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五十嵐 薫
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頑張ろう東北!
エンピツユニオン

2013年08月01日(木)

低い雲が、湾岸線より向こうの風景の輪郭をぼかす。
窓を開けるまでもない。除湿中の室内でも今日の湿気の高さは判る。

にも関わらず、ミンミンゼミの合唱が聞こえる。
羽化した日から僅か数日の命。
その数日が雨か、晴れか。
セミの生涯は、潔いほど、運任せだ。

だからこそ、この程度の曇天でセミの声が止むことはない。

最近はミンミンゼミの声に、クマゼミの声も混じる。
昔はこの辺りじゃ聴かなかった声だ。
クマゼミの鳴声を聴くとどうしても、京都の夏を思い出す。



テレビでは昨日録画したNHKアーカイブスが流れている。
アムール豹の生体を追ったドキュメンタリーだ。
ふと、シベリアにもセミはいるのだろうか?なんて思う。

凍てつく川や雪の森を行く、画面の中のリンクスやアムール豹。
セミの声。
そして、窓の向こうに霞む湾岸線。

旅に出たくなるのは、決まってこんな日だ。



長く付き合った男の子と酷い別れ方をした。
いや、彼は酷い別れ方とは思ってないだろう。
飲み込んだ数々の言葉を溶かすのには、まだ当分アルコールの世話が必要だろう。
二日酔いの不快で上書きした方が、今の気分のままよりまだマシだと思う。



洗顔し歯を磨き、冷たい水をコップで二杯。
二日酔いの鈍い頭痛はだいぶ治まった。

懲りない。こめかみを揉みながら一人苦笑いを浮かべる。
何度も恋をし、何度も傷つき、そしてまた恋をする。

夏ごとに求愛の大合唱を繰り返すセミみたいだと思う。



羽化した日から僅か数日の命。
その数日が雨か、晴れか。
セミの生涯は、潔いほど、運任せだ。

それはそうなんだけどさ。
その鳴声、二日酔いの頭にはちょっと響きすぎなんだよね。


エンピツ