マキュキュのからくり日記
マキュキュ


 【短編ファンタジー】ピディーがくれた夢 (最終回)


 
          『ピディーがくれた夢』 (最終回)

 
「す・・・すごい! 飛んでる・・・、飛んでるわ!」

 メグは、まだ信じられないようすです。

月や星たちが、輝(かがや)いて、二人のゆくえを照(て)らしてくれます。

「わぁ〜っ、きれい!」

メグが大きな歓声(かんせい)をあげます。 


「よーしメグよ! どこへ行きたい? メグの好きなところへ連れて行ってあげるよ」

「・・・・・・えーとねぇ、まずは、メグのお家(うち)。それから遊園地にも行ったことないしぃ・・・・・・、あっ! それからテツロウにもあいたいなぁ〜」

メグは、よくばって、たくさんおねだりをします。

「かしこまりました。ボクのかわいいお姫様(ひめさま)、すべての願いをかなえましょう!」

そう言うと、ピディーは一気にスピードをあげました。

        


 メグたちが、最初に着(つ)いたのは、1年半ぶりに見る、メグの家でした。

窓(まど)には、あたたかな灯(あか)りがともり、まどべに近づくと、病院で眠(ねむ)っているはずのお母さんが、楽しそうに、鼻歌(はなうた)を歌いながら、たくさんの料理やケーキをテーブルに運んでいます。

 テーブルには何と、メグも、お父さんも、3年前になくなったはずの、おばあちゃんもいるのです。

メグの10才の、お誕生日(たんじょうび)祝(いわ)いです。

たくさんのプレゼントをもらって、うれしそうなメグ。

お父さんも、お母さんも、おばあちゃんも、そして、メグも、みんな、みんな、幸(しあわ)せそうな笑顔です。

 次(つぎ)に、遊園地に着(つ)いたメグたちは、メリーゴーランドに乗りました。

きれいな音楽がながれ、夢(ゆめ)のような飾(かざ)り付けをした馬車に乗り、おとぎの国へと出発(しゅっぱつ)です。

「メグ! いよいよつぎは、ジェットコースターだぞ!」

 ピディーのさそいに、メグは、イヤイヤをしながら、後ずさり・・・・・・。

「だいじょうぶだよ。ホラ、勇気(ゆうき)を出して、乗ってごらん、スリルまんてんで、楽しいぞぉ〜」

 メグは、こわごわ、ジェットコースターに乗りこみました。

もちろん、初めての経験(けいけん)です。

 コースターは、ゆっくりと、無気味な音をきしませて、どんどん高く上がって行きます。

「ピディー、ど、ど、どうしよう・・・・・・私、ドキドキだわ」

メグのからだは、カチコチに、かたまっています。

さぁ、いよいよ、落下(らっか)のしゅんかんです。

ビューン!

「ギヤ〜〜〜〜〜〜ッ!」

「わおーっ!」

 メグと、ピディ―はおおはしゃぎ。

だぁれもいない遊園地に、二人のひめいだけがこだまします。

空の上では、お月様が笑っています。

ふらつく足どりで、ジェットコースターからおりたメグは、

「ぜーんぜん、こわくなんかなかったわ!」

 と、なみだをうかべて、まけおしみ。


 そして、いよいよ最後(さいご)に、メグとピディーは、テツロウの家につきました。

テツロウは、メグのおさななじみで、赤ちゃんのころから、兄弟のようにそだった、大親友(だいしんゆう)。

チョクチョク、ケンカもしたけれど、2人は大の仲良しでした。

2階の物干(ものほ)し台(だい)から、子供部屋をのぞいてみると、テツロウは、ベッドでスヤスヤねむっています。

「テツロウったら、あいかわらず、ねぞうが悪いんだから・・・・・・。ねっ? ピディー。おへそがまるだし・・・ウフフ」

 メグがピディーをふりかえって、笑います。

「ん・・・・・・?」

 ピディーが何かをみつけると、ニヤニヤしながら、そっと、メグに、魔法(まほう)の双眼鏡(そうがんきょう)をわたします。

「ホラホラ、みてごらん? メグ。机(つくえ)の上」

 メグが、双眼鏡でのぞいて見ると、机の上には、へたくそな文字で書かれた、メグにあてた手紙がおいてありました。

「ん・・・? ナニナニ・・・・・・?」

         

メグへ―

 このまえは、イジワルをしてごめんね?

 だって、メグったら、ボクがせっかく、おみまいに行ったのに、となりの病室の、フミヤくんとばっかり、話してるんだも〜ん。


メグ、はやく、かえってきてよ。 さみしいよ・・・・・・。

 ほんとうは、メグのこと、だいすきなんだ。

 だから、すぐに病気をなおせ!

そして、また、いっしょにあそぼ。


           テツロウより―



 メグとピディーは、顔を見合わせて、「クスリ」と笑ってしまいました。

(ありがとう・・・テツロウ・・・・・・)

メグはそっと、つぶやきました。



「メグ、そろそろ行くか・・・・・・」

ピディーがそういうと、メグはにっこり笑って、力強くうなずきました。

そして二人はまた、夜空に向かって飛び立ちました。

「ピディー、ステキな夢をありがとう」

 メグは、力いっぱいピディーに抱きつくと、ピディーのホッペにキスをしました。

        


 その日の夜中、ふとけはいを感じ、お母さんは、不安なきもちでめざめました。

そしてお母さんは、おもいきり、メグの手をにぎりしめました。

「メグ? メグ!」

 お母さんがいくら名前をよんでも、メグからのへんじがありません。

 メグのこきゅうはあらく、とても苦しそうです。

お母さんは、ひめいをあげながら、先生を呼(よ)びに行きました。

すぐに先生と木崎さんがとんで来て、メグに吸入器(きゅうにゅうき)を取り付けます。

病室には、あわただしい空気がかけぬけます。

「メグ! 死ぬなよ。しっかりするんだ!」

知らせを聞いて、かけつけたお父さんも、ひっしにメグの名前をよびます。



心電図(しんでんず)のモニターが、弱弱しく、メグの命の時をきざみます。

しかし、そのこどうは、だんだんと、弱くなっていき、やがて、しずかに止まってしまったのです。

みんなが、メグの名前をさけびます。

けれどももう・・・、メグからの返事は、二度と、かえってはきませんでした。

病室に、みんなの泣き声がひびきます。

お父さんも、お母さんも、木崎さんも、先生も、みんなみんな、泣いています。

「メグちゃん・・・、やっと楽になれたんだね・・・・・・?」

木崎さんのやさしい手で、メグの口元から、そっと、吸入器(きゅうにゅうき)がはずされました。

「あっ、メグちゃんが笑ってる・・・・・・」

ふと、木崎さんが、つぶやきました。

「本当だわ・・・、メグがほほ笑んでる」

お母さんもつぶやきます。

 昨夜(さくや)、メグが大好きなピディーと、あんなにも、楽しい旅をしていた事を、誰も知るはずはありません。

「雪だ・・・・・・」

お父さんが、窓の外に、目をやりました。

お父さんの声につられて、みんなも窓のほうに顔をむけました。

窓の外では、メグの死(し)をかなしむかのように、ちらほらと、雪がまいおちています。 

次のしゅんかん、そこには虹色の光がさし込み、天国へとつづく階段が現れたのです。

そしてみんなは、はっきりと、見たのです。

その階段を、幸せそうに、ほほ笑みながら、メグがゆっくりと、ゆっくりと一歩ずつ、昇って行くすがたを。

やがてメグは、あたたかな神様のりょううでに、しっかりと抱きしめられたのでした。





 まくらもとのピディーの目から、一粒の涙が落ちたのを、だれもきづきません。

 そして、ピディーの帽子には、メグが作ったブローチが、いつまでもキラキラとゆれていました。

          

             (おわり)


 如何でしたか? ピディーがくれた夢・・・・・・。
この作品は、私にとっては、最も大切な、我が子のような作品です。(*^_^*)

 何時か、もっと、もっと、この物語を膨らませて、もっと良いお話に完成したなら、どこかの応募に出して見たいのです。それが私の、『元気なうちにやり遂げたい』、一番の夢でもあるのです。
 どうか、皆様が審査員になったつもりで、是非、一言でも良いですので、ご意見、ご感想を下さい。よろしくお願いします。m(._.)m ペコッ。

 BBSコーナーも、ありますので・・・・・・。


2002年05月29日(水)

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