月のシズク
mamico



 Encounter

日頃、仕事場と自宅を往復するくらいの、とてもとても地味な生活を営んで
いるので、この数週間はまさしく、めまぐるしい日々だった。おそらく。
という言い訳をしていると、ほら、7月(ナナガツ)です。

煙草が値上げされて、弱々しくも、昨夜、近くのたばこ屋で2カートン購入。
たかだか20円といえども、スモーカーの私にとっては小さくも切実な問題で。
「節煙しようかな」と思いつつ、ストックがある安心感が拍車をかける。
これでも日本はまだ安い方だからいいけれど、外国で煙草を買うと、
重宝したくなりますよね。去年N.Yでは、一箱5ドル(700円)でした。

午前中、市ヶ谷へお使い(小間使い)に出て、帰りに吉祥寺でお昼ごはんを
食べてきた。伊万里を扱うお店のカフェ、というか、カフェで伊万里屋?
ランチタイムを過ぎていたので、客はまばらながらも、スノッブなおじさまや
奥さま方が食後の珈琲をいただいている、小さなお店。カウンターで(食器に
似合わず)ホットなカレーをいただき、水をごくごく飲む。雨の気配がぐっしょり
染みついているような壁に、煙草の白いけむりがきれいに渦巻いていた。

雨の日にはジャズが似合う。
ごくごくヴォリュームを絞ったジャズ・ピアノが、疲れた耳に心地よい。
紺の絵付けをされた伊万里の珈琲茶碗で、酸味が利きすぎたそれをいただく。

不思議な遭遇だった、と、先週末の渋谷駅を思い出す。
乗り換えのため、急ぎ足で階段をのぼっていると、後ろから呼び止められた。
振り返ると、かつての恋人くんがチェロを抱えて立っていた。そのたたずまいは、
かつての姿と(笑ってしまうほど)ぜんぜん変わってなくて、私たちは、階段の
隅に寄って言葉を交わす。「どこ行くの?」とか、「元気だった?」とか。

「じゃね」と手を振り、何ごともなかったように、それぞれの時間に戻ってゆく。
時は確実に流れ、私はその流れに逆らって拮抗する理由など、もはやない。

2003年07月01日(火)
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