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2007年09月03日(月) ■ |
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「Wikipedia」に関する嘘と真実 |
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『TVBros。 2007年18号』(東京ニュース通信社)の特集記事「あなたをダメにするWikipedia〜嗚呼、世はWikipedia中毒〜」より。
(「都内有名私立大教授が語るWikipediaの猛威」というインタビュー記事)
【――実際、Wikipediaをレポートなどに使っている学生って多いんですか?
教授:多いですよ。みんなレポートで同じような箇所で同じような間違いしているから。中には、丸写しはおろか、フォントや書式を変えずにそのまま貼り付けてくる不届きなやつもいます。ほんと、それだけは勘弁してほしいですけど(笑)。大学1年生など特に多いです。アメリカの大学では試験にWikipediaを使うことを禁止にしているところもあるんですよ。
――教授や学者の方も使っているんでしょうか?
教授:学生の利用も多いけど、私達も結構使っていますね。私も1日に1回は見ています。日本語版のWikipediaは偏りがあって情報量も少ないので、主に英語版のWikipediaを見ています。 学生もさることながら、学会などのアカデミックな場でもWikipediaはすごい問題になっているんです。学会などで内容をそのまま引用なんかしたらアウトですね。Wikipediaの内容はレベルが低くて、ソースとして認められていません。
――では、どのようにして利用したらいいんでしょうか?
教授:Wikipediaは確かに便利です。けれど、その参考文献を実際に見てみるという作業をして、正確度をきちんと把握してほしいですね。特に、アカデミックな場では独創性や多様性が重要になってきます。しかし、Wikipediaばっかりに頼っていたら、アプローチが同じになってしまうので、独創性や多様性がなくなってしまう。そういう意味でも実際に様々な参考文献を見て、独創性や多様性を身に付けてほしいですね。】
(Wikipediaの「正確度」についてのコラム)
【'05年12月号の英学術誌『Nature』は、Wikipediaと、権威ある百科辞典『ブリタニカ百科辞典』の比較を行い、情報の正確度を検証。Wikipediaとブリタニカ双方の記述を、どちらのものかは分からないように専門家に見せて、チェックしてもらうという方法で行われた。 その結果、重要な概念に関する誤りはそれぞれ4件ずつ、表記の間違いや脱落、誤解を招く文章などは、Wikipediaで162件、ブリタニカで123件発見された。1項目あたりの件数に閑散すると、Wikipediaで3.86件、ブリタニカで2.92件の間違いがあるということに。『Nature』はこの結果から”どちらも正確度は同水準だ”と結論づけている。 この結果にWikipedia側は喜びを表しているが、一方のブリタニカ側は検証の方法などについて『Nature』を非難し、訂正を求めている。その後も、Wikipedia側が見つけたブリタニカの間違いが話題になったりと、Wikipedia vs ブリタニカの百科辞典戦争はまだまだ続きそうである。】
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大学のレポートで「Wikipedia」の丸写しなんてけしからん! ……と言いたいところなのですが、僕も学生時代、先輩や同級生のレポートを「参考」にさせてもらったことが何度もあるので、あまり偉そうなことは言えそうにありません。まあ、僕の大学時代は、レポートがワープロ打ちだというだけで、みんなが「読みやすい!」「内容が立派に見える!」なんて評価が上がっていたくらいだったんですけどね。 卒論などはさておき(って、僕は実際に卒論というのを書いたことがないのでよくわからないのですが)、日頃の宿題としてのレポートなどで、オリジナリティを出せるようなのは、ごく一部の「優秀な学生」だけなのではないか、とも思うのです。 教授だって、そんなことは百も承知でしょうから、本音は、「コピー&ペーストじゃあんまりだから、せめて手書きで写して来い!」という感じなのかもしれません。
「記述に偏りがある」とか「いいかげんな内容が多い」あるいは「政治的な意図による編集合戦」などの問題点が取り上げられることが多いWikipediaなのですが、学会の席では「Wikipediaなんてソースにはならんよ」と鼻で笑っている教授たちでさえ、陰で「参考にはしている」みたいなんですよね。もっとも、専門家レベルだと、書いてある記述を鵜呑みにするのではなくて、その項目に記載されている「参考文献」を自分で読んでみて判断材料にする、というような使い方だそうですが。 そういう意味では、Wikipediaというのは、学問の世界において、「ソース」として信用されるというレベルではない、ということなのでしょう。 もっとも、「ブリタニカ百科辞典」だって、学会の「参考文献」として取り上げられることは、ほとんど無いんですけどね。 研究者たちにとっては、「Wikipediaなんて簡便なものをやすやすと認めてしまっては、専門家としての名折れ」という意識もけっこうありそうな気もします。 この『ブリタニカ百科辞典』との比較は、掲載されたのが、有名な学術雑誌『Nature』ということもあり、僕も驚いてしまいました。まあ、実際のところは、『Wikipedia』に書いた人が『ブリタニカ』を「参考」にしたものが多いのではないか、という気もするのですけど。 少なくとも、ネット上で植えつけられているイメージに比べると、(英語版の)Wikipediaは、「けっこう正確」みたいです。そう言われてみれば、いくら便利であってもあまりに嘘ばっかりでは、こんなに普及するはずもありませんしね。
ちなみに、【Wikipediaの発足は2001年1月15日で、日本語版ができたのは2001年5月20日】【Wikipediaがある言語数は253】【英語・ドイツ語・ポーランド語・日本語の順番で項目数が多い(2007年8月22日現在)】【全言語における項目数約820万、日本語の項目数約40万(2007年8月22日現在)】【2006年の日本語版推定訪問者数約1850万人】。 学会や専門家たちがどんなに「白眼視」しようと、Wikipediaが「無視できない存在」になっていることだけは、間違いないようです。
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