|
|
2004年05月06日(木) ■ |
|
剣の輪舞(エレン・カシュナー)読了 |
|
●読了:Swordspoint(Ellen Kushner) 翻訳≫『剣の輪舞』ハヤカワ文庫FT 冒頭を読んでみる(Chapter 1) 西洋風時代劇、権力闘争が主なテーマの剣豪の話だった。和ものに例えると池波正太郎・司馬遼太郎・藤沢周平あたりのイメージが近いような。なかなか面白かったけど、私が求めていたものではなかったって感じ。「著者の覚え書き」によると、この話の舞台である架空の町は色々な場所のイメージが混ざっているそう。シェイクスピアのロンドン、ジョージェット・ヘイヤーのパリ、デイモン・ラニアンが描いたニューヨーク。そして、作者エレン・カシュナーが当時住んでいたニューヨークのコロンビア大学近くの安アパート、犯罪者と芸術家と移民者と学者がみんな隣り合わせで暮らしていた活気にあふれた、混沌とした町がモデルになっているそう。 主に描かれるのはその町の貴族たちの権力闘争。誰が市長(?)になりたがっているとか、誰が誰の味方で敵だとか、誰が誰の愛人で、昔の愛人は誰だとか、そんな話が延々と続く。その合間に、下町のスラム街に住む剣士リチャードと、その愛人アレクの生活の様子が、町の風俗と絡めてチラリチラリと描かれる。リチャードたちは徐々に貴族たちの権力闘争に巻き込まれていく。この連綿と描かれる権力闘争のあたりをどう思うかは、完全に好き嫌いの問題だろうな。
良かったのは、町の風俗がわりと詳しく描かれてリアルなところと、リチャードとアレクの生活の様子や2人のやり取り。私としてはさらにもう少しアレクとリチャードを詳しく描いて欲しかったけど(ちなみにLeonさんのレビューの"特定の方面"という言い回しに、腹がよじれるほど爆笑してしまったのは秘密です)。 それから、文章の描写が細かくて色彩豊かなところが良かった。たぶん作者の頭の中にはフルカラーの確固としたイメージがあって、それを文字にそのまま流し込んだような文章だと思った。
なお、このPBには表題作"Swordspoint"(剣の輪舞)以外に、3つの短編が収録されている。1話目の"The Swordsman Whose Name Was Not Death"はリヴァーサイドを舞台にした「小さな話その1」、リチャードが少年になりすました女性剣士と対決する話。アレクの家族の話が少し出てくる。2話目の"Red-Cloak"も、同じく「小さな話その2」。やはりリチャードが謎の男と剣で対決する話だ。3つめの話"The Death of the Duke"は、よくわからなかったんだけど、変わり者の公爵の死にまつわる話? 3つともザッと読み流しただけなので、全然間違ってるかも。 *ジョージェット・ヘイヤー : Georgette Heyer,1902?-1974 英国人、歴史小説・ロマンス小説の作家 *デイモン・ラニアン : Damon Runyon,1880-1946 米国人。新聞記者をするかたわら、ニューヨーク、マンハッタンを舞台にした小説を描いた。
●買った ダ・ヴィンチ6月号 ¥450
|
|