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風太
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2007年06月13日(水)
まいりとるらばー(10cm銀次)



朝の光に意識が覚醒すると同時に、蛮の左手が無意識にシャツの胸ポケットへと伸びた。



――何か、ある。



いや、何かいる。
というべきか。




まるでそこを巣と間違えて、小鳥の雛がこそりと忍び込んできたみたいに。
小さくて微かな重み。体温。
まだ目を閉じたまま、ポケットの中で丸まった小さな生き物に、蛮がフッ…と口の端を持ち上げた。
心中でごちる。




…このヤロウ。
いつのまに。




普段なら、隣のシートに寝そべっている筈のそいつは、身体が小さくなってからは、どうも広すぎるシートの上で一人で眠るのが不安らしく。
気がつけばこんな風に、夜中のうちに蛮の胸ポケットにこそこそと潜りこんできては、小さく丸まって眠っている。
どうやら、その体勢が一番落ちつくらしいのだが。
おかげで蛮の方は、おちおち寝返りもうてない。




やれやれ。
まったく。
甘ったれが。



まだ半分寝呆けている頭でごちりながら、両の紫紺をゆっくりと開く。
枕代わりに敷いていた右腕ごとやや頭を持ち上げて、どらと左胸の小さな布で仕切られた狭い空間を覗き込もうとする。
が、どうにか見えたのは、小ぶりのたんぽぽのような金の頭だけで。
仕方なく、丸く膨らんだポケットを大事に手の中に包み込み、震動を与えないようにと気遣いつつ、シートごと身を起こす。

見下ろせば白いシャツのポケットの中、すやすやと気持ちよさそうに眠る銀次の表情が見てとれた。
凭れていた角度が変わって、くたりとたんぽぽ頭が後方へ流れ、ポケットの端へと引っ掛かる。
まるでハンモックのようだ。
小っちゃな顎が持ち上がる。
反らされた喉も何もかも、身体のパーツすべてがミニチュアのように小さくて可愛くて、ついついさわりたい衝動にかられてしまう。
喉元を小指の先でくすぐるようにそっとふれれば、小鳥の雛のようなやわらかな手ざわりに、蛮の口元に自然と笑みが浮かんだ。
力の入れ具合に充分気遣いながら、薄くピンクに色づく頬のあたりもうりうりとやる。
銀次がくすぐったそうに、むにゃむにゃと何事が呟いて、ふふっと声をたてて笑った。


…何とも可愛らしい。


もっとも、それでもまだ眠っているふてぶてしさは、小鳥の雛というよりは、寝ボスケでやんちゃのハムスターの子という感じだ。
(口の中に食べ物をいっぱい頬ばるしぐさなど、まさしくぴったり)







体長約10cm。
超ミニミニサイズの銀次。


タレたことはまだないが、この状態でもしタレれば、体長5cmくらいになるのだろうか。








それは、2日前の朝。
起きたら、突然こんなことになっていた。



もっとも。
タレるわ、雷帝化して別人のようになるわ、時空を越えれば幼くなるわ。
大ケガしても食えば治るわ。
元々しっちゃかめっちゃか、でたらめな肉体を持つ銀次であるから。
蛮も大抵のことでは驚かなくなっていたが。



さすがに見た瞬間は、我が目を疑った。
(自分で自分に邪眼をかけたのかと、一瞬焦った)






…まぁ。
こういう事象に遭遇するには、いささか心当たりがありすぎたので。
さほど、慌てることはなかったけれども。











・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ブログで貰った「10cmバトン」の銀次。
想像したらあまりに可愛いかったので、出来心で(笑)蛮に与えたらデレデレになってしまいましたv
面白かったので、勢いでSSに(笑)

続きは……。
リクエストがあれば、気まぐれにv