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2012年12月07日(金)
Amazonの新しい特許「おばさんからの贈り物はすべて交換する」

『ワンクリック』(リチャード・ブラント著/井口耕二訳/日経BP社)より。

(Amazonの創業者であるジェフ・ベゾスの半生記の一部です)

【アマゾンがイノベーションや特許申請をやめる日はこないだろう。2010年12月には、また新しい特許のうわさが流れた。アマゾン経由で贈り物をもらった人が、商品が配送される前に返品できるようにできるシステムだ。特許申請書によると、おばさんがいつもいらないものを贈ってくるといった場合に便利なように、「おばさんからの贈り物はすべて交換する」というオプションを用意するというのだ(特許申請書には、架空であるはずの親戚の名前が書かれている)。このシステムが実装されれば、親切な親戚がギフトを買ってくれたとき、ギフトが発送される前に受け手が把握し、自分が欲しいものに交換できるというわけだ。このほかにも、「ウールの洋服はいらない」「あるおばさんからの贈り物は、確認後、すべてギフト券に交換する」などさまざまなルールを「ギフト交換ルールウィザード」から適用できる。この特許も、ベゾスのみが発明家となっている。
 もちろん、エチケットにうるさい人から見れば、これはぞっとするほど醜悪なシステムだ。「贈り物の精神を踏みにじるアイデアです」と、エチケットの権威、エミリー・ポストの玄孫でエミリー・ポスト協会のスポークスマンでもあるアンナ・ポストは指摘している。これに対してベゾスは、送り手が気分を害するかどうかは別として、こうしたほうが贈り物の世界がよくなると考え、「受け取り手に気に入られないかもしれないと心配し、送り手がギフトの鑑定に慎重になることも考えられる」と従来の方法にも問題があることを特許申請書で指摘している。
 いずれにせよこれは、こうるさい受け取り手を喜ばせるだけでない。アマゾンにとっては何百万ドルものコスト削減になるアイデアだ。ギフトが返品されると、倉庫で作業員が開梱して返品されたギフトを棚に戻し、新しいギフトを包んで梱包し、発送しなければならない。また、他人が驚くようなイノベーションで一歩先をゆくというベゾスの姿勢にも合致している。この姿勢は、いままで、アマゾンにとってプラスに働くことが多かった。】

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 僕はこれを読みながら、スタジオジブリの『魔女の宅急便』の、ある場面を思い出していました。
 おばあちゃんが孫のためにつくった「ニシンのパイ」を、魔女のキキが一生懸命届けるのですが、孫娘は「このパイ、嫌いなのよね」と、ありがた迷惑な様子で受け取る場面。

 僕は『魔女の宅急便』を見るたびに、おばあちゃんの気持ちが届かないことが悲しくなるのですが、現実的に考えると、ああいうことは、少なからず起きているはずです。
 おじいちゃん、おばあちゃんから、あるいは、親からの「心のこもったプレゼント」というのは、若い世代からすれば、「なんかズレている」「時代おくれ」「どうせだったら、現金のほうがよかったのに」というケースは、少なくないんですよね。
 とはいえ、プレゼントというのは、「こんなものをあげたい」という贈る側の気持ちやセンスが問われるものではありますし、「現金では、なんだか殺伐としている」と考える人も少なくないはずです。
 「お金であげると、あんまり役に立つことに使われないんじゃないか」と危惧する場合もあるでしょうし。

 それにしても、このジェフ・ベゾスの「新しい贈り物のシステム」の、よく言えば「合理性」、悪く言えば「身も蓋もなさ」には、驚かされるばかりです。
 こういうことを考えつくというのも、これまでの常識やマナーに縛られない人だから、なのでしょう。
 受け取って気に入らなかったから、というのならともかく、「受け取る前に、リセットできるシステム」っていうのは、贈る側からすれば、けっこう傷つくのではないかなあ。
 それとも、「相手が喜んでくれるのが一番だから、イヤイヤながら受け取られるよりは、他の品物やギフト券に換えてもらったほうがいい」と考える人のほうが多いのでしょうか。

 このシステム、少なくとも日本ではまだ実装されていないようです。
 この本に書かれているように、Amazonにとってはコストが省け、梱包材などの資源の節約にもなるので、「気持ち」の問題さえなければ、素晴らしいアイデア、とも言えるのですが……