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五十嵐 薫
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頑張ろう東北!
エンピツユニオン

2011年09月13日(火)
9.12 2

閉じた瞼に影を感じ、目を開ける。
覗き込む女の笑顔に微笑み返し、もう一度瞼を閉じる。

「起きて。」

女の声に、もう一度目を開ける。
女の顔はなく、空と砂丘が作る青と赤のコントラストが目を射す。

首を持ち上げ、レンジローバーのダッシュボードに肘を付く。
車を降り午後の逆光の中に立つ、女の後姿を見つめる。
風に持ち上がるベールを押さえながら女が眺めるのは、砂丘だ。
斜めに射す午後の太陽にキラキラと輝く、砂漠だ。

「ね、見て。ラクダ。」

女の視線の先には砂丘の向こうに消えていく、野生化したラクダの群れだった。
水場を求めて旅しているのだろう。

「日本のアニメに出てくるシーンみたい。」
「ナウシカ、だっけ?」
「あれはまだ見てない。」

振り返った女は唇を尖らす。
「今度一緒にビデオ見ようねって、あなた言わなかった?」

青い空、白い雲、赤い砂。
遠くに揺れるのは蜃気楼なのか、陽炎なのか。
荒野に点在する岩石は、まるで古代のオブジェだ。

「砂漠っていつ来てもいいね。」
「ああ。」

内地から吹く風は穏やかだ。
きっと夜も晴れるだろう。

「きっと今夜の月もキレイだよね。」
「ああ。」

女は振り返り僕の顔を見ながら言った。

「平和でいいね。」


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