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2012年11月13日(火)
世界でいちばん幸福な「ガラス張りの国」

『こんなにちがう ヨーロッパ各国気質 32か国・国民性診断』(片野優・須貝典子共著/草思社)より。


【原油のおかげで、ヨーロッパで最も堅実で豊かな福祉国家となったノルウェーは、世界最高の人権国家である。国連開発計画(UNDP)では、毎年人間開発報告書を発表し、世界各国の生活の豊かさを示す「人間開発指数(HDI)を公表している。
 HDIとは、出生時平均余命、成人識字率、初等・中等・高等教育の総就学率、一人当たりのGDPなどから、人間開発の達成度を数値で表したものだ。つまり、それだけ人間らしい生活を送り、人生に幸福を感じているかということで、幸福の中身には、心身の健康、やりがいのある仕事、円滑な人間関係、快適な住環境、十分な教育といった要素が考慮される。
 毎年、ノルウェーはHDIが世界第1位で、引き続き2011年も、最高に豊かな国であることが証明された。ちなみに日本は第12位だった。
 加えて、ノルウェーは最も男女平等の国で、兵役以外は社会において男女の差別がない。このため、男女が社会的利益を平等に享受しているかどうかを数値で表す「ジェンダー開発指数(GDI)」も、男女間の機会均等や女性の社会進出の度合いを示す「ジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)も、ともに世界第1位である。
 一方、ノルウェーは税金が高いことでも知られる。かつでギネスブックで、世界一税金が高い国として紹介されたことがあった。この国の消費税は24パーセントで、所得税は36〜54パーセント。もっとも、所得税は年滅調整で戻りがあるので、実質的には28〜48パーセントになる。
 税金は毎年1月に申告する必要があるが、税金の算出方法がわかりやすいうえ、個人が携帯電話でも簡単に申告できるようなシステムになっている。
 それと面白いことに、年収の14パーセントが翌年に休暇手当として国から交付される制度がある。やはり幸福な人生には、バケーションは必要不可欠なのだ。
 さらにノルウェーには、度肝を抜かれるようなガラス張りの税システムがある。なんとこの国では、誰もがインターネットで簡単にすべての国民の個人資産、年収、納税額、住所、電話番号を閲覧できるようになっているのだ。
 昨今、日本やアメリカなどでは、個人情報の流出が大きな問題になっているが、そもそもノルウェーではこんな問題は起こりえない。ましてや巧妙に嘘をついてまで金を騙し取るオレオレ詐欺の犯人の心境など、到底近いできるものではない。】

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 北欧の国、ノルウェーは、「日本の全国土面積に熊本県を足したほどの広さ」で、人口は約490万人。
 北欧の国々には「高負担、高福祉」というイメージがあるのですが、産油国であることも豊かな国である理由のひとつなので、日本にはなかなか真似できないところはありそうです。
 それにしても、「消費税は24パーセントで、所得税は36〜54パーセント」というのは、幾分かの還付があるとしても、日本よりもはるかに重税です。
 日本の消費税も、この数字に比べると、予定されている増税があったしたとしても、まだまだ税率は低いですよね。
 
 こんなに税金が高いのに、ノルウェーが「幸福な国」であるのは、「税金が高くても、教育がしっかりしていて、将来への不安が少なく、安心して年を取れる」ということの重要性を考えさせられます。
「増税したら、不景気になる」というけれど、税金が本当に将来のために使われるのであれば、「ノルウェー方式」を望む人は、日本にも少なくないはずです。

 それにしても、この「ガラス張りの税システム」には驚かされますね。
 いまの日本であれば、「個人情報保護が……」という話になることは間違いないはずですが、ここまで「すべての人の情報が公開されている」と、かえって、いろんな犯罪はやりにくくなるのかもしれません。
 こういうのは、人口500万人弱の「小さな国」だからできる、という面はあるのでしょうが、ひたすら「個人情報保護」の方向に突き進んでいる日本に住んでいる僕からすると、この「逆転の発想」は、すごく新鮮に思われます。
 大部分の人は、「公開されていても、困らない」し、「公開されている一般人の個人情報を知ったところで、とくにできることもない」。
 僕自身の感覚では、やっぱり「ここまで自分の情報が公開されているのは怖い」と感じるのですけどね。
 ただ、もしかしたら、その「怖さ」は、長年周りから植え付けられてきた「思い込み」なのかもしれません。
 フェイスブックの「実名主義」は、こういう「ガラス張りにしておけば、お互いに悪いことはやりにくいはず」という発想なのでしょう。

 もちろん、いますぐノルウェーの真似をするのは困難です。
 でも、いまのネット社会であれば、日本くらいの国でも、同じことをやるのは、不可能ではないはずです。
 それが、本当に望ましいことかどうかは意見が分かれると思いますが、選択肢としては「ありうる」のではないかな、と。
 
 ただし、「世界一幸せ」で、移民に寛容であったこの国でも、2011年の7月に32歳の移民排斥を訴える男性による銃乱射事件で、69人が亡くなるという衝撃的な事件が起こっています。
 「国際化」のおかげで、この国の幸福が揺らいでいると感じている人もいる。
 世界でいちばん幸福な国でも、けっして、みんなが幸せなわけじゃないのです。