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りょうちんのひとりごと
りょうちん
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2012年10月31日(水)
Vol.798 奇妙な住人・前編

おはようございます。りょうちんです。

閑静な平日の午後、仕事が休みだった俺は相方を送り出したあとのひとりぼっちの部屋。ふいにインターホンが鳴った。我が家への来客はけして多くはない。お届けものなら印鑑が必要だし、新聞や宗教の勧誘なら居留守を決め込もうと外の様子をうかがった。すると、「すみませーん、105号のキムラですが…」との声。どうやら同じアパートの住人らしい。はて? 顔を合わせればあいさつ程度はするのだが、名前を名乗られても面識があったか記憶にない。
扉を開けると、見覚えがない30代くらいの女性が立っていた。どういうわけか、よく見ると彼女の口元には真っ白な歯磨き粉がべったりついたままになっている。本来この時点で、俺は警戒心をもっとマックスにしておくべきだった。彼女は電話を貸して欲しいと言ってきた。状況はよくわからないが、今時電話を貸してくれなんて、よっぽど困っているに違いない。もしかしたら彼女は、誰かに緊急に伝えなければならない用件があるのだろうか。ひどく低姿勢な態度と同じアパートの住人というよしみで、警戒心をちょっとだけ緩めた俺は持っていたケータイを彼女に差し出した。固定電話の方が通話料金は安いが、出会ったばかりの赤の他人を部屋の中に通す勇気はさすがになかった。
しかし俺のケータイを受け取った彼女は、そのまま自分の部屋へと戻ろうとした。俺はあわてて呼び止める。電話をかけるなら、ここでして欲しい。万一悪用されたら大変だ。彼女が玄関先で電話をかけ始めたのを確認すると、俺は気を遣って扉を少し閉めてやった。どうやら相手にはすぐに通じたようだ。ところが会話が始まると、それまで穏やかだった彼女の態度が激変した。大声でお金の催促をしている。「てめー、早く金送ってこいよ! いつまで待たせるつもりだよ! 早く10万出せよ!」
同じアパートに住んでいた奇妙な住人・前編はここまで。次回、後編に続く。