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遠子(桜井都)

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 相似形のものは引き合う性質があるという。








 今日も空は青い。
 東京の秋空は毎年同じだ。青より淡く、水色より濃い。深さを感じさせるというのに暗さがない。何色なのかと問われれば、やはり空色としか言いようがないというのに英語のスカイブルーとはどこか違う気がする。
 そんなことをつらつら思った挙げ句、三上亮はどちらでもいいかと最終的にそう結論づけた。
 ともかく今日はよく晴れ、青色が天一面に広がっている。それだけで充分だと、入学以来すっかり馴染みになった屋上の給水搭の上で、頭の後ろに回した腕を枕に空を仰ぐ。
 秋らしい空気の冷たさが長袖のシャツ越しに伝わって来た。
 九月も終盤となり、衣替えとなる十月一日前後一週間は制服を自分の都合で夏冬どちらでも好きに着用出来る。中間期としてブレザーの着脱が自由になるのもこの時期のみだ。十月八日を過ぎれば学内は完全に冬服着用が義務となる。


「三上」


 不意に凛とした声が彼を呼んだ。
 三上が顔を持ち上げると、給水搭に昇るための梯子のほうから隣のクラスの委員長が顔を出した。

「ここにいたのね」
「…なんだよ」
「五時間目始まってるわよ」
「…………」

 違うクラスのくせにわざわざ呼びに来たのかと、三上は相手の親切というよりお節介にわざと顔をしかめた。
 梯子の途中で脚を止めていた彼女は、三上のその様子に黙ってさらに昇り、三上の近くに膝を崩して座った。
 彼女はどちらかというと規則を遵守するタイプだと思っていた三上は、教師に見つかれば叱責確実のこの場所に彼女が自分から昇ったことに驚いたが、本人はすました顔で上からの景色を眺めている。

「初めて昇ったけど、ここって思ったより高い位置なのね」
「……おい」
「なに?」
「…何してんだよ。授業行けよ」
「あなたに言われる筋合いないでしょう?」

 もっともな言葉に、三上は再度腕の上に頭を落とす。
 わずかな風に彼と彼女の髪が揺れる。沈黙は少しの間続いたが、気まずさはなかった。

「…今日はイライラしてねーじゃん」
「おかげさまでね。でも人をいつも苛ついてるみたいに言わないで」
「してんじゃねーか」
「してません」

 言ってろ、と三上は呟き鼻で笑った。
 彼女はそれ以上そのことには触れず、ゆっくりと話題を変えた。

「…さっき、職員室にいたのね」
「いた、じゃなくて、行かされた、だろ。わかってて言うんじゃねぇよ。見てりゃわかるだろ、あんなの」
「…今日、ネクタイは?」
「寮に忘れた。朝時間なくてガッコ来てからしようと思ってたんだよ。くっそ、抜き打ちで服装検査なんてしやがって」

 苦々しい思いを空へ向かって吐いた三上の近くで、彼女が若干痛ましそうな目を向けた。
 私立である以上、風紀問題として服装頭髪あるいは所持品検査は時折実施される。そこで過剰に校則違反をしている者には本人に注意し保護者に通達する。
 何かと派手な印象を持たれがちのサッカー部だが、運動部らしくそのあたりは徹底しているので部長を筆頭として服装検査で注意を受ける者はほとんどいない。
 今回の三上は運が悪いだけだ。彼の涼しい襟元を見ながら、彼女はそう思っていた。

「…やってらんねーよ」

 昼休み丸々を職員室で過ごす羽目になった三上は腹が立ちすぎてもう諦め気味だ。

「たかがネクタイ一つで、なんで日頃の態度まで言われなきゃなんねーんだよ。ふざけんな」
「…そうね」

 別の用事で職員室を訪れていたせいで、計らずも三上のあの場面を見ることになった彼女が静かな声で同意した。
 三上はとても教諭陣の受けが良いとは言えない。学業面や部活動の功績よりも、とかく人格面での扱い辛さが大人には不評なのだろう。決して万人に好かれる性格でないことを本人も自覚しているだろうが、不利な立場でそれを思い知るのは酷というものだった。

「挙げ句に渋沢を見習えとか言ってきやがって。出来るかクソ」
「三上には難しいでしょうね」
「………」
「先生方がわかってないだけよ。三上は三上なんだから、渋沢にはなれない。そんなの当たり前でしょう?」

 慰められているのだろうかと、三上は視線を青い空に向けたまま思った。
 彼女の声はあまりに落ち着き過ぎていると、何を考えているのかわからない。相手の気持ちを読み取るのが億劫で、三上は軽く息を吐いた。

「お前みたいな優等生にはわかんねーよ。わかったようなこと言ってんじゃねえ」

 成績優秀で教師の覚えも良く、真面目で大人びた物腰の優等生。
 まるで誰かのようだと三上は心で失笑する。
 そんな人間に慰められるのは、まるで見下されている気がした。卑屈だとわかっていたが、自分が貶められるのは我慢出来ない。

「…気に障ったなら、ごめんなさい」

 ややあってひかえめな声が三上の耳に届いた。
 いつも丁寧な言葉遣いをする彼女は、自分とはまさに正反対だと三上は下唇を噛む。

「でも、三上に馬鹿にされたくもない」

 一転して強い口調が攻めて来た。思わず三上は身を起こしながら相手を見る。

「私だって人間だから、自分のこと否定されたら腹も立つわよ。三上のことわかったつもりであんなこと言ったわけでもない。私は、私の思ったことを言ったの。勘違いしないで」

 挑むように苛烈なまなざしが三上を見据えていた。
 言われた内容によって三上の胸に羞恥の思いがよぎり、彼はごまかすように口端を吊り上げた。

「…ハ、逆切れかよ」
「そうやって逃げる人に非難される謂れなんてない。見くびらないで」

 逃げ道を断とうとする彼女から視線を逸らすのも口惜しく、三上はどうにかこの拮抗を保とうと苦し紛れに口を開いた。

「可愛くねぇ女」
「ほかに言うことないの?」
「…ムカつく」
「奇遇ね、私も三上のことそう思ってるわよ」

 さらりとそう言われ、三上はとうとう疲れたようにためいきを洩らした。

「…何なんだよ、お前」
「…………」
「すげ…、俺バカみてぇじゃねえか」

 段々わけがわからなくなってきた。顔を半分隠すように三上は額に手を当てる。
 彼女はもうあの苛烈さを双眸から消していた。

「…三上は、悪ぶるのが好きよね」
「………」
「同じよ。私は、優等生ぶるのが好きなの」

 嗜好の違いね、と彼女は食べ物の好き嫌いを言うような何気なさでそう付け加えた。

「ときどき嫌になることもあるし、いい評価を貰えないこともあるけど仕方ないでしょう? そういう風にしてきたのは私なんだもの」
「………」
「先生方に不真面目でいい加減な生徒って思われたくないなら、悪ぶるのやめればいいじゃない。出来ないなら受け入れるしかない。私はそう思う。…三上がどう考えてるかは知らないけど」

 澄んだ秋空の下、三上とは同じ歳であるはずの少女の声が空気に染み入る。
 その誠実な声はなぜか信じられる気がした。同時に彼女のその考え方が大人のそれのように思え、八つ当たりをした自分の幼さを思い知る。
 強い奴だと、あらゆる角度から言われ続けて来た。三上自身、そう言われ否定したことはない。
 けれど本当はわかっている。自分を強いと思ったことは一度もない。ただ強がるのが好きなだけだ。
 それだけにとどまらず、いつも周囲に本質とは違った姿を見せ、錯覚させてきた。そのくせそれを逆手に取られると、本当のことは誰もわかってくれないと勝手に傷つく。何度繰り返しても懲りない自分が、きっと世界で一番愚かだ。
 それでも三上は、そんな自分をどうしても捨てられない。

「選んだ自分でいたいなら、多少のことは我慢するしかないじゃない」

 彼女の声が、自分だけに向けられていないことに三上も気付いた。
 仕方ないのだと言う彼女も、三上と同じような葛藤を持っているのかもしれない。系統こそ違うが内包するジレンマは似ている気がした。
 逸らさずに見つめてくる瞳は、三上の持て余しがちな気持ちを理解してくれるものだった。

「…かもな」

 うつむきそうになりながら言う。それでも必死で出来るだけ強い声を装った。
 納得したようで、寂しい気持ちになるのはどうしてか。
 結局自分はわがままで勝手なのだと三上は思うが、心の在り方は簡単に変えられない。

「…それにしてもいい天気ね」

 ややあて彼女はそっと三上から目を離し、周囲を見渡しながら、最初と同じように穏やかな口調で話題を変えた。

「いつもここで昼寝してるの?」
「…まあな」
「三上の秘密基地ね」

 自分の言ったことに小さく笑っている彼女は、先ほど三上の言い様に怒った素振りをまるで見せない。余裕を見せつけられているようで面白くなかったが、激しく不快にもならなかった。
 緊迫した空気はもうこりごりだと三上はまた腕を後頭部に回すと寝転がる。

「…っつーかお前、授業いいのかよ」
「保健室で寝てることになってるの。保健室行って在室証明書さえ貰えば、この時間いつ行っても同じでしょう? こういうときのために日頃の行いがあるのよ」
「…お前、最強」
「ありがとう」
「褒めてねっつーの」

 そう言いつつも吹き出しては、厭味の意味はないと三上本人ですら思う。
 そうして、気まずさを引きずらない関係になれたことを改めて感じた。いつからか少しづつ縮まっていった彼女との距離は、気付けば居心地の良さを適正に保てるところまで近くなっている。
 ありがとうなどと面と向かって言うのは絶対に嫌だったが、心がささくれたっていたこの時間そばにいてくれたことはただ嬉しかった。

 空が青く、空気は適温で、隣に彼女がいる。
 何気ない心地よさを感じ、彼は快晴の空を仰いだ。

2005年01月18日(火)



 もしも三上。

 もしも君と僕が電車通学の見知らぬ他人だったなら。










 ガタン、とレールの上を激しく電車が揺れ、三上は目を覚ました。
 車内アナウンスが耳の中を通過していくが、車掌の発声法が良くないためと揺れによる音が激しく聞こえない。三上は半分うとうとしていた目を軽く指先で押さえ、外の風景から目的地を乗り過ごしていないことを悟って安堵した。
 午後二時半の車内は曖昧な時間に相応しく、妙にぼんやりとした空気だ。車両内に人気がほとんどないこともそれを増長する。長いベンチシートに座っているのは三上と数人の中年女性のグループ、そしてあと斜め向かいの一人だ。
 彼女は今日も同じ制服で静かに文庫本を読んでいた。
 高校に入ってからの電車通学も最初の半年で慣れた。そのうちにごく当たり前の習慣の一部となり、今では少しでも移動距離を短くするため最寄り駅のホームの階段に一番近い車両に乗ることにしていた。
 そうしているうちに、自分と同じことをしている人間がいることにも気付く。
 少しだけ、三上は視線を斜め前で背筋を伸ばして座っている女子高生に向ける。
 最初に記憶に残ったきっかけは、姉と同じ高校の制服だったからだ。私立校だが華美な印象が一切ないシンプルな黒のブレザー。同色の膝丈スカートに、校章の入った靴下。淡い水色の指定シャツに濃いグレーのネクタイ。
 彼女はこの近郊では有名な私立の女子高の制服を正しく着こなしている。それを見て、三上は最初姉が高校生だった時分を思い出していた。けれど今では、この曜日この時間では必ず彼女と同じ電車、同じ車両のこの場所に座を占める。
 何がしたいわけでもない。ただ一週間のうち少しだけ、斜めからの視線であの姿を見るのが癖のようなものになった。そうなってからもう一年近い。
 会話を交わしたことは一度もなく、目が合ったことすらない。降りる駅も知らない。けれどうつむく双眸と、凛とした横顔、髪を掻き上げる仕草、そんなものを意味もわからず気にする自分を三上は知っていた。
 声だけは、一度聞いたことがあった。

『あの…!』

 たまたま乗り合わせた親子連れが、席に小さな買い物袋を置いたまま駅のホームへ降りてしまったときだった。
 それに気付いた彼女は忘れ物を手にして閉まり掛けていたドアをすり抜けた。まとめられていない髪が動きになびき、軽い足音が三上の前を通りすぎた。
 三上がそちらを見たときにはドアがもう閉まり、ガラス越しにお礼を言う母親と安堵したように笑う彼女の姿だけが見えた。その、自分が乗り過ごしたことは全く気にしていないように笑う顔が印象的だった。
 そのときはまだ夏だった。
 そして一度だけ、彼女が本を読んでいない日もあった。
 軽く唇を噛み、膝の上で手を握っていた。その手を時折ほどき、また組み直す。ためいきのような吐息を落としながら、何度も目を閉じては開き、何かを堪えている顔をしていた。
 辛いこと、あるいは悲しいことがあったのだと、斜め前の三上からもよくわかった。
 電車の中という公衆の場でも動揺を隠し切れないほどの何か。訪れたそれに、綺麗な横顔を歪ませた一瞬の切なさがこちらにも伝わってくる気がして、三上はそのときわざと彼女から目を逸らした。
 泣けばいいのに、と逸らした視線で流れ行く私鉄の車窓の風景を見ながら思った。
 繰り返される瞬きの多さ。目が潤むたび、瞼を閉じてそれを消す。場所など考えず泣いてくれればいいと思った。そうしてくれたなら、きっとあのとき自分は話しかけるために立ち上がっていた自信が三上にはあった。
 けれど彼女は一粒たりとも涙を見せなかったがため、今の三上がある。
 それが秋の話だ。今では季節はまもなく春を迎える。

(…そろそろいいよなぁ)

 友人たちにすら電車で一方的に会っている彼女の話をしたことはない。
 話せば笑われるだけという憶測もあるせいだが、なぜか彼女のことを気軽に言うのは憚られた。自分だけが知っていればいい秘密のように、この時間いつも見られればそれでよかった。
 それでもタイムリミットというものはある。高校卒業まであと三ヶ月を切った。高校時代が終われば、この電車に乗ることもなくなる。
 会えるのはあと少し。

(最後の足掻きってヤツだろうけど)

 自宅最寄駅に近づいていることを告げるアナウンスを聞きながら、三上は鞄の中から携帯電話を出した。
 適当にいじる素振りをしたあと、電車の速度がかなり落ち始めたタイミングを見計らって座席のシートの上に置き、空いた手で定期入れをポケットから取り出す。そしてその中に入っていた時刻表を見ながら席を立った。
 電車が止まり、ドアが開く。
 携帯電話はそのままだ。

(…アホな賭けだぜマジで)

 それでも彼女が渡しに来てくるのを待つ。
 内心で自分に呆れ、それでも何食わぬ顔で三上はホームに降りた。振り返らない。ただ二番煎じの賭けの結果を期待して待った。

『ドアが閉まります。ご注意下さい』

(……負けかよ)

 個性のない録音声に、残念半分でためいきをつきそうになった。
 仕方なく置き去りにした携帯を見届けようと振り返る。

「あの…っ」

 閉まり掛けたドアの隙間から、あの声が三上に届いた。
 ドアが閉まる。ガラス越しの双眸。髪が揺れていた。白い右手に持っているのは三上の携帯だ。初めて視線を合わせた彼女は、三上だけを見ている。
 焦った表情がいっそ奇妙なほど綺麗だと思った。

(勝った…!)

 拳を握る前に、三上は動く寸前の嵌めガラスに手をついた。
 動悸を抑え、嬉しさに顔が笑わないよう注意する。次に繋げるために。

「次の駅で待っててくんない?」

 電車のドア一枚隔てた向こうに届くよう、声を張り上げた。
 彼女は一瞬戸惑い、しかしすぐに生真面目な表情でうなずいた。

 …はい。

 小さな声は三上に届かなかった。けれど唇の動きで三上は了承されたことを知る。
 三上がガラスから手を離したと同時に、電車が動き出す。少しずつ速度を上げて去り行く電車の中で彼女は三上を、三上は彼女を見ていた。
 涼しげな瞳、やや大人びた顔つき、三上の携帯を胸の前で握っている。
 彼女は三上を見つけた。三上が、一年彼女を見ていたように。
 やがて電車は見えないところまで行ってしまう。
 そこで初めて、三上は心底からの息を吐いた。

「…よっしゃ」

 持ったままだった時刻表で次の電車を確認する。八分後だ。
 初戦は辛くも勝てた。次がどうなるかわからないが、勝ちは勝ちだ。

「…思ったよか美人じゃん」

 万歳俺の見る目、とにやけた口許を手で隠しながら、それでも笑いは込み上げる。
 どうなるかわからない八分後に期待して、彼は白線の内側で電車を待ち始めた。







***************************
 三上亮と電車通学と片思い。
 パラレルです。三上が寮生ではない、というところが。
 ヒロインイメージはいつものヒロインと同じです。電車で見かけた他校生。ずっと前から知ってるんだけど隙がないから声掛けられないで、恋だとも自覚しないで結構長い間うだうだやってる三上ってどうよー! と、随分前どっかの飲み屋で喋ってるときに出たネタです。
 一歩間違えたらストーカーですけど(いきなり冷静)。

2005年01月17日(月)



 PHASE-14

★前回の色々なおさらいをしてからOP。
★今回から新OPですが、今週は双子だけで一杯一杯なのでこっちの感想はまだ今度

★壊れたマルキオ邸で色々話し合うマリューさんや虎やキラやラクス。
★そこにたまたま来てしまった姫様のところのマーナさん。
 カガリの手紙をキラに届けに来たそうです。
 どうやら婚礼を控えた姫様は、セイラン家行っているそうなので出歩けないから、ということらしいですが云々。
 「ええっ!?」と驚く一同から、この人たちの中でも当然アスカガは認知されていたという感じなのでしょうか。まあいいや(今回の感想メイン=双子)。

★ユウナ・ロマとの結婚は幼少の頃から決まっていたとのこと。…へー。
★でもマーナさん自身は相手がどうあれ、姫様が納得出来ない結婚はあんまりだと思っている模様。…彼女がアスランをどう思っていたのか、どことなく気になります。
★その頃のカガリさん、セイロン家でユウナの母(?)とおぼしき女性から礼儀作法だ何だとまあ花嫁修業まがいのことをやっている感じです。
 個人的にはカガリの嫁修行はキラのお母さんがやってくれればいいと思う(そのうち青髪と結婚するのならね!)

前回の碑文に続いてカガリの手紙までも日本語。
 オーブの公用語って日本語ですか? じゃあプラントは何語ですか? 英語?
 対象年齢が一応小学生程度だから、に合わせてあるのかもしれませんが、こんな半端なところで対象年齢に合わせるならもっと普通の描写に気を遣おうよ! 種割れシンとか、ある意味あれお子様のトラウマになるよ!
★手紙の内容のカガリさんの、国を思うところとか、そのゆえに自分を抑えようというある種の必死さが垣間見え、何やらせつない。
「同封した指輪は(中略)もう持っていることは出来ないし、取り上げられるのも嫌だ。
 でも、私にはいまちょっと捨てることも出来そうになくて」
 このへんにある乙女心の複雑っぷりを読み取れキラ!!(拳振り上げて)
★指輪をアスランが帰ってきたら、返して欲しいと手紙で頼んでみるカガリさん。
「頼む。ごめん」
 イヤです諦めないで下さい。
 でもたぶん、カガリにとってはこんなの頼めるのキラだけなんだろうなー…と。きょうだいだし、アスランの親友だし。でも切ない。
★「皆が平和に、幸福に暮らせるような国にするために、私も頑張るから」
 …わかってる、わかってますとも。これまで散々カガリに政治家としての自覚やら判断やらをしようよと言ってきた私に、こんなことを言う権利はおそらくないってことは。
 でも実際公人として生きるだけのカガリにものすごく不満を覚える。
 公人と私人、両方充実させる人なんて滅多にいるわけがない。
 でも、カガリという個性に自己犠牲を背負わせるなんてやるせないわけで。
 彼女は彼女らしく生きられる場所で幸せになって欲しいのです。
 答えは簡単に出ます。
 行くがいいキラ!!
★アスランを思い出しながら決然とした面持ちで顔を上げたキラ様、さあ行ってこい。

★婚礼当日、準備を終えたカガリさんの回想。
 名づけてアスカガメモリー総集編その1。
 伝説の24話の出会い編から、二人して泣いて嘆く31話から。
 …ああそうだよねぇ、このぐらいの姫様は、泣いたり大変だったりしたけど、笑うときはすっごい自然で心から笑っていたように思えます。事態は複雑だったけど、彼女自身はすごく自由に生きていたと思います。
 だってこの頃のカガリさん可愛いし(それ理由なの)。
 笑った顔が一番可愛いタイプのカガリさんだと信じています。

★その頃街中で再会する、マードックさんとアーノルド・英士・ノイマン。
 スーツでした。
 このシーンのノイマンを神咲さんに伝えるべく、懸命に携帯カメラに収めようとしていたのは私です。仕事明けの神咲さんに見てもらうのはスーツ姿のノイマンです。

★ドレス姿お披露目のカガリさん。
 ユウナ以下略の人は『髪が長いほうが好き』(公式プロフィール)という果たしてそれは公式サイトに載せるほどの重要情報なのか、ということを示すがように「でも髪がちょっと残念だな。今度は伸ばすといい」とかいつも通りに言っちゃって、思いっきり頭逸らしてみる花嫁さんがいました。
★本性見せてきたユウナ以下略。
 祭壇までの車中で、酒かっくらってみる花婿。花嫁さんの言葉遣いにまたしてもイチャモンつけてきた花婿。色々もうダメダメです。
 演技派がどこまでも崩れてきました。
 ええわたくしふと思ったんですの。やっばーコイツ正直三上亮と同じカテゴリに入りそー。
 なので最後には言って! 「傷ついてるのは僕のほうさ!!」(遊んでる人)
★「マスコミも山ほどいるのに、もっとにこやかな顔して」
 酒(らしきもの)思いっきり飲んでるアンタに言われたくない。

★またよくわからない場所の地下にもぐっているキラとマリューさん。
 本当にそれでいいのか、とキラの何の判断についてかを明確にせずに確認するマリューさん。
 …ネタバレ知ってる派としては、これがこの先の展開についてを言っているのだとわかりますが、知らない人にはどうなんだろう。意味不明すぎるんじゃないでしょうか。
 彼らたち、なんて変な日本語を違和感なく使ったりする脚本家と見過す監督の下では、こんな下手な会話劇も可になっちゃうんですね!(こだわるね)
 もともと種っておかしい日本語をポロっと出してきますけどネ! 接続詞変だぞ! とか。
★よくないとわかっているのに、何もせず諦めたらまた同じことの繰り返しだと言ってみるキラ様。
 ごめん、私には君がこれまでどんな風にしてその答えを出したのかがさっぱりわからない。
 前作の前半で散々わんわんと悩んで葛藤し続けた割には、プラントでラクスと過ごした途端突然悟っちゃったよりも、今回のこの悟りっぷりが全然わかりません!
 何もせずぼやーっと考え込み続けて、襲撃を受けてやっと目が覚めた? そんなキラが起つ意味と目的は、同じことをしちゃダメだから? 何が正しいのかまだわからないけど、とか言ってるのに?
 …この先もまだ「ごめんやってることの意味がわかんないよキラ」という点があるのですが、それは進んだ先のところで。

★CM開けて、姫様とユウナ略が車で祭壇までのパレード中。
 ユウナの手の振り方が、いわゆる皇族のお手振り(手首はさして動かさず手だけ振るアレ)。
 姫様が無反応なのに不満げなユウナ略。
「ほら、カガリ」(で、肘で小突く)
 何このいきなり亭主関白。
 わかっていたことですが、顕著に結婚さえ決まってしまえばお前なんてどうでもいい路線がくっきりと浮き彫りに。わかりやすい。ユウナ本来の女性の好みって、髪が長くて女らしくておしとやか、とか大和撫子幻想抱いてそうです。
★自分の義務を思い出したのか、微笑んで手を振ってみるカガリさん。
 …そんなかたちで、大人になって欲しいわけじゃなかったんだけど、な。
★ウズミ様のこととか、シンのこととか思い出してみるカガリさん。
 あのウズミ様の「そなたの父で、幸せであったよ」を思い出してみる姫様。
 アスランの「君は、俺が守る」シーンも思い出してみるカガリさん。
 隣の人ぶっちゃけ無視して泣いてみる姫様。声を出さずに女優泣き。
 …ハイハイハイ、実にこの彼女らしくない泣き方させたアホ、どこのだれ?(制作スタッフです)
★「うれし泣きだろうね、当然。その涙は」
 わーその勝ち誇ったようなユウナ略の顔ったら! 数分後を楽しみにしておれ。

★やっぱりどこだかわかんない場所で出航準備をしている虎とかマリューさんとか。
 全員オーブ軍の制服ですが、ピンク様だけあのようわからん陣羽織をさらによくわからんデザインにしたお召し物になっております。
 トノムラがいません。
★ヤマト母子の別れ。
 えーキラの髪が伸びたなあ、とか地球連邦のよりもオーブのこっちのほうが似合うなあ、とか。この二人って実際は甥と叔母の関係だったっけ、とか。
 それにしても、ガンダムの世界=男の浪漫、であり父系社会を中心にするのが当たり前の世界観である、ということが根本にあるんだかないんだかですが、この世界に出てくる母親像っていうのはどうも理想の母像っていうのが多いですね。そもそも母親の影がさっぱり見えない少年少女ばっかりですね。父親像のバリエーション豊かさに比べて、何とまあ無視されっぱなしのお母様方だと思います。
 だからってキラのお母様が嫌いなわけではありません。綺麗なひとだなあ、とただ思うぐらいで。

★その頃始まったカガリさんの婚礼。
★ノイマン操縦席に座って、アークエンジェルいざ出陣。
 音楽が前作のものとちょっと似ている気がしました。えーとアイキャッチのストライクのアレとかに。

★新しいパイロットスーツで、フリーダムを起動させるキラ。
 CICにラクスがいるのは単純に人手不足だからのようですが、まあ言っちゃうわけです、ピンクが。
「フリーダム発進、よろしいですわ」
 緊張感ナッシン……ッ!!(だってピンクの物言いだから)
「キラ・ヤマト、フリーダム、行きます!!」
 行ってらっしゃい、キラ…!!(心から)
 まあ何だ、デス種でキラがきちんと「行きます!」と言ったのは、妹とはいえ余所の花嫁さんを強奪しに行きます!! と言ったわけですね!
 別名「ウチの妹返してもらいますから!!」とも言う。

★アンノウン接近中、ということで揺れてみるオーブ防衛軍。
 前作では肩を並べて戦った仲間、ということでオーブ軍の中には「アンノウンって…これ、アークエンジェルとフリーダムだよな?」などと顔を見合わせて不思議そうな顔をする軍人さんたちもいます。

★祭壇でハウメアへの誓いを司る司祭(?)らしき人の前にいる姫様とユウナ略。
司祭「互いに誓いし心に、偽りはないか?」
 私としては、ここでキラに「その結婚、ちょっと待って下さい」と空から敬語で、でも怒気を孕んだ声で言うようなシーンがあってくれたら、たぶん嬉しかった(楽しかったの間違いだろう)。
 当然「はい」と即答するユウナ略に、黙るカガリさん。

そこに降臨するキラ様。
 慌てふためく護衛モビルスーツやらの攻撃能力を奪って、祭壇の前に降りるフリーダム。
 カガリ「キラ…!?」
 さすがに双子というか、一瞬だってフリーダム=キラ、を見誤いません。
 そしてその場で花嫁の背後に隠れる花婿。
 ごめんなさい、私が間違ってました。三上と一緒にしたら三上に失礼だ。あのプライドの塊なら、絶対女の影に隠れるような真似するぐらいなら死んだほうがマシっぽい(…願望じゃないの、それ)。
★逃げる列席者と軍人ですが、…あのさ、誰か一人ぐらい「お下がりください、姫様!!」とか言って駆け寄ってくる人、いないの?

★フリーダム、手でカガリ掴んでみる。
 おいおいおいおいキラ!! むき出しで掴むのかよ! …と思った。そりゃ降りてる暇ないでしょうけど、そのまま…。
飛んだー!!
★ちなみにその掴む→飛び立つまでの間に。
 カガリ「何をする! キラ!!」
 キラ「…………」(優しげに笑う
 キ、キラキラキラキラキラーーーッ!!!!(笑うか、そこで)

★花嫁奪われて怒らない花婿は大抵いません。
 ってワケで、ものすごい形相で「撃て! 早く!!」とか言ってみるユウナ略。あっはっは、先に逃げ出しといてこの有様。残念、三流!(前回まで二流でした)
 永遠の悪役、ムスカには遠いね! ユウナ以下略のひと!
★カガリ様にまで当たることを考えたら、攻撃なんて出来ませんと言う軍人さんたち。
 ん、至極真っ当。そしてこれはつまり、セイロン家だけがオーブの指導者ではない状態がまだ軍には残っている様子です。
★残された花婿、「う、うぅぅぅ〜〜っ」としか表現しようのない音を漏らしてみたり。幼児返りかァッ!(どうしようもない)

★式典用の白ハトさんたちとお空の散歩状態のフリーダムと双子。
 カガリ「降ろせ馬鹿! こら! キラ!」
 あ、うん、すごいカガリっぽくてうっとりです(え?)
★そこに現れたオーブ防衛軍(空軍?)のモビルアーマー。
 危険だと判断したキラ、カガリを中に。
 キラ「カガリ、ちょっとごめん」
 で、コックピットを一時的に持ち上げてカガリを両腕で引き寄せてみるキラ様。まあ当然、膝の上にお姉ちゃんを乗っける弟ですよ!
 キラ「うわ…すごいね、このドレス」

 キラだよ。

 政略結婚するところだった双子の片割れを、本人の意思無視して強奪してみて、まず言うことが、服!! 
 カガリ「お前…」
 キラ「ちょっと黙ってて。掴まっててよ…!」 そして加速。
 おにいちゃんは頑張ります。
★フリーダムの加速に、掴まってても掴まえるといえば片割れに抱きつくしかない姫様。
 アスランといい、キラといい、あの中でどこに掴まれっていうんですか。
★再三着陸を促す防衛軍に、「…ごめんね」と呟いて攻撃をしてみるキラ。
 キラは慣れもあるしコーディネイターだし、ということですが一緒にいるカガリさんは大変そうです。緊急事態でも女の子は大事に扱おうね、キラ!

それでも相当久しぶりの双子エピソードに幸せを感じました。

 ああもう可愛いですね! っとにね! きゃー!!(ばんばん) …みたいな。
 えへ、ここだけの話アスカガ指輪エピソードよりも悶えた。

★フリーダムにカガリが拉致されたということで動揺が走るオーブ軍。
★カガリを伴ったフリーダム、キラの帰艦に動き出すアークエンジェル。
★オーブ護衛艦の司令官、いつぞや「知るか、俺は政治家じゃないんでね」と言ったあの男前の司令官、またも皮肉げな様子で「対応は慎重を要するんだろ」と撃たずにエークエンジェルを見逃す方向に。
 男前司令官の胸中の独白。
「頼むぞアークエンジェル。カガリ様とこの世界の末を…」
 でもって、司令官含む、一定以上の階級と年齢の人たちは一斉にアークエンジェルに向けて敬礼。
★…もしかして、この司令官、ウズミ様時代に彼に世話になったり近しいところにいたけど、世代交代や何やらでこっちに異動になったとか、そういう人なんでしょうか。
★とりあえずオーブも、政府と軍部全部が開戦に賛成しているわけではなく、そこはかとなく分裂部分が見えるような気がしないでもない。

★キラ、カガリ、フリーダムに戻ってみる。
 事態をよくわかっていないカガリと、穏やかに微笑んでみるキラの姿でEDに。

★極端に言うと。
 萌要素以外何もない回でした。
 すでに制作側がそういうスタンスで続編を描くんだと、言ったも同然ですね。ああそうですか、そういうことですか。質より萌えね、ハイハイ、みたいな。
 こりゃ生粋のガンダムファンは怒るわ、と思わずにはいられません。
 双子好き派としてはお祭り騒ぎになりますが、良質の作品を求める人にはものすっごく不向きです。回想以外で主人公喋ってないし。
そもそもキラがカガリ強奪を企てる理由が明確にされてない。
 意に沿わぬ結婚じゃないって、カガリが手紙で書いているにも関わらず、そんな彼女の意思を無視することに何も疑問を抱いていなさげなキラ様。
 多少でも彼女の国を思う気持ちをわかってはいるけど、それでも承服しかねる部分もあるのだ、というような彼の気持ちとか葛藤とかが、全然見えません。何考えてあんなことしたんですか君は。
 むしろあれだとカガリのためとかじゃなくて、アスランが悲しむから、という路線にも見ます。どっちだ、何だ、何のためによキラ!
 こんなの何か違うよ! という思いだけで「もう攫うしか方法がない!」とまた出た種のお家芸、短絡的で力技、でも見栄えがするエピソードに成り代わったとしか思えません。
 きちんと理由と根拠のあるエピソード作りを提言したい(たぶん今更)。
 設定は面白い要素と可能性を秘めているのにも関わらず、表現方法で実にダメ方向を突っ走ると思う、ガンダムシード。
 今回に限っては、どこかしらでキラがあの国家元首拉致の暴挙に出る前に、そうする理由をわかりやすい表現で一言加えるだけでも、随分印象は違うんじゃないかと思うんですけど。
 抽象的な言葉を繰り返すだけじゃ、伝えたいことは見えないよ!
 誰か一人ぐらい脚本側に優れたストーリーテラーの才能を持つ人いないんでしょうか。

★双子好きとしては諸手挙げて大喜びですが、優れた作品になって欲しいという願いはいつだって砕かれっぱなしです。
 自分が好きだと思うものなのに、キャラ萌えアニメです、と人に言わねばならずなおかつ「あんまりオススメしません」と言うよりほかないこの切なさ。
★腹を括って萌えアニメだと思って観るには、私の覚悟はまだ決まっていません。
 たぶん私の中で、自分の萌え要素を満たしてくれる心と、良質なアニメを見たいと思う心が、微妙な具合で折り重なっているんだと思います…。
 ほんっとに、戦争の発端が環境破壊によるエネルギー不足であるところとか、旧人類と新人類というったようなカテゴリ分けと、一般少年少女だけど政治にも関わる立場の子たちとか、立場が違う生き別れの双子とか、設定に関してはすごく面白い要素が揃っていると思います。
 続編になるなら、いっそ前作キャラはただの脇役だと割り切って、近作のキャラたちを主軸にした世界の移り変わりを描いていって欲しかった…と思います。何度引っ込めアスランと思ったことか。
 前作は戦争を引き起こす側に近い生まれの子たちばっかりだったから、近作はもっと一般の視点で戦争に巻き込まれた子たちが、どう協力しあってそれらの根底を終わらせるか、と追い求めていくものだと当初の設定を読んだときは思ったんですけど。
 ごめん、私には未だこのアニメが一体何を描きたいのかさっぱりわからないよ…。

でも今回は双子エピソードに喜びをかみしめたいと思います。
 こういうのがこのアニメの正しい楽しみ方なんだよね!(キャラ萌え、エピソード萌え)(せつない…)

2005年01月15日(土)



 

 あけましておめでとうございます。







『竹巳、おめでとう!!』

 遅れた年賀状より早い挨拶がやって来た。
 年明け早々の元気溌剌とした声に、笠井竹巳は受話器を持ったまま苦笑に近い笑いを漏らした。全くこの親友らしいと言わんばかりの笑みだった。

「おめでとう。今年もよろしく」

 言いながら笠井はちらりとカレンダーを横目で見る。
 1月1日。元日。
 松葉寮で制作した日めくりカレンダーは今日が最終日だった。

『おう。今年もよろしくなー。ところで今日って何の日だ?』

 子供のような問い掛けをしてきた藤代誠二に、笠井はさらに笑った。
 わかりやすい。どうしてこいつはわかりやすいのだ。

「天皇杯決勝当日。見た?」
『見た見た! でもさ、ああいうの見ると行きたくなるよな、国立!』

 藤代の「行きたい」は観客として、見物として国立競技場に行きたいわけではないことを笠井はよく知っている。藤代は選手として、ピッチに立つ者として行きたいのだ。
 電話のそばのメモ帳に、手持ち無沙汰の落書きをしながら笠井は思った。

「なるね。再来年ぐらいが勝負かな」
『俺は絶対行くもんね!』
「それ今年の抱負?」
『今年の抱負はとりあえず受験パスかなー』

 武蔵野森学園は中高一貫教育の私立校だ。エスカレーター式で高等部に上がれるとはいっても、筆記試験は必ずついて回る。

『でさでさ、今日って誰の誕生日だ?』
「え? 堂本光一?」
『…………………………』

 あ、黙った。
 知らんぷりもいい加減にしてやろうかと、笠井は電話の向こうに声を掛ける。

「ごめん、冗談。誕生日おめでとう」
『竹巳、新年早々ひどくね? ってか堂本光一って、光一って』

 俺よりキンキのほうが好きなのかよ…と、小さく呟く声に笠井は忍び笑いを押し隠した。

「うちの姉さんが好きなんだ。でもさ、男の嫉妬は汗くさいから俺いらないよ」
『わはは新年からドライだよなー、竹巳。俺そういうとこ好きだけどさ』
「さらっと男相手に好きだとか言わない」

 ともかく、と笠井はふと電話の向こうに声を改めた。
 新しい年の始まり、藤代にとっては別の意味でも新たな節目の日だ。

「新年と、誕生日おめでとう」
『どうもー。今年もよろしくな』

 明るい藤代の声は、本当にめでたい日に相応しいと笠井は思った。

 あけましておめでとうございます。
 昨年はいろいろお世話になりました。
 今年も仲良くしていきましょう、親友。

2005年01月01日(土)

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