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2012年08月07日(火)
NHK_PR 1号さんの「もっとも印象に残っている失敗」

『中の人〜ネット界のトップスター26人の素顔』(古田雄介著・アスキー)より。

(「ネット界のトップスター」たちへのインタビューをまとめた書籍から。NHK広報局の「中の人」NHK_PR 1号さんの回の一部です。企業アカウントでありながら、「ツイッターでは、あえて尖ったトーンを落とさないように意識している」という話に続いて。インタビュアーは古田雄介さん)

【――波風を抑えるのと逆向きの対策ですね。その部分をNHK公式アカウントで通すには、ご自身の覚悟や対応力もさることながら、局内の理解が必要ではないですか?


NHK_PR 1号(以下「1号」):そこは問題ないですね。職業柄、みんな賛否の意見が出ることに慣れていると言いますか、職場では「誰もが『いい』という番組を作っちゃいかん」と教えられていますから。
 NHKでは多様な放送を出すのが使命だと考えていて、実際『おかあさんといっしょ』も『NHKスペシャル』も作っていると。それだけ幅広いものを出せば色んなニーズを持ってご覧になる方が出てくるので、たとえば、子供番組でぬいぐるみが会話しているのを流すと、「なんで動物が日本語をしゃべっているんだ?」というお叱りの電話をいただくこともあるんです。そういうご意見も含めて、幅広いものを出せば何かしらの反応はあるんだと、皆知っているんですよ。それが健全だし、それが当たり前だと。


――ああ、なるほど。第一線の報道機関で培ってきた土壌ですね。賛否の否にいちいちアレルギーを起こさず、理にかなった空気が流れているという。

1号:全員が絶賛するものを目指すと、偏りが生まれてきますからね。偏らずに中立を目指すと、「手ぬるい」、「やりすぎ」と、両方の側から同じ量のご批判がきます。それがちょうどよいわけで、賛否両論はあって当然と思っています。
 感覚的にはやっぱりラジオに近くて、パーソナリティとして番組を1本担当している感じなんですよね。リスナーがいなくなるようなつまらない方向にいきたくないから、それなりのエッジは効かせるし、番組は長く続けたいから、ヘンにリスキーな無茶はしないようにするという。

(中略)

――印象に残っている失敗を教えてください。

1号:はやぶさの件やさかなクンさんの件など、色々ありましたが、一番心に残っているのは、番組案内をした際の一件です。NHK総合とEテレで時間が被っている番組があって、フォロワーさんから「両方見たいんですけど」というツイートをもらって、「じゃあひとつは録画で見てください」と返したら、「録画機器を持っていないんです」と。生活保護を受給されている方で、子供に両方見せたかったということだったんです。】

〜〜〜〜〜〜〜

 ちなみに、NHK内でも、「1号」さんの正体はほとんどの人が知らないそうです。
 本人に「あれって誰がやっているか知ってる?」なんて聞かれることもあるのだとか。
 このインタビューを読んでいると、「マスゴミ」なんて嘲られることが多い日本のメディアも、かなり懐が広いのだな、という感じがします。
 NHKって、公共放送として、「なるべく批判が出ないように、無難に」やっているのかと思いきや、ここまでの覚悟をして番組をつくっているんですね。
 それにしても、子供番組に「なんで動物が日本語をしゃべっているんだ?」なんてクレームを付けてくる人が本当にいるというのには驚きました。
 そりゃあ、ある程度は「いろんな批判が来るのはしょうがない」と思っていないと、やってられないですよね。
 
 その一方で、twitterはラジオ番組みたいなものだということで、「長く続けられるように、リスクは避けていく」という、かなり微妙なバランス調整を行っているのです。

 この「もっとも印象に残っている失敗」の話を読んで、僕は正直「この相手の人、本当に生活保護をもらっている人だったのだろうか?」などと考えてしまいました。
 NHK_PR 1号さんを困らせるための「なりすまし」だったのではないか、とも思うんですよ。
 少なくとも、twitterに書き込める、なんらかのツールは所有しているということだし。
 そこで「自分の想像力の欠如」を反省したNHK_PR 1号さんはすごいなあ、と僕は感じました。
 反応せずに、スルーすればいいだけの話でもありますしね。

 これを読むと、twitterというのは、多くの人と繋がれる一方で、ついつい、「自分を基準に考えてしまいがちなツール」なのだなあ、と考えずにはいられません。
 言葉だけだと「冗談でした」と言ったり、後で謝っても通用しない場合が多いですし。

 「自分の色」を出さないと、見向きもしてもらえない。
 でも、調子に乗ると、すぐに叩き落とされる、そんな危険もあるのです。