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みんみん



 ここ数日のこと

テレビ東京系列の「ポチたま」(富山では別枠でやっていたのに、なぜか観られなくなってしまった模様)で、人間の手で育てられたエゾ鹿の話をやっていた。
番組がそろそろ終わるころに観たので、そのいきさつは知らないのだが、現在は森で暮らしながら、週に1度ほど「ふるさと」に帰ってくるということだった。
いまは自分の子を連れてやってくるらしい。母さん鹿と子鹿1匹。なるほど「かこじものひとり子」だ。
「かこじもの」とは「鹿子自物」(鹿の子のようなもの、の意)で、「ひとり子」にかかる枕詞(たらちねの→母、とか、ぬば玉の→黒、とか、あれです)。年に1度、1匹だけうまれる鹿の子のようにひとり、ということだ、と頭の中では知っていても、実例を見ると非常に説得力がある。おもしろい。
鹿の親子もとても愛らしかった。

BSでやっていた小津安二郎特集。>Tさん
「小早川家の秋」の回をちらりと観て、あ、これはよしておこう、と思った。
実は小津映画は1本も観たことがない。部分的に観たことはあるが、ダメかもしれないと思っていた。でも今観てみたら硬い質感を持った画面が新鮮だ。いま地元のシネコンで「小早川家の秋」を上映しているので、せっかくならスクリーンで観たいので「よそう」というわけ。
翌日も確か「秋刀魚の味」をやっていたと思うのだけれど、これは最初から観損ねたのでやめ。



ホテルの中にあるアンティークショップで、アメリカのデッドストックの布を買った。ヨーロッパ物を中心とした瀟洒な品揃えだったのだが、中にそんなものもあったのだ。綿ブロードが4種類、先月買い付けてきたばかりらしく、状態もとてもよかった。あちら(と言って男性を示す)が買い付けてきたんですよ、女の人みたいな趣味でしょ、とおそらくはオーナー夫人が言っていた。価格もリーズナブルだったので迷って1枚だけ買った。
買ったのは薄い黄色の地にファンシーな柄(ライオン・きりん・しまうま?・ワニ・ヤシの木・家)がプリントされたものだ。パッと見た時、昔、叔母が作ってくれたワンピースのことを思い出した。それで思わず買ってしまったのかも知れない。この布もワンピースにして小さい女の子が着たらかわいいだろうなあと思った。誰が着るというわけでもないのに。

既に書いたように、りー氏には、大好きなとんかつ屋のソースを買ってきてくれと頼まれていた。それで買いに行ったのだが(せっかくなので2本)、持ち帰り用の包みを作ってくれると知り、これをおみやげにしようと思った。帰宅直前にもういちど来なくてはならない。


最終日の予定が早く終わったので、お茶の水に出て、レモン画翠と丸善に寄り、自然食品店「GAIA」に行き、ルヴァンのパンを買う。カランツとくるみのクッペ、チェリーとカシューナッツ、の2種類。前者はりー氏の好きなもの。ルヴァンのパンは天然酵母パンでもちょっと特別の味だと思う。焼きたてもまたとてもおいしいけれど、時間が経ってもおいしい。
GAIAには毎日違うお店のパンが入荷しているらしい。木のひげやザクセンのパンなどは私にも懐かしい。いいなあ。
それから聖橋を渡って聖堂脇の坂を下り、外神田、というかつまりは秋葉原に出て、くだんのとんかつ屋へ。お店と人の雰囲気がまたよい。あたたかい包みを出来るだけ斜めにしないようにして持つ。
贅沢させてもらったので、まあ、おみやげもくふうしてみましたよ。

その他にはポストカードを数枚買ったくらい。あとはわりと大量の複写物。大変さより便利さに感謝することにしよう。昔の人はそんなわけにはいかなかったのだ。
4日のあいだ、何の約束も入れず、自分のためだけに時間を遣ったということが何よりの贅沢だったと言える(これが昔は辛かったのだけれど)。でも全く孤独というわけではなくて、世界は狭いので、行く先で知り合いに遭遇もしたり、思いがけない時間があったり。
地味と言えばこんなに地味なこともないのに。ああ面白かった。

そのうちにだんだんこんなことも出来なくなるのかも知れないが、出来なければ出来ないで、きっとまた違う贅沢がやってくるのだろう。

2003年10月18日(土)
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