マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 ミュウー〔最終章〕ミュウーよ・・・(1)


ミュウー〔最終章〕 ミュウーよ・・・ 



(1)

 そして僕は中学生になった。

季節は初夏をむかえ、中学生としての生活にも少しずつなれ、それなりに、仲良しの友達も、数人は出来た。

 ヨッチは、ヨッチで、横浜での新生活を、大好きなお母さんのもとで、思い切り楽しんでいるみたいだ。

 あれから、ヨッチとは、週に2、3度、電話で話すことにしていた。

 そしてミュウーは、もう、すっかり大人の風格をただよわせ、最近は、デンとかまえてて、あまり僕と、遊んではくれなくなった。

 僕がネコジャラシでさそっても、ほんの、おあいそで、2、3度、手をコチョコチョっとするだけで、後は、ツンとすましている。

 なんだか、ミュウーは、僕をぬいて、どんどん大人になってしまうようで、僕は、ぜんぜんつまらない・・・・・・。

 ミュウーは、やがて、外に出る楽しみまで覚えてしまい、一度出て行ってしまうと、三日も、四日も帰って来ない事もある。

ミュウーが、一番最初に外に飛び出してしまった日、僕は心配で、心配で、夜も眠れなかった・・・・・・。

それ程僕が心配しているにも関わらず、その晩(ばん)はおろか、三日たっても、四日たっても、ミュウーは帰らなかった。

交通事故に遭(あ)ってやしないか、毒蛇(どくへび)にかまれて動けないんじゃないか、もう、どこかで死んでしまってるんではないか・・・・・・。

僕の想像は、どうしても、悪い方に、悪い方にへと、傾(かたむ)いていく。

 僕は毎日泣きながら、ミュウーを探し回ったものだ。

 お父さんは、

「きっと、新しい土地を、あっちこっち探索しているんだよ、そのうちに帰ってくるさ」

 と、平然(へいぜん)としていたけれど、僕は、学校に行っても、授業はまるで上の空。ミュウーの事が気がかりで、何も手につかなかった。

 僕は、ありとあらゆる事をした。

 警察(けいさつ)や、保健所や、町中の獣医(じゅうい)にも連絡をしたし、地元新聞に、たずね猫として、記事(きじ)も載(の)せた。

 そしてミュウーは、なんと、十日もたったある夜、何食わぬ顔でヒョッコリと、帰ってきたんだ。

ミュウーは、ひと回りほど、小さくなってはいたけれど、全くの無傷で帰って来た。

あの時の嬉しさったら、なかった。

 僕は正直いって、悪いふうにばかり考えていたので、ミユウーに抱きついて、オイオイ声をあげて泣いてしまった。 

 ミュウーもさすがに、その夜だけは、僕達家族にすりよって来て、一晩中(ひとばんじゅう)甘え通しだった。

「一体、どこに行ってたんだよー。こんなに心配させて・・・・・・」

 僕は涙が止まらなかった。

そして、これほどミュウーが愛しい存在だったことに、あらためて気付いた。

 でも、そんな感激(かんげき)は、つかのまで、それを期に、ミュウーの家出グセが始まってしまった。

「この、不良ネコメ・・・・・・。もう僕の親友は、おまえだけなんだから、ぼくのそばからいなくなっちやダメじゃないか・・・」

 僕は、ミュウーに、いつも言って聞かせるのだけれど、ミュウーは、わかっているのかいないのか、少し家に落ち着いていたかと思うと、又すぐに、ふらりとどこかへ行ってしまう。

「ミュウーに恋人でも出来たのかしら?」

 お母さんが笑いながらいう。

「そうだよな、ミュウーだって、年頃(としごろ)だもんな、恋人ぐらいほしいよな。その内、ヨメサンなんか、つれてきたりして・・・・・・」

 お父さんも、そんな、のんきな事をいって笑っている。

「ダメだよ、ミュウーは、僕のゆいいつの宝物なんだから、ミュウーがいなくなるのはもう、やだよ!」

 僕はムキきになってそう言った。

「テッチったら、もう、中学生だと言うのに、いつまでも赤ちゃんみたいで・・・・・・。こんなお兄ちゃんじゃ、あなたも困っちゃうわよねぇ〜」

 お母さんが、ポッコリふくらんだおなかをなでながら、おなかの赤ちゃんにそう、話しかける。

 お母さんは、もう、八ヶ月目に入っていた。

そうだ・・・・・・、二ヵ月後には、僕は、待ちに

待った、お兄さんになるんだ。

僕は、期待とうれしさで、いっぱいだった。

やっと僕に、兄弟が出来るんだ。
      
         ―次回に続く―


       




2002年06月13日(木)

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