一度だけの人生に
ひろ



 レゾンデートル(三回目)

「お金持にはお金持の、陰惨な悩みがあるものです。
諦めなさい。という優しい慰めに接しては、
泣かじと欲すも得ざるなり。」

という言葉を太宰の小説か随筆の中で
見た記憶がある。どれかは、忘れた。
「泣かじと欲すも得ざるなり」が
太宰の本音かどうかはともかく、
しかし、この言葉は同時に僕には
酷く絶望的に感じられもする。

どんなに頑張って、どんなに良いものを手に入れても、
人は常に、身悶えするような苦悩、苦しみと
戦っていかなければならないとすれば、
本当に、生きていく張り合いがなくなるのだ。

やはり、まだ、僕は
「僕は、人は何故生きていかなければならないのか、
わかりません。」と言わざるを得ません。

人はなぜ生きていくのだろうか。

けれども、
普遍的な答えを求めていないし、
普遍的な答えがあるとも、少しも思っちゃいない。
言い直すとこうだ。
「僕はなぜ生きているのだろうか。
そして、なぜこれからも生きていくのだろうか。」

「お前、何で生きてるの?」
そう、自分に問われて、
ちっとも分からない。その事実が、
僕に酷く頼りない思いをさせる。
その思いは、けれども、
僕の重大な欠陥のような気がしてならないのだ。

「分からない。」
その一言が、僕の将来と人生を黒く染めて
しまっているような気がしてならない。

「いずれにしても僕は、いつか、自殺に終わるのだ。」
と言う漠然とした不安の根拠も
結局はその一言に尽きる。

答えがほしい

2004年05月09日(日)
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