マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 ミュウー〔最終章〕 (2)


(2)

 何もかもが順調に運んでいたはずなのに、忘れられない出来事が起こったのは、夏から秋へと、バトンがわたされようとしていた、ある夜の事だった。

レストランも閉店し、僕達の夕食も済ませた夜のひと時。僕は、店のテーブルで、デザートのチーズケーキを、ミュウーと分け合ってほおばっていた。

と、お皿を洗っていたお母さんが、とつぜん、おなかを抱えて苦しみ出したんだ。

「真紀子、ど、どうした?」

 厨房で、後片づけをしていたお父さんは、お母さんのもとへかけよると、心配そうに顔をのぞき込んだ。

「ま、まだ・・・・・・、赤ちゃんが生まれる時期ではないのに、ものすごく、おなかが痛いの・・・・・・」

 お母さんは真っ青な顔をゆがめて、苦しんでいる。

 僕は、どうして良いのかわからずに、ただおろおろしながら二人を見ていた。

「た、大変だ。哲朗! すぐにきゅ、救急車に電話しろ!」

 お父さんの声に僕はあわてて、119番にダイアルした。

「イタタタタッ・・・・・・痛いーっ!」

 お母さんは、あぶら汗をたらしながら、とても苦しそうにうめいている。

「真紀子! しっかりしろ」

 お父さんの呼びかけに、返事も出来ないほど、お母さんは苦しがっている。

 お母さんは、前に一度、赤ちゃんを流産している。もしかしたら、又、赤ちゃんが死んでしまうかも知れない・・・・・・。それに、お母さんだって危険な目にあうかも知れないんだ・・・・・・。

そう考えると、僕はこわくて、パニックになった。

 そんなさわぎに、ミュウーも何かを感じたのか、ウロウロと、落ち着かないようすだった。

僕は、ミュウーにかけよると、おもいきり、ミュウーをたたきながら、泣きさけんだ。 

「ミュウー、お母さんを助けて! おまえは、幸せを運ぶ猫だったよね? だったら、なんで、お母さんがこんな目に会うんだよ! ミュウーのバカ! お母さんと赤ちゃんに、もしもの事があったら、僕はしょうちしないから! ねぇ、ミュウー・・・・・・、さ・・・、最後のお願いだよ・・・・・・お母さんと、赤ちゃんを助けてよ・・・・・・お願いだから! ミュウー・・・・・・ねぇ・・・・・・ミュウー・・・・・・」

 僕は、どうしようもなく、ミュウーに当りちらした。

 しばらくして、救急車がとうちゃくし、お父さんは、僕に、「わかりしだい、電話をするから、家で待ってなさい」

と言った。

救急車は、ふたたび、けたたましくサイレンを鳴らすと、お母さんと、お父さんを乗せて、そのまま走りさってしまった。

 僕は不安で、不安で、しかたがなかった。

どうか、お母さんと、赤ちゃんを助けて・・・・・・。



―その晩、ミュウーは、なぜか、ずっと僕のそばにいた。僕のそばによりそい、片時もはなれようとはしなかった―

        

 僕は、ベッドに入ってからも、お母さんが心配で、とても眠る事なんか出来なかった。

 ミュウーが、ぐるぐるとのどを鳴らしながら、僕を守るように僕に寄り添(よりそ)っている。

「ミュウー、さっきは、当り散らしてごめんね・・・・・・? 僕、どうしようもなかったんだ・・・。ねぇ、ミュウー、お母さんも赤ちゃんも、きっと助かるよね? 他にはもう、何も望まないよ・・・・・・。お母さんと赤ちゃんが無事だったら、僕はもう、それだけでいいんだ」

 ミュウーは、長い間、じっと僕の目を見つめている。そして、『だいじょうぶ!』というように、大きく瞬(まばた)きをした。それから、いつもとはちがった悲しげな声で、ひときわ大きく『ミュウー!』と鳴くと、何度も、何度も、僕をふりかえりながら、外に出て行った。

 僕は、いつもの散歩だと・・・・・・、

いつも通りに、すぐに帰ってくると・・・・・・、そう思っていた。

             ―次回に続く―



ぁ〜!!(*'J'*)パオーンパオーン♪ オメデトウ♪('-'*)ピヨピヨ♪日本!!






2002年06月14日(金)

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