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2008年03月24日(月) ■ |
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部下の「致命的なケアレスミス」を救った「理想の上司」 |
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『ハンバーガーの教訓―消費者の欲求を考える意味』 (原田泳幸著・角川oneテーマ21)より。
(現日本マクドナルドCEOの著者の「エンジニア時代の大失敗」と、それに対する当時の上司の対応)
【「失敗が人を育てる」といった言葉は、誰でも何度かは耳にしていることだろう。そういう言葉を聞いたことがあるために、失敗してもくじけずにいられる人も少なくないはずだ。 それでは、人の失敗に関してはどのように対処しているだろうか。 たとえば、自分の部下が失敗したときにどうしているかを考えてほしい。建て前としてではなく、失敗が持つプラスの意味を理解しているのであれば、一度や二度の部下の失敗などは許容できるに違いない。 私にしても、若い頃には何度となく失敗をしてきた。エンジニア時代などは失敗の連続だったともいえ、カラーバーコードを読み取るシステムの開発をしたときに失敗はそのなかでもとくに強く印象に残っている。 このとき、スタッフは私を入れて3人だけで、技術開発のために与えられた期間は半年だった。最初のうちは焦りもなく作業を進めていたが、残り二か月ほどまで期限が迫ってきた頃からは社内の実験室に泊り込む日々が続いた。そして、その新技術を紹介するプレゼンがあるためにどうしても完成させなければならなかった期限当日の明け方4時頃になってようやくシステムが動いたのである。まさに滑り込み状態だったので、スタッフ3人が手を取り合って喜んだのはいうまでもない。 だが、最終チェックのためにもう一度、電源を入れたときにブチッと嫌な音がしたかと思うと、そこから煙が出てきてしまい、組み立てていた機器が完全にクラッシュしてしまったのだ。 ほんのわずか前までは小躍りしていた3人が口を開くこともできなくなって、ただ呆然と立ち尽くしてしまうしかなくなった。どうしてそうなったかといえば、本来は5ボルトの直流をつないで動かさなければならないところを商用の100ボルトにつないでしまったという単なる接続ミスで、普通では考えられないほどのケアレスミスだったのである。 2、30分くらいはそのままいたが、いつまでもそうしてもいられないので、課長の自宅に連絡して事態を報告すると、課長はすぐに実験室に飛んできた。 そのときにはどれほど怒られるかと身を縮めるような思いだったが、課長は「本当に一度は動いたの?」と再確認したあと、「それならまた同じものが作れるから大丈夫だ。ご苦労さん、しばらくゆっくりと休みなさい」と、やさしく言ってくれたのだ。そして、壊れたプロトタイプを持って会場に行った課長は、そのプロトタイプでプレゼンを行い、このプロジェクトを通してきたのである。
この経験によって、私はケアレスミスの怖さを学び、骨身にしみこませると同時に、この課長のふるまいに感動し、多くを考えさせられたものだった。 自分が課長の立場だったとすれば、私たちに対してひと言も怒らずにいられたかはわからない。 だがこの課長は、部下のミスを責めるのではなく最善の対策を考えたうえで、自分の責任においてミスを帳消しにするような結果を出してくれたのである。】
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この話を読みながら、「僕は自分がこの課長だったら、部下の些細なミスで機器が完全にクラッシュしてしまった現場で、いったいどういう行動をとっただろう?」と考えずにはいられませんでした。
それまでの部下の働きぶりを見ていれば、さすがに罵倒はしなかったかもしれませんが、イヤミの一つくらいは言ったでしょうし、「今からなんとかならないのか?」とあがいてみたり、プレゼンを諦めたりしたのではないかと思います。 少なくとも、その場で部下たちに「ご苦労さん、しばらくゆっくり休みなさい」とは言えなかったでしょう。
この課長の対応は、確かに「カッコいい!」のですが、これは、ひとつ間違えればまさに「自分の首も危ない」という選択なんですよね。 原田さんたちが造った機械の現物は壊れてしまっているし、自分で動作確認をしたわけでもない。部下が嘘をつくとは思わなくても、「本当に完成していたのかどうか?」「もう一度同じように造ったとしても、ちゃんと動くかどうか?」と不安になるのがむしろ自然なはずです。実際に同じものを造ってみたら、別の問題点が発生する可能性も十分あります。
その状態でプレゼンをするというのは、よほど部下を信頼していなければできない決断だったでしょうし、壊れたプロトタイプ」を使ってのプレゼンというのは、かなり大変だったはずです。 もちろん、このプロジェクトに有力な競合者がいなかった(のだろうと思われます、たぶん)、という「運」の要素もあったのですよね。そりゃあ、いくら部下思いの課長であっても、競合他社が実際に動く機械を持ってきてちゃんとプレゼンをしてくれば、みんなそっちを選ぶだろうし。
この「答え」だけ読めば、「部下思いの素晴らしい上司の話」なのですが、土壇場になってこういう決断ができたのは、やはり、日頃の信頼関係と、この課長の「思い切りの良さと切り替えの早さ」そして「合理性」のたまものだったのでしょう。部下の信頼を得られたという意味でも、まさに「最良の選択」だったわけです。
この決断、あくまでも「能力的にも人間的にも信頼できる部下に恵まれている場合」限定ではあるので、「普通の部下を持つ普通の上司」にとっては、素直にプレゼンで「ここまでしか完成していません」って状況を話してしまったほうが賢明な気はしますが、少なくとも、「取り返しのつかない場面だからこそ、相手のこれまでの努力を評価し、労ってあげるべき」だということは覚えておいて損はないと思います。
僕も「怒ってもどうしようもない場面」で、けっこう自分を抑えられなくなってしまいがちなのですが、どうせ結果が同じなら、わざわざ相手に恨まれたり嫌われたりする必要はないんですよね。
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