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遺書と屍
羽月
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2008年07月08日(火)


知ってたよ、あの子が傷つくってこと。
ろくな人間じゃないって、会ったことないけど話だけでわかった。
いつもあの子は泣いてる。
でも、わたしにできることはひとつもない。

わたしはあの子の何でもないし、あの子はわたしの忠告なんて聞きやしないのはわかってた。
泥沼に突っ込んでいくのを知ってた。
でも、わたしあの子を止めなかった。
知ってたから。あの子が止まらないってこと。言っても無駄だってこと。
あたしが何を言ったってあの子の心には残らないってことも。

だから、知ってた。恋をしたこともないわたしが、このままならあの子が傷つくってほんとはずっと知ってた。
止められたのはわたしだけなんて、思い込み。
そんなはずないよ。わたしじゃ無理だった。
あの子はわたしの言葉は聞かない。ずっとそうだった。
ずっと、そうだった。
だから、わたしはあの子にかける言葉を持ってない。



2008年07月07日(月)


別にわたしは、ごめんなさいが聞きたかったわけじゃない。

*

謝る、って行為は一体、どんな意味を持つ言葉だったろう。
わたしは一応、「自らの非を認める」行為だと思ってた。ずっと。
「言い過ぎた、ごめん」っていうのは、一体どんなものに許しを求める言葉なんだろう。

*

わたしに浴びせられたのは、とりあえず今のところは言いがかりのようなものだと思っている。わたしは一応、その言葉に反する態度をいつも取っているから。あくまでも、仕事中はだけれど。
仲良くなった相手に対し言葉が崩れるのは悪いことだろうか。どうでもいいことに「どうでもいい」というのは悪いこと? もしくは、仕事に効率を求めることは、悪いことだろうか。
アルバイトというのは、機械でしょうか。言うことを聞くだけの機械なんでしょうか。都合のいいときだけ意見を求めて都合の悪い意見は抹消するの?
まあ、いいや。そんなことはもうどうでもいい。わたしたちは機械なんでしょう。都合のいいときだけ稼動する機械で、動かなければ罵倒されるだけのもの。お給料というメンテナンスをされてる身では仕方が無いね?
気になっているのは別のこと。
その人がそう思っているのなら、わたしの仕事は所詮そんなものだったということだ。わたしの気持ちは通じていなかったということ。ただそれだけ。その人に対するわたしの見方はそういうもので、それで凝り固まっているということ。もう十分だ。
ただ、謝罪された意味だけが解らない。何を謝りたいのか、彼女の何が誤っていたのかがわからなければ、わたしは彼女を許すことは出来ない。だって元々、わたしが彼女に許してもらわなければならない立場なのでしょう?
相手が泣いたからって、自分がそう思っていることを曲げてまで謝罪する必要は無いはずだ。
正直に言うなら、上辺だけの謝罪は欲しくなかった。
自分が満足するためだけの謝罪は、聞きたくなかった。
わたしが間違っているのならそういえばいい。そうして切り捨てればいい。首の皮一枚繋がったところで、わたしに何が出来るって言うんだろう?
・・・・何も出来やしない。わたしは彼女を許す理由が無い。だから、彼女を許せない。単純なことだ。

*

ごめんって、どんな言葉だったんだろう? ちょっと思い出せない。
ごめんなさい、は確か、自分が本当に悪いと思ったときに使う言葉、だったと思うのだけど。
言い過ぎた、ってどういう意味?
本当は言うつもりがなかったってことは心の中で思ってたってことだよね?
ならわたしは謝ってほしくなかった。
そう思われていることは真実なんだから、謝ってほしく、なかった。

*

うーん、何だか思い出すにつれてわたし悪くなかったような気がしてきたぞ。おかしいな。
「帰れ!」って言われたのはさすがに初めてだったなあ、「やる気が無いなら帰って!」って。仕事効率の話をしてたはずなんだけどなあ。もっと効率よく時間短縮して仕事して、ついでにお客さんも部屋が広くて満足って話だったはずなんだけどなあ。やる気ないかあ、そっか。
ならいらないんだねえ、うん。意見はいらないんだわ。
切り捨てられて、意見は考慮されることもなくて、それに対して「ああはいわかった、もういいよどうでも」って言ったのは確かに悪かったんだけどね。わたしが。はは、なんか笑えて来た。



2008年07月03日(木)


むねをかきむしるような、わたしの、衝動。
こたえがほしい、それを求めるためにいきをしているのだとしても

*

くるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしい。

*

こわれてしまえればらくなのに。なにもかんじないようになればらくなのに。できないことをしっている。知っている知っている知っている知っている。だからここにいる。狂ってしまったことよりも狂えないことのほうが辛い。狂えないからこそこんなにもくるしい。
理性があることはきっと罰なのだと思う。かみさまが一つ与えたもうた罰なのだと思う。だからくるしい。うれしいよりもくるしいが先立つ。
たすけてとはいえない。

*

いけないことばかり、を思う。こんなことを思ってはいけないことを知っている。しっている、ことばかり。わたしにあるのは知識だけ。しんぞうがうごいている。きもちわるい。

*

たすけてとはいわない。
罰だから。

*

目を潰せるならばと思うし、口を縫えたらと思う。耳を塞げたらとも思うし、両腕を削ぎ落とせたらとも思う。絞め殺せたらとも。
わたしはわたしのためだけにここに存在していて、それはきっと罪悪なのだと思う。自らの存在に違和感を覚えながら、口だけでは死んでしまいたいと嘘吹きながら、漫然とただ生きているだけなのは。
この瞳も声も耳も両腕もわたしも、わたしのためだけにここに在る。
時折世界がまるで人形劇のように感じられることがある。傲慢な話だけれど、わたしを主役とする「せかい」の話。
とどのつまり、「わたし」の見えないところの世界は「ない」ということ。
そんな空想。

*

自分のために歩いている。今までも今もこれからも、ずっと。
時折振り返る。わたしの足跡は、きちんと綺麗についているだろうか。

*

たすけてとは、いわない。
罰だから。