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■ クリスマス・ホリディ
週末と23日の休日が近いせいか、街は幸福そうな人々であふれかえって いた。クリスマス直前のショッピングをする人たち、イルミネーション 楽しむ人たち、一様に幸福そうなのは、見ていてそう悪くない。
とはいえ、私は人ごみが苦手だ。おそらく、極端なまでに苦手。 だから、用がない限りこの時期は外を出歩かないようにしているのだが、 午後「ほんの一時間だけ」と吉祥寺の街に出て、たちまち人の多さに おじけづいてしまった。それに、人々から発散される、眼に見えない 幸福パワーが、余計に圧迫感を与える。いえ、ひがみとかでなく。
でも、ちょっとおもしろい光景に遭遇した。
ある通りを曲がると、店の前には子どもたちとその父親が何組か、所在 なさげに立っている。ふと見ると、店内には買い物に熱中する母君たち。 ああ、若いパパたちは、子どもたちのお守りなのね、と、少し気の毒に思う。
「ねぇ、君たち。そんなところに座っていて、つめたくないのかな?」
店の前の縁石にぺたりと座る、小さな兄妹を見下ろして、若いパパが云った。 叱るでもなく、諭すでもなく、まるで大人に話しかけるみたいに、ただそう訊いた。 通り過ぎる瞬間、それまで一文字に結ばれていた私の口許は、きっと微笑んで いたと思う。その言葉の素直さとやわらかさに、私の心までがほどけてしまった。
週末だけ、にわかパパを演ずる彼らに、若かりし頃の父を重ねる。 子どもに不慣れで、幼い自分の娘にも敬語で話した父は、とても不器用な ひとだった。それでも、父が話す言葉は、丁寧で子供心にも美しく感じた。
すこし懐かしい気持ちにさせられた、週末のひとこまでした。
2003年12月21日(日)
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