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五十嵐 薫
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頑張ろう東北!
エンピツユニオン

2011年09月12日(月)
9.12

閉じた瞼に影を感じ、目を開ける。
覗き込む女の笑顔に微笑み返し、もう一度瞼を閉じる。

「起きて。」

女の声に、もう一度目を開ける。
女の顔はなく、空と積乱雲が作る青と白のコントラストが目を射す。

首を持ち上げ、堤防のコンクリートに肘を付く。
午後の逆光の中に立つ、女の後姿を見つめる。
風に持ち上がるストローハットを押さえながら女が眺めるのは、海だ。
斜めに射す午後の太陽にキラキラと輝く、浦賀水道だ。

「ね、見て。帆船。」

女の視線の先には白い帆をはためかした、クラシカルな船があった。
大桟橋に向かっているのだろう。

「ジブリの映画に出てくる船みたい。」
「コクリコ坂、だっけ?」
「あれはまだ見てない。」

振り返った女は唇を尖らす。
「一緒に見に行くって言ったじゃん。」

青い空、白い雲、紺碧の海。
対岸に見えるのは金谷なのか、木更津なのか。
行き交う船の様々な色彩と形は、まるでレゴか積み木のようだ。

「海っていつ来てもいいね。」
「ああ。」

海から吹く風は穏やかだ。
きっと夜も晴れるだろう。

「きっと今夜の月もキレイだよね。」
「ああ。」

女は振り返り僕の顔を見ながら言った。

「平和でいいね。」


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