やさぐれ日記・跡地
アルティーナ



 悪魔的な魅力


その闇は、しんと暗くあまりに深い。
ブラックホールのように、飲み込んで、飲み込んで────それでもまだ足りない。

砂漠に水を与えるように、その飢餓状態が終わることはない。

私1人の人生を捧げても、到底埋められるモノではなく。
たとえ100人が犠牲になっても、彼1人を満たすことは決して出来ないだろう。


次女姉が、

「・・・あんたどうしたの・・・そんな顔して・・・
らしくないよ。そんな状態、見たことない。
表情が乏しくなった」

と言った。

あの日から2ヶ月。
その間、私の人生において何に集中していたかと言えば、ただ1点。

あまりに集中しすぎて、こうなってしまった。

「その人に心を明け渡しちゃったのかい。
自分をほとんど見失っちゃうまで」

「・・・それでも、一時的にしか伝わらないのがわかるの」

自覚しているのは、今ここに自分がいても、自分と言う器が何処かへ行ってしまったような感覚。
それはあの人の元にある。
取り戻せるかどうか、ギリギリの位置まで私は投げ出してしまった。


「彼と心が同化しかけてるよ、しっかりしなさい」

「・・・あの人の心を埋めることが出来るのは?」

今は主婦業に専念するも、優秀なセラピストでもある次女姉が答えを出す。

誰も居ない、と。


愛情を受け止める土台がなければ、いくら注いでも浸透せずに流れてしまう。
それでも求める。
求めて求めて、受け止めることなく流して、そして嘆くのだ。

“自分は愛されていない”と。

そして傷付けるのだ。
愛情を注いでくれる対象を。

常に激しい矛盾を抱えながら。


「自惚れちゃいけないよ。人1人を救うことの難しさを知らなくちゃいけないよ」
「・・・はい」



────ここまであんたをボロボロにして、許せない。

一言、次女姉がそう言った。


悪魔的な魅力に惹かれた人は、こうなる。
引きずり込まれて、でもあまりに甘美で、人の心を麻痺させる。

私は今、身を以て経験している。


「・・・それでも思い切れずにいる私は、病んでしまってるってことね」

「病んでる。戻っておいで。あんたはウチの親が手塩にかけてる末娘なんだから」
「・・・・・・」

破滅的で刹那的であることは、あまりに魅力的で。
果たして私は、その魅力に勝つことが出来るのだろうか。


2005年02月26日(土)
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