月のシズク
mamico



 ゆず湯

(柚子湯。平仮名で書くと、ゆずゆ。回文ぽくて、ちょっとおもしろい)

「うちの庭にたくさんなったので、使ってください」
後輩の女の子が手渡してくれたのは、葉っぱの付いた大ぶりな柚子だった。
もうすぐ冬至だから、と、風情ある表情を作ってみせてくれる。
ごつごつした果実を手に取ると、ふっとよい香りが鼻腔をかすめた。

気の早い私は、湯船にそれを入れ、ちゃぽんと一緒に入った。
湯でふやけた厚い皮を指で押して、匂いの果汁をしみ出させる。
柑橘系の強い匂いは、湯にとけ、まろやかな香りとなり浴室を満たした。

以前住んでいたところの近くに、銭湯があった。
端午の節句の頃は「菖蒲湯」、冬至には「柚子湯」、それとは別に、月に
一度ほど「アロエ湯」や「みかん湯」、「りんご湯」など特別日が設けられて
いた。残念ながら、私はそのどの日にも行ったことはないが、大きなお風呂
の中に、みかんやりんごが浮いていたら、心愉しいだろうなと思った。

湯船に浮く柚子をつかまえて、ごしごしと肌にこすり付けてみる。
ビタミンCを直接投入、なんてことはムリですが、湯上りの体から
柚子のよい香りが立ち上り、贅沢でくつろいだ気分になりました。

冬至は22日。
カボチャを食べて、ゆず湯に入って、寒い冬を健康にすごしましょうね。

2003年12月19日(金)
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