月のシズク
mamico



 稲妻の下を歩く

昨日の夕方、関東地方に属している人はご存知だと思われるが、帯状の雷雲が
わたしたちの頭上を通過していった。そして、そのひとつが、偶然にも、私の
真上(視覚的には真横)で炸裂したのだ。まったく、爆弾が落ちたのかと思った。

「雲行きがあやしい」という言葉には、全面的に信頼できる何かがある。
低くたれ込めた分厚い灰色の乱雲には、不吉なものの予兆が存分に含まれている。
その先に待ちかまえている、不穏なサムシング。怖れおののくものではなく、
ちょっとした非現実世界を体験させてくれる、束の間の何か、というところか。

何はともあれ、昨日のその頃、私は駅から家路を急いでいた。
空はもう充分すぎるほど、不穏な雲に覆われていたし、遠くの空に稲妻が反射する
姿が確認できた。雷鳴はどんどん近づいてくるし、身体にまとわりつく風には、
明らかに過分な湿気が含まれていた。

ピカッと光る稲妻とゴロゴロうなる雷鳴の時差が、みるみる狭まってゆく。
雷雲が接近してくる現実に肌をふるわせた(私は雷があまり得意ではない)。
ピカッ・・・ゴロゴロゴロ、ピカリ・・ゴトゴトゴト、シャッ・ダダダダッ。
角を曲がり、マンションが見えてきて「ああ、もう少しだ」と、ほっとした瞬間
「バチッ、ダダダダダンンンン」、光と音が同時に炸裂した。

恐怖する、というより、あまりに驚愕し、思わず首をすくめた。
おそらく頭上の電線にでも落ちたのだろう。視界に赤い火の玉が浮かんだ。
ひょえ〜、と声に出し、五体満足に動いていることに、ひとまず安心する。
青いイナズマ(by Smap)は知っているけど、稲妻って赤いのか、などとバカな
ことを考えながら部屋に駆け込む。後は高みの見物とばかりに、ベランダから
東に流れてゆく乱雲と、新宿方面で暴れている雷さまの派手な稲妻を眺めていた。

いよいよ夏が終わるのですね。

2003年09月04日(木)
前説 NEW! INDEX MAIL HOME


My追加