やさぐれ日記・跡地
アルティーナ



 抱く


時々。
ふ、と。

ぎゅ、って抱き締めて欲しいと思う瞬間がある。



ほんの、時々。






夜遅く、ぐったり疲れて自宅へ帰る途中の、暗い夜道をぶらぶら歩いてる時とか。

朝方、鳥の囀りを聞きながら、部屋の窓・・・網戸ごしに薄明るい空を眺めている時とか。

寝過ぎた夕方、ベッドの上で小さくなって、1日を無駄に過ごしてしまったような感覚に囚われながら、それでも少し満足した薄暗い空間の中で、とか。






程良く筋肉のついた、細すぎず太すぎないがっしりした腕で。
今まで何度もそうしてくれたように、強く、抱き締めて欲しい・・・・・・・なんて、思うことがある。


一言で言えば、単に、人恋しいってだけなんだろう。






────でも、皮肉で女々しいと思う。




私には元々さほど性欲はないし。

人と物理的に接触するというのは好きじゃなくて、むしろ嫌いなくらいで。
触れたいとか、触れて欲しいとか、思うこと自体が極稀で。


軽々しい男も女も、嫌い。

性欲を満たすためだけに行動を起こすのも、軽々しい。

心が伴わないなら、無意味に等しい行為みたいなもの。




今のところそういう認識だから。
少なからず嫌悪感が生まれるし、身体はきっと反応しない。



そんな私でも、人肌が恋しいって時が、ある。

もちろん誰でも良いと言うわけではなくて、抱擁1つでさえ、特定の誰かを思い浮かべてしまう。





貴方が、思い浮かんでしまう。

貴方の髪型とか輪郭とか、そう、顔かたち全部、
滑らかな曲線で描かれて具現化する、瞼を閉じれば見える光景の中で。




心地よい温もりが欲しいと、思う。


過不足のない腕の太さと胸の厚さと、力の込め方と。
高揚感と安心感が矛盾なく心を支配する、その瞬間が愛しい。

ぴったり身体をくっつけて抱き合って。
首の後ろに両手を回して、くっついていないのが可笑しいくらいに、くっついて。






そんな欲求が、沸いてしまうことがある。

それ以上は望まない。




過去の記憶の所為でリアルにシュミレーション出来てしまうのも、皮肉としか言えないけれど。








貴方に、と思うこと。
それは何を意味しているのか、と少し憂鬱になることがある。


────私の脳は繋ぎ止めるか。


新しい記憶が生まれるまで思い浮かぶのなら、ただ時を待とうと思う。

そうでないのなら、それでも、時間が必要なのだろう。





貴方が確かに、言ったように。





・・・いつまでも。
私は実像を伴わない不確かな存在、そも道理の存在しない先天性の背徳者のようで。



でも。
今までのようには、もう、戻りたいとは思ってない。




感覚神経が、そう告げる。










2004年08月09日(月)
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