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■ 兄妹という関係性
兄が帰ってきた(From JAMICA) ただ単純に、その事実を嬉しくおもう。 彼のジャマイカ行きが決まったときと同じくらい、その事実を嬉しく思った。
私は妹なので、生まれたときから兄がいた。 彼がいたことを恨めしく思ったり、疎ましく感じたことは、ただの一度もない。 長男体質の責任感を持ち、少々要領が悪く、でも女にはとことん優しい兄。 あの両親から生まれてきたのが、私ひとりじゃないことを、いつも心強く思っている。
「ちょっと早いけれど、誕生日プレゼント」 バックパックの中をがさごそとまさぐり、オレンジ色の小箱を渡された。 茶色のリボンをほどくと、レンガ色に白のステッチが入った腕輪が出てきた。 私は、妹らしく、小さな嬌声をあげる(少し前にお気に入りの腕輪を失った ばかりだった。しかし、兄はもちろん、そんな私の過去を知らない)
寝室も台所もひっちゃかめっちゃかにして荷物を広げ、一通り片付けが済むと もう深夜一時近かった。「ビールのみたいな」と、バスタオルで濡れた髪を拭き ながら云う兄に、「コンビニは、出て、左」と答える妹。「やっぱりね」と目尻に やわらかな皺を刻んで、彼は濡れ髪のままサンダルをつっかけて外にでた。
ふたり並んでベランダで立ったまま、ぐいと、缶ビールをのむ。 外は細かい雨が降っていて、彼は「東京は寒いな」とひとりごちる。 (そりゃジャマイカと比べたら、ねぇ/苦笑) ビールが空になるまで、私たちはベランダで梅雨の夜空を見ながらひっきりなしに 喋る(兄の日本語はスロウになっていた)。10年前にふたりで住んだいた頃も、 私が帰省してみんなが寝静まった静かな夜も、去年ふたりでN.Yを旅したときも、 いつもこうやって並んでビールをのんでいたような気がする。
【きょうだい】というものは、底抜けの信頼によって成り立っているのかもしれない。 許す/許さない、だとか、疑う/信じる、とか、そういう観念を必要としない関係。 どちらかが行為したり、言葉にしたりした時点で、互いにオーケーを出し合う 関係。最強にして、最適な味方。もはや、何かを隠すなんてバカげている。
つまり、だ。私は、兄がいて、本当によかったとおもっている。 (兄は、妹の存在を喜んでいるかは疑問。そんなこと、恐ろしくて訊けやしないよ)
2003年06月23日(月)
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