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HELEN&HEAVEN
Helen
MAIL

2004年02月12日(木)
冬の夜

目覚めはいつも意識が先に覚醒し、
肉体が…「なんか用ですか?朝みたいですが…。」ずり落ちた眼鏡を直し〃、半歩遅れでついてくる。

のんびりマイペースに律動していた心臓ポンプが、はっと正気を取り戻し、にわかに血を押し出し引き戻すから息苦しい。
足下から急ピッチで、ぞわぞわ血液が首筋をかけあがる。

今朝は胃の腑に赤ランプ。
ねじったスポンジにナマリの弾を埋め込んだようなけだるさ。
 
夕べの酒のせいかな。
缶酎ハイ1缶とビール1缶。

暖かく喉が渇いていたので、帰宅するなり缶酎ハイのプルタブを起こしたんだった。
飲みつつ、洗濯物を持って階段を上下数回。

昔、何かの貧乏自慢で読んだことがあったが、「屋台でコップ酒をあおってから、100メートル全力疾走したら、酒の酔いがまわって身体が温まった。」のと同じ状態になったのだろうか、必要以上に浸透したみたいだ。

私の産まれる遙か前、祖父はメチルアルコールと引き替えに命を落とした。
戦中・戦後の混乱の中、メチルでは、失明した話しも有名。

胃がよたよた地団駄を踏んでいるというのに、空っぽなせいか何も出ない。
緑の胃薬を飲んだら、胃の野郎がねじれたままよがって緑色の蛙を吐きだした。

ぁあ、これは仕事の出来る状態じゃない。
休もうか。
頭の中で有給の残数をはじくまでもなく休めるんだけど、しばらく思案の後に出勤することにした。

通勤電車のなかで倒れる程度のひどさでもないから会社に行ってから様子をみて決めよう。
どうしてもだめなら社長に事情を話して早退させてもらってもいい。

朝一番、社長に、ある部署の納入数の統計を取ることを頼まれた。

意識が頭頂に集中したせいか…、
必要以上にかばったり・甘やかしたりしなかったせいか…胃は時間が経つにつれ普段の顔を取り戻し、いつものように意地汚くガソリンを要求している。
早引けすることなく定時に仕事を終えることができた。

晩ご飯は五穀米でかゆをたく。

終えてつれづれにネットや読書を楽しむ。

わたしの一番好きな時間。

時おり遠くでカタンコトン響く線路の音…
冬の唄を鳴らしながら巡回する灯油売りの車…
どこかで散歩に出たネコが家に入れてくれろと甘え声…

部屋の中ではストーブのしゅうしゅういう規則正しい息づかいが響くだけ…。
無口な愛猫は、たまに薄目を開けて、こっそり様子をうかがう。
媚びない粘着しない適度なスタンス。

ああ、なんという贅沢な時間だろう。
思考の波に身をゆだねる心地よさ。

批判はいらない。
批評もいらない。
引き合いも。

有名作家ではない。
三文文学士でもない。
無類の民でいい。

自分だけの自分なりの思考を、掘り起こす・揺さぶる・ふるいにかける。
また、こねる。

真似ない。
媚びない。
へつらわない。

うんせうんせと考える。

静かに穏やかに思考だけが殻を脱ぐ。