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2011年01月20日(木)
「相手に鋭く斬り込んで本音を聞き出すコツとか、なかなか心を開いてくれない人の心を開くコツって何かありませんか?」

『バカの正体』(テリー伊藤著・角川oneテーマ21)より。

【「テリーさんは、いろんな有名人にインタビューしたり対談したりしてますよね。相手に鋭く斬り込んで本音を聞き出すコツとか、なかなか心を開いてくれない人の心を開くコツって何かありませんか?」
 よくそう質問されることがある。私の答えは簡単だ。
「相手が話したいことしか聞かないこと」
 すると、たいてい質問した人は意外そうな顔をしている。テリー伊藤といえば「ズバリ斬り込む」とか「あの大物の本音に迫る」などというのが持ち芸だと思われているからだろう。たしかに、いままでそういう番組や記事がいくつかあったから、そう思われるのも無理はない。
 しかし、本当の私は、やさしいナイスガイである。ズバリ斬り込むことなんて好きでもなんでもないし、事実、やっていない。「テリーが鋭くつっこんでいる」というのは錯覚なのだ。
 自分の名前を看板にして商売している有名人は、基本的に、そうそう本年なんかしゃべらないし、聞かれたくもないのだ。そこに質問者が鋭く斬り込んでいったって、ますます話したくなくなるだけである。
 人に聞かれたくないことを質問したり、しゃべらせようとしてもインタビューが盛り上がるはずもない。そんなことをするよりは、その人はしゃべりたいことをしゃべってもらうのがいちばんいいのだ。
 むしろ、そうやって自分が話したいことを話していると、そのなかにその人の本質や本音が自然に表れてくるものだ。しゃべりたくもない話を無理に聞けば、だれだって心を閉ざしてしまうから、本音なんか出てこないのだ。
 そりゃあ国の一大事に直面している政治家に「田原総一朗が斬り込む」という番組なら、政治家も職業上、本質論を語りもするだろう。
 しかし、そういうケース以外は、ズンズンつっこんだって口を割る人は少ない。運よく聞き出せたとしても、せいぜい一言。そのあとは言った本人も「しまった、ついしゃべっちゃった」と思って自制して、さっき以上に身構えてしまう。
 わざわざ斬り込んでいって、そんな空気を作ってしまったら、盛り上がるものも盛り上がらなくなってしまう。それよりは、相手が好きな話をなるべく自由に気持ちよく話してもらった方がいい。
 たとえば、熱愛や結婚の噂がある人に「本当に結婚するんですか?」という直接的な質問をしても、多くの人は答えない。「いやあ、そんなことは……」などと言って、のらりくらりするだけだ。
 それよりは、最近その人が出演したドラマの話を聞いたり、おもしろいと思った映画やアニメの話を聞いたりしたほうがよっぽどいい。
「最近、私、『サザエさん』をよく見てるんですよ。あったかい気持ちになれるから」
 そういう話を聞けば、「ああ、この人は家庭のぬくもりがほしいと思いはじめているのかな」と気づく。

(中略)

 芸能人にかぎらず、いきなりその人の本質的なことを聞こうと思っても、なかなかしゃべってくれる人はいない。「あなたはどういう人間ですか?」とか「将来、どんな仕事をなしとげて、どんな人と結婚したいですか?」と聞かれても、スラスラ語れる人は、そんなに多くはいないはずだ。
「最近、何かおもしろい映画は見ましたか?」
「3〜4日、休みがとれたら、真っ先に行きたいところはどこですか?」
 そういう楽しそうな質問をして楽しい会話がはずめば、その人の本音もおずと見えてくるものなのだ。鋭いつっこみは、まったく必要ないのである。】

〜〜〜〜〜〜〜

 正直なところ、僕はテリーさんの対談記事をときどき週刊誌で読んでいたくらいなので、テリーさんの「会話術」が実際にどのくらいの効果をあげているのか判断しきれないところはあるのです。
 それでも、この「相手の本音を聞き出すコツ」「心を開いてもらうためのコツ」には、なるほどなあ、と感じました。

 相手の本音を聞き出すためには、「かなり思い切った、相手の意表をつくような上手い質問」をしなければならないし、そういう質問は、場合によっては、相手の機嫌を損ねてしまうかもしれない」と僕は考えていたのですが、実は、そんなふうに「斬り込む」のは愚策なんですね。

 たしかに、自分がインタビューされる側(あるいは、日常会話での聞き役)だったら、いきなり、「あなたはどんな人間ですか?」なんて聞かれたら、真面目に答えるよりも、「この人はなんでこんな質問をしてくるんだ?」という不安のほうが強いはず。
 ものすごく酔っ払っている、というような状況でもなければ、いくら強い言葉で質問をしても、「本音」なんて出てこないのが当たり前です。

 そういえば、プロインタビュアーの吉田豪さんは、事前にかなり下調べをされているそうですが、インタビューの場では、とにかく相手に楽しくしゃべってもらうことに徹して、自分では「ダハハハハ」なんて相槌を打っていることが多いですよね。
 
 「本音を引き出す」ためには、とにかく相手に楽しくしゃべってもらうこと。
 人間って、楽しくしゃべっていれば、ついつい「本音」が出てしまうものだから。
 もっとも、「世間話からはじめて、相手に楽しくしゃべってもらう」というのは、世間話が苦手な僕にとっては、かなり難しいことだとも思います。
 もしかしたら、いきなり「あなたはどんな人間ですか?」と聞くよりも、大変かもしれません。

 ところで、これを読んでいて思いついたのですが、「自分がどんな人間かわからない」ってこと、ありませんか?
 そういうときには、自分が好きな映画とか本のことを思い出すと、「自分はこういう物語に共感する人間なんだな」ということがわかるのではないでしょうか。