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2008年10月05日(日) ■ |
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他人の話をよく聴くための「5つのコツ」 |
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『空気の読み方〜できるヤツと言わせる「取材力」講座』(神足裕司著・小学館101新書)より。
【人の話を聞くときに最も必要な技術とは、黙って話を聞くことだ。 相手に話をさせることが目的なのだから、自分が気の利いた話をする必要はない。討論や対談の場ではないのだから、相手の話をさえぎったり、否定したりするような態度はもってのほかだ。相手が黙ってしまったときも、じっと次の言葉を待つだけの根気と忍耐力が求められる。 この黙って話を聞く態度とは、カウンセリング用語でいうところの「傾聴(アクティブリスニング)である。 「傾聴ボランティア」という活動を展開している京都ノートルダム女子大学の村田久行教授は、「よく聴くためのコツ」として次の5つの条件をあげている。
1.自分の意見・感想をはさまない
2.相手の気持ちをそのまま返す術を活用する
3.沈黙を怖がらず、次の言葉を待つ
4. 秘密をもらさない
5.尊厳と思いやりの気持ちをもって聴く
(『朝日新聞』2004年1月1日版)
1の「自分の意見・感想をはさまない」とは、話を聞きながら、「それは間違っている」「考えが甘すぎる」「話に矛盾がある」などと内心思ったとしても、自分の考えを飲み込むということだ。否定的な意見ではなく、多大な共感をもったとしても、話を聞く間は、相づち程度に留めておくべきだ。 過去の出来事を回想してコメントしてもらうときなどに、 「それはこうすればよかったんですよ」 などと言うのも避けたい。過去を変えることはできないし、当事者でもない人間が安易な考えを口にすべきではないからだ。 2の「相手の気持ちをそのまま返す術」とは、相手が感情に関する言葉を発したとき、それがキーワードになる。 たとえば、相手が「私はとてもつらかった」と言ったら、「さぞおつらかったことでしょう」とそのまま返す。それだけで相手は話を聞いている人に、自分が受け入れられたという安心感を持つ。初対面の人間に素直に胸中をぶつけるには、そうした安心感がベースになければまず無理だろう。 3の「沈黙を怖がらず、次の言葉を待つ」は、会話中によくありがちだが、突然相手が黙ってしまうことはある。これには、言葉をど忘れした、どこまで話したか忘れた、あらためて思い出したことがあった、話が盛り上がりすぎて拡散してしまった、などのさまざまな理由がある。 最初から話を聞いていた人間なら、相手がなぜ黙っているのか、おおよその見当がつくはずだ。最後に相手が言った言葉をそのまま「〜ということですね」と繰り返し、次の言葉を少し待つことで、相手に考えを整理する時間を与えることができる。 最悪のケースは、話している人間に反感をもってしまい、話をする気持ちが失せてしまった場合だ。特に自分より年長者で気難しい相手が、不機嫌な様子で黙ってしまうと、「自分は何か失礼をしたのだろうか」と気を回して、うろたえるのが人情だろう。 以前、森繁久弥さんに40年続けたラジオドラマについてインタビューしていたとき、急に何かを考えている様子で、ピタッと話が止まったことがあった。 はて、どうしたんだろうと心配していたら、私の顔をまじまじと見て、 「カニトップを飲んだらこんなに(頭が)黒くなりました」と言い、 「神足さんも飲んだほうがいいですよ」と続けた。 森繁さんが急に黙ったのは、それまでの話を忘れてしまったのか、それともそのとき思いついたことをどうしても言わずにはおれなかったのか、今となってはわからない。 これは特殊な例かもしれないが、相手が急に黙り込んだからといって、気を回して何か言葉を発しようとしないほうがいい。もしも黙っていたら、つまらないことを言って、火に油を注ぐことになりかねないからだ。 話の途中で突然相手が黙ったら、その間にこれまでの言葉をよく反芻して、今何を考えているのかを想像しながら、口を開くまでじっと静かに待つ。どんな理由であろうと、とるべき手立てはこれ以外にはないだろう。 4の「秘密をもらさない」は、これも商談や取材における大事なルールである。これは「ニュースソース秘匿の原則」の項で詳しく後述したい。 そして、話し相手から十二分な話を引き出すには、5「尊敬と思いやりの気持ちをもって聴く」態度がないと、なかなか難しい。 ビジネスの場においても「なんとしても売ってやる」という気持ちが高じると、相手が説明している事情も素直に耳に入らなくなっていく。ノルマに追われているな、と思ったら、トイレで鏡を見てみよう。 そして、考えるのだ。 もし、相手が自分だとしたら、今の目つきの自分に、素直に話をするだろうか。 焦りは、禁物だ。追い詰められたときこそ、基本や原点に戻って姿勢を正すのだ。 ぎこちなくとも笑顔を取り戻すために、誰も見ていないところで、にっこり笑ってみよう。】
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自分から面白い話をして場を盛り上げるのは苦手だけど、「聞き役」にはなれる、と「話下手」を自認する僕などは考えがちなのですが、「人の話をよく聴く」というのは、実際にやってみるとけっこう大変です。 僕だって、好意を持っている女性や共通の趣味を持つ友人の話を「聴く」のは時間が経つのを忘れてしまいます。でも、自分が興味を持てない話、何度も聴かされた話の場合は「聞く」だけでかなりの苦痛なんですよね。 いつもの「若い頃からの病気での苦労話」をようやく切り上げて部屋を出てきたら、5分も話を聞いていなかった、ということもよくありますし。
「傾聴ボランティア」というのが存在すること自体が、「他人の話をまじめに聞いてくれる人の少なさ」の証拠です。 それでも「人の話を聞かなければならない状況」というのは人生において存在するわけで、そういうときに気をつけるべきことが、この「人の話をよく聴くための5つのコツ」には凝縮されています。 読んでみると、みんな「当たり前のこと」のように思えるのですけど、これをすべて実行するのはとても大変です。
昨日、大学の後輩にデパートで偶然会いました。たぶん3年ぶりくらい。 お互いに近況報告をして、共通の知人の話題をすれば、もう話すこともなくなってしまった。でも、「じゃあまたね」ともなんとなく言いがたい。 2人の間になんとなく「気まずい沈黙」が漂っていたとき、やっぱり僕はそれに耐えられず、自分からしなくてもいいような噂話などをはじめてしまったんですよね。 知り合い相手ですら、「3.沈黙を怖がらず、次の言葉を待つ」っていうのは、よっぽど腹を据えないと難しい。自分のほうが「不機嫌な人」だと相手に思われているのではないかと不安になりますし。 こういうのは、「インタビューする人とされる人」みたいにお互いの「役割」が決まっているほうがやりやすい面もあるのでしょうね。 僕の場合、ふだんの会話でも「ここは自分がこの沈黙を破る役割なのでは……」とか自分でプレッシャーを増強しがちなのは事実ですが。
これを読みながら僕が考えたのは、「5.尊厳と思いやりの気持ちをもって聴く」というのがないと1〜4は難しいだろうな、ということでした。 そして、そのためのいちばんの方法は「自分が好きな人、尊敬できる人と話す」ことなんですよね。 結局のところ「相手に興味を持つこと」が「人の話をよく聴くための最大のコツ」。 しかしその「人間を好きになる」っていうのは、「努力すればできる」ってものじゃないですよね。 まあ、この1〜4に気をつけるだけでも、相手に与える印象はだいぶ違うとは思うのですけど。
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