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2007年07月25日(水)
「僕が管理人をやめれば『2ちゃんねる』はなくなりますよ」

『週刊SPA!2007/7/17号』(扶桑社)の「トーキングエクスプロージョン〜エッジな人々」第491回、”2ちゃんねる”管理人の「ひろゆき」こと西村博之さんと”カリスマプログラマー”小飼弾さんの対談記事です。取材・文は杉原光徳さん。

【小飼弾:ひろゆきさんは、2ちゃんねるに続き「ニコニコ動画」まで当ててすごい! ニコニコ動画の発想は、YouTubeなんて目じゃない。

ひろゆき:ニコニコ動画は、似たようなものを考えている人や、プロトタイプを作っている人たちと話しているときに「昔、僕が思いついたものと似ている」と意気投合して、できあがったんです。だから、僕は企画を出したくらいですよ。

小飼:いや、発想も思いつきも、立派な技術。それに、訴状を無視するのも技術のうちかなという(笑)。しかし、2ちゃんねるの訴訟費用をカンパするという話にはならないの?

ひろゆき:ウィニー裁判の費用のように、最初の1回はできたと思うんですよ。でも、2ちゃんねるの場合は1回で終わるものじゃないので。

小飼:筋違いかもしれないけど、ひろゆきさんの代わりに被告人としての資格を争うという人はいないの?

ひろゆき:どうでしょう? 僕と被告人の資格を争って、僕に資格がないとなると、どこにお鉢を持っていけばいいいのか、わからなくなるんですよ。

小飼:2ちゃんねるの勝負は、ひろゆきさん自身に何かあったときですね。まあ、僕が潰させませんけど。

ひろゆき:僕が管理人をやめれば2ちゃんねるはなくなりますよ。でも、2ちゃんねるを手放すには、いろいろと作業をしなきゃいけない。よくよく考えると継続していくより、手放すことのほうが大変なんです。

小飼:なるほど。でも、2ちゃんねるを潰させようとしない為政者は、結構多いと思う。僕は、人間の中に何かが鬱積して問題を起こすような不満を、2ちゃんねるがあることで抜くことができているのではないか、と考えているんです。

ひろゆき:それ、よく言われますよ。匿名で書かせておいて、後から裏でコントロールしているとか。

小飼:でも、2ちゃんねるに書き込んでいるなら、まだいいけど、本当に怖いのは「俺はここにいる」という欲を出さない人たちだよね。

ひろゆき:自分の身の回りのことに興味が持てず、どうでもいいと考えている人ですよね。爆弾を持っていたら爆発させてもさせなくても、どちらでもいい人。昔は、そういう人でも社会に入れていたけど、今は行き場がなくなっていますよね。2ちゃんねるで犯行予告をした人とか、居場所のなくなった人が、とりあえず人をいっぱい殺してみるというのは実際にありますし。昔は、居場所のない人同士が新興宗教とかをつくったりしていたんだけど、最近はそれすら許されなくなったので凶行に走る。

小飼:そういった人たちにとって、2ちゃんねるは、いい行き場になっている。でも、そういう人をコントロールしようとしてはダメですね。

ひろゆき:僕は教育次第で、北朝鮮みたいにコントロールできるかと。でも、徐々にワクチンの抗体ができて、なにも効かない黄色ブドウ球菌みたいな存在は出る。コンピュータの世界でいえば、C10K(クライアント数が増えるとサーバーがパンクする問題)みたいなことが起きちゃうんですよ。どんな仕組みでも。

小飼:そうやってどんどん複雑になって、問題が問題を呼ぶ。

ひろゆき:”問題が問題を呼ぶ”というのは、グーグルが困っているのが電気代だという話に置き換わりますね。昔は、CPUのコストが高かったのが、最近は電気代が高いから電気のためにダムの近くに工場を造る。こうやって問題が違うところに移っていく。

小飼:それは、問題解決の宿命。結局、完全な問題解決はないのでは?

ひろゆき:太った人が痩せればモテると思ってダイエットしたら、今度はファッションセンスが悪い、お金がない、といろんな問題が見えてくる。だからといって、お金を稼げる職業に就くと洋服を買いにいく時間がない。実はモテるためには痩せるだけじゃダメだったとかね(笑)。】

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 確かに「ニコニコ動画」って、誰かが考えつきそうなアイディアだけど、それを実現して多くのユーザーが(有料会員も含めて)利用するようなサービスにしていくというのは、そんなに簡単なことではないと思います。
 まあ、発想そのものは「目じゃない」としても、YouTubeがなければ、「ニコニコ動画」が世に出ることはなかったのではないかな、という気もするのですが。

 僕は2ちゃんねるの管理人である「ひろゆき」という人を「お祭り好きの快楽主義者」というようなイメージで今まで見ていたのですけど、この記事で実際に「ひろゆき」氏の発言を読んで感じたのは、彼の「責任感と自負心の強さ」なんですよね。

 「2ちゃんねる」の管理人であり続けることというのは、実際、ものすごく大変なことなのではないかと思います。「2ちゃんねる」を運営することも、書き込み内容について訴えられることも、かなり「めんどうなこと」であるのは間違いないはずです。裁判だって「罰金は払いません」なんて「開き直っている」ことの是非は別として、ああやって訴えられ、世間の話題になるのは、けっして楽しいことばかりではないでしょう。それでも「ひろゆき」氏は、「2ちゃんねる」の顔として、一部の熱狂的な信者と世間一般からの不審の目を浴び続けています。「2ちゃんねる」で、そんなに儲かっているわけでもないのに(というか、サーバーが維持できなくて「2ちゃんねる」が無くなる、なんて話もあったくらいです)。

 常人なら、こんなにたくさんのトラブルにさらされていれば、身も心もボロボロになってしまうでしょうし、「もう管理人なんて辞めた!」と言っていてもおかしくないでしょう。現に、そうやって終わっていった人気サイト・ブログというのもたくさんありますから。

 それでも、「ひろゆき」氏は、こうして現在も矢面に立ち続けています。彼の能力ならば、もっとラクな方法で優雅な生活ができるくらい稼ぐことは、そんなに難しくないはずなのに。「すごい」というより、いったい何が「ひろゆき」氏をこんな茨の道に進ませているのだろうか?と、僕はちょっと怖くなってきています。
 政治家と同じように「ここで『2ちゃんねる』を手放したら、自分の『権力』を失って、味方もいなくなり、一気に今までの敵から引きずりおろされてしまう……」というような危機感もあるのでしょうか?

 「2ちゃんねる」は「ガス抜き」なのか、それとも「大勢の人のストレスを増幅させる装置」なのかというのは、難しい問題ですよね。たぶん、その両面があるのでしょうが、総和として「有益」なのか「有害」なのかというのは、なんとも言えないような気がします。
 もっとも、為政者たちは、困った顔をしてみせながらも、「民衆の本音を知るためのツール」として、潰すよりも残して「利用」するほうを選ぶのではないかな、と僕も思いますけど。
 「2ちゃんねる」が無くなっても、「2ちゃんねる的なもの」が消えることはないでしょうしね。

 それにしても、【太った人が痩せればモテると思ってダイエットしたら、今度はファッションセンスが悪い、お金がない、といろんな問題が見えてくる。だからといって、お金を稼げる職業に就くと洋服を買いにいく時間がない。実はモテるためには痩せるだけじゃダメだったとかね】というのは耳の痛い話ではあります。結局、問題が解決に向かわないのは「太っているから」ってことにしておいたほうがラクだから、っていうのもあるのかもしれません。「痩せたらモテるはず」っていうのは、「どんなに頑張ってもモテない」よりは、なんとなく「希望」があるのでしょうし。

 「2ちゃんねる」が存続しているかぎり、日本のネット上での災厄は「2ちゃんねるのせい」にできるのだろうし。