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2006年08月30日(水) ■ |
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若くして出世する人は音痴になりやすい? |
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「ダ・カーポ」590号(マガジンハウス)の記事「新・ダカーポ探検隊・第84回」より。
【「この音(ラ音)で、”ふぅ〜、ひぃ〜”と声を出してみて。はい、OK。では音を上げて(シ音)”ふぅ〜、ひぃ〜”」 蒸し暑い7月下旬、都内のマンションの一室。講師が弾くピアノの音に合わせてネクタイ姿の男性が発声練習している。別にレイザーラモンHGのまねでもないし、出産時の呼吸法を学んでいるわけでもない。音痴矯正レッスンなのである。 「次は(ラとシを)行ったり来たりします。”ふぅ〜(ラ音)、ひぃ〜(シ音)、ふぅ〜(ラ音)”。(ラ音からシ音へは)東京から大阪へ行く感じ。あ、今のは大阪を通り過ぎて神戸行っちゃった。もう1回、はいブラボー、いいですよぉ。あぁ、今度は名古屋で途中下車しちゃった」 新幹線の駅を音痴にたとえて指導しているのは高牧康さん。音痴矯正メソッドの権威でBCA教育研究所の主宰者だ。高牧さんのスケジュール帳は常にびっしり。生徒は不思議と大企業などのエリートが多い。 「昇進して部下ができました。もう飲み会で1曲も歌わないといういうわけにはいかなくなった」 「転職を機にカツラを付けることにしました。ついでに音痴も直そうと思って」 冒頭の生徒も大手コンピューター会社の部長(49)だった。他に弁護士や裁判官、政治家もいる。20代のOLはこう話した。 「挙式が憂鬱です。ウエディングドレスは楽しみだけどチャペルで賛美歌を歌うのが不安で」 妊娠した女性は、おなかの中のコに何かを歌っても自分の声では逆に胎教に悪いと感じた。 就職活動と並行してレッスンを受けたり、合コン2次会のカラオケ対策という学生もいる。 生徒は最初、音痴のレベルをチェックするために『メダカの学校』を歌う。隊員もやってみた。30年ぶり。正直恥ずかしい。だって講師と向かい合ってのマンツーマンである。その後、高牧さんが弾く音を自分の声で出せるかどうかのテスト。これが案外難しい。半音から1音ズレる。でも、音痴の人はこれが2〜3音ズレ、お経のようになる。ミ音を出すべき時にドの音程になる。高牧さんは言う。 「音痴は、音程を作るのどの機能がうまく働いていないのが理由。音程は伸び縮みする声帯によって作られる。声帯を動かす筋肉に問題があると、音域が極端に狭くなる(低音に偏り高音が出せない)。最初のドレミぐらいしか出せない。違った音を頻繁に出しているうちに合っている音も分からなくなる」 やがてコンプレックスとなて歌を毛嫌いするようになる。高牧さんは生徒に「歌は元気よく明るく! 感情豊かに!」などと小学校の音楽教師のようなアナログなことは口にしない。生徒たちが安心するのは「歌は理性、デジタル」という言葉だ。音程はヘルツ、音域はオクターブ、音量はデシベル、ブレスの長さは秒。自分の発した音痴な声は専用の機器で目に見える”数字”として確認できる。音程が少し低ければ少し上げる。自己制御できるのだ。 前出の部長はこの日が最後のレッスン(通常1回45分のレッスンを5回で費用は5万円)。
(中略)
高牧さんによれば、若くして出世する人は音痴になりやすいという。上司という威厳を保ち、部下への指示はヒステリックではなく低い渋いトーンで。そんな意識がいつしか音域を狭くする要因になるそうだ。部長は言う、「40代後半にもなるとね、苦手なことをそのまま放置してはいけない気になるんです。どうしても克服したかった」。】
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これを読んで、「若くして出世する人は音痴になりやすい」というよりは、「こうして音痴矯正レッスン」を受けるような、ある種の「完璧主義者」の人は出世しやすい、と考えるべきなのかもしれないな、と思いました。実際はカラオケの席では、中途半端に上手い人より、ちょっと音程が外れているくらいの人のほうが歌ったほうが、場が盛り上がったりもするものなのですが、まあ、そういうのは当事者にとっては、やっぱりコンプレックスだったりはするのでしょうね。正直、ここに出てくる「賛美歌が歌えない」とか「胎教に悪い」というような人の場合は、「音痴」というより、あまりにも物事を深く考えすぎるタイプであることのほうが問題なのではないかという気もするのですが、こうして「音痴矯正レッスン」を受けることによってそういう不安が払拭されるのであれば、5万円はそんなに高くはない金額なのかもしれませんね。
この文章を読んでいると、実はほとんどの人が、多かれ少なかれ「音のズレ」を抱えているということがわかります。それが半音から1音くらいであれば「普通」で、2〜3音になれば「音痴」だと評価されやすい、というだけの話で、ごくごく一部の「絶対音感」を持っている人を除けば、要するに「程度の差」でしかないのです。
しかし、「音痴」なんていうのは、別に誰かに迷惑をかけるわけでもないし(「ジャイアンリサイタル」とかをやるのなら話は別でしょうけど)、むしろ、周囲からみれば「微笑ましい、愛すべき特性」ではあるわけです。自己陶酔してマイクを握って話さない人とかよりは、よっぽど好感を持たれやすいわけで、そんなに頑張って「矯正」しなくてもいいのになあ、と「歌がとりたてて上手くもなければ、音痴と笑われるほどでもない人間」である僕には思えてなりません。 少々歌が上手くったって、合コンでモテるくらいしかメリットはなさそうなんだけど(それが重要なのかな……)。
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