れが酷く、大きくなる」と、思い込んで、パニックを引き起こすらしい。その自己暗示が、更に恐怖心を煽るのだと言う。

地震という物は、最初の揺れが一番大きいのが普通であって、それより大きくなる事は滅多に無いものらしい。だから、(この揺れが高々、一分間ほど続くだけさ)そう思えば、然程怖くは無い。と、書いてあった。が、本当だろうか・・・・・・?

どちらにしても、地震は怖い。

出来れば、何処かに引っ越したい。

だから、地震に当る前に、宝くじを当てるのだ。


【注】 このエッセイ集は、私がブティック勤めをしていた頃に書いたものです。






2002年07月19日(金)

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