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■ ふたり(オリジナル)
喧嘩して、眼鏡を壊した。
「…どぉしよ…」 「なに情けない声出してんのよ。自分が悪いんじゃない」
ばっかねえ。 ふんと鼻息で笑った幼馴染みに、一弥は実はひそかに痛む頬骨のあたりを右手で押さえ、涙目になって同じ歳の彼女を見上げる。
「なー侑ー」 「裏口なんか合わせないからね。自分で何とかすれば? ま、出来なくていつも通りおばさんにバレでおじさんに叱られて来月の小遣いパーって感じ? ほんっとあんたってバカ」 「…だって、あいつらムカつかねえ!?」 「ムカつくわよ当たり前でしょ。でもね、あんたクソどもに挑発されてそれに乗って、それでも怪我させないよう注意して殴る蹴るして、結局自分は顔に傷作ってるあんたは、やっぱりバカなのよ」
早口で言ってのけ、彼の幼馴染みはばさりと質量のある長い髪を背中に跳ね上げた。 昂然ときらめく双眸。引き結ばれた桜色の唇。同じ歳だというのに、彼女はいつも彼の姉役だ。 わかっていて、一弥はもうすっかり誰もいなくなって教室の床の上ではあと息を吐いた。掃除のし忘れか、綿埃がころころと転がった。
「…ったく、ほんとに馬鹿のまねごとやめなさいよ」 「まねごとじゃない」 「あんたにはそのつもりでも、あたしにはそう見えるのよ。喧嘩するなら完璧に勝つか完璧に負けるかどっちかにしたら?」 「…………………」 「ま、明日からしばらくコンタクトで我慢しなさい」 「…ん」
うなずいた一弥が、立っている侑に手を伸ばす。 ぴくりと侑の整えられた細い眉が動いた。
「なんのつもり?」 「や、立ち上がらせてくれねえの?」 「甘ったれんじゃない」
このバカ、と侑がやってられなさそうに顔をしかめた。 くるりと身を翻すと短いスカートの端が揺れる。
「ほら、帰るわよ」
一弥、と呼ぶ声はまるでためいきのようだ。 バカだバカだと連呼しながら、それでもいつも一弥を見捨てることをしない彼女。 よいしょと立ち上がり、一弥はその背を追う。自分より背の低い彼女にはすぐに追いつける。
「…なー、侑ー」 「なによ」 「腹減らねえ?」 「減らない。寄り道せずに帰るんだからさっさと歩けバカ」
お前のほうが歩くの遅いじゃん。 そう言ったら間髪入れずに平手で殴られた。
*************************** 何の考えもなくオリジナル。 カップルというよりも姉さんと弟テイストの組み合わせが書きたかったのです。 これからも気が向いたら書くか…も?(アテにならないことこの上ない)
2003年05月17日(土)
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