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2021年08月13日(金) |
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tapestry |
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鵠沼は小雨混じり。 引地川を挟んでこっち側は、サーファーの姿も疎らだ。
134の電光掲示板は大雨に関する注意喚起と外出自粛の依願を交互に映しだす。 その下を走る車の流れは盆前とは思えない少なさだ。
道の反対側でゴールデンレトリバーを連れた顔見知りの女を見つける。 雨だろうが風だろうが犬の散歩は欠かせないのだろう。 見つけただけで声はかけない。 世間話をするほど親しいわけでもない。
海岸に降りる。 雨で濡れた砂浜は歩きやすい。 足元に寄せる波には細かい木屑や流木が混じる。
振り返ると江ノ島が雨にぼやける。 ターナーかクールベが描く絵のような…少なくてもブータンは海を描く時キャンバスにこんな色の絵具は乗せないだろう。
雨の日はこうしてたまに海岸を歩くんだ。 君が川に落とした赤いサンダルが流れ着いてないかって。
嘘だ。今思いついた。 あれは、もう何年も昔の話だものね。
僕はこの重たい空の色が時々どうしても見たくなるんだ。 見たくなるってのは違うか。 僕はこの色彩の中に身を置きたくなるんだよ。
重たい、温度の低い寒色のタペストリーに包まり、少しだけ、憂鬱な気分を弄びたいんだよ。
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