月のシズク
mamico



 

もうすぐ午前三時になる。

煌々と蛍光灯がついた台所で、繋ぎっぱなしにしていたパソコンを前に、
赤く丸っこいマウスでブラウザの上を何度も何度もクリックする。
リンクからリンクへ、そして、そのリンクからまた次のリンクへと。

どこにもたどり着けないと知っているのに、あてどもなく彷徨ってしまう。
いっそのこと、パチンと、電源を落としてしまえばいい、と分かっているのに。

電源を落としたら、と、パソコンの前の私は想像する。
きっと換気扇の下で、立ったまま、煙草を一本すうだろう。
(今夜はやたらと冷え込んでいるので、ベランダに出る勇気はない)
それから、洗面所で手を洗って、いつものようにきっちり歯を磨こう。
寝室へ移動して、ベットの上で、ちぢこまった腕の筋肉のストレッチ
(今日教えてもらったばかりだ)を、時間をかけてゆっくり行うだろう。

寝室に闇を作ったら、ささやかな祈りをささげよう。
あたたかな布団にくるまって、美しいもの、楽しいことを想像しよう。
今夜こそ、やさしい夢が私の中におりてくるように。

ちょっと未来を想像し、その行為者になるべく、キーボードから指を離す。
この時間の先にいるわたしに、先に「おやすみなさい」を云ってしまおうか。


2003年09月22日(月)
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